前ジェフFW深井が長崎に入団

深井正樹選手のV・ファーレン長崎への加入について(ジェフ公式サイト)
 昨日、深井の長崎加入が発表になりました。
 深井の現役続投が決まったことになりますね。


 深井は08年途中からジェフに加入。
 08年のJ1残留に貢献しました。
 しかし、翌年にはチームJ2降格を経験。
 J1昇格は達成できずに、昨年退団ということになりました。


 退団時の経緯に関しては、斉藤TDがサポコミでしっかりと話していますので、ここで確認を。

「我々は彼の良さも十分わかっている中で次のシーズンのことをみんなで協議した時に、彼にもウチのクラブとしては残念ながら(契約を)更新するような話はできないという話をしました。僕は千葉のために仕事をしてもらえないかというような話をしたんですが、彼からはもう1年、2年チャレンジしたいという話がありました。実際にはほかのクラブと(契約が)決まりかけていたようです。決まりかけている、もう本当に前々日ぐらいにアクシデントでケガをしまして、今は治療に専念しています。」(J's GOAL

 ここでいう「仕事」というのは、もちろん選手としてではないでしょう。
 はっきりとは話していませんが、文脈からして構想外だったことがわかります。
 怪我も移籍先が決まった後に発生したものであり、怪我があったからジェフが契約を終了したわけではないのだと思います。
 斉藤TDと島田社長からは何度も「チームを作り直す」というような話をしていたわけで、厳しい話ではありますが33歳となる深井の退団は妥当な判断だったのではないかと私は思います。


 深井は退団後もジェフのPR部長を引き受けてくれるなど、良好な関係を維持していました。
 加えて7月6日にはフクアリで開催する松田直樹メモリアルが主催する『Next generation マッチ』の出場選手予定選手に選ばれるといったこともあり、現役でのプレーは厳しいのかなと思ってもいました。
 もともとベテランで大きな怪我を抱えた選手で、なかなか次は難しいのではないかと思っていただけに、このタイミングでの長崎入団は意外でした。
 状況からして、この入団は急遽決まったのかもしれませんね。



 深井は積極的な縦への仕掛けから、キレのあるシュートやクロスが武器となる選手でした。
 しかし、一方で攻撃に出ていってもポジションに戻っての穴が埋められず、周りと連携した守り方ができないなど、守備面では課題も多い選手だったと思います。
 一時的に起用されたボランチでのプレーが意外と"はまった"のは、前に飛び出していくプレーが制限されたことによって、逆に機能した部分があったのかもしれません。
 けれど、それは「深井ではない」とも言えるのかもしれませんが…(笑)


 2011年にはオーロイの落としを拾う大事な役割を任されるも、途中からマークが厳しくなり失速。
 12年には序盤サイドで起用されるも守備に不安が出てしまい、その後FWでプレーするもポストプレーで潰されるなど、起用しづらい面も感じたところがあります。
 そして、13年は主にスーパーサブとしてプレーしていました。 


 ミラー監督の頃から「いけいけどんどん!」でスタジアムも含めて勢いに乗れれば強いのだけれど、乗り切れないと一気に脆さが出てしまい、守備への戻りの意識が薄いためカウンターに非常に弱い。
 そういったスタイルというか"傾向"はオシム監督の頃の「走るサッカー」とは似て非なるもので、ピッチ上の全員に攻守において貢献を求めるトータルフットボールポリバレント性を掲げ組織力で戦おうとしていたころに比べると、むしろベクトルは逆方向とすら見えなくはないように感じます。
 その中で深井は良くも悪くも、ここ数年のジェフを象徴する存在だった印象です。
 その傾向は見ていて楽しいけれども、粗があって脆さも感じられた。
 そして、何よりもその傾向が見られた状況で長年もやってきたけれども、結果が出なかった。


 今のジェフはそこから卒業して、更なる成長を目指す方向に進もうとしているのだと思います。
 そして、深井本人は新たな舞台を目指して、長崎に向かうことになったということになったわけですね。
 深井が加入してから、チームはなかなか結果が出なかった。
 もちろんそれは深井だけの責任ではないのですけど、主軸となった年も昇格できなかった。
 ジェフとしても深井としても、このままでは限界は見えていたように思います。
 これは深井にかかわらず言える部分があると思いますが、要するに「変わらなければいけない」ということですね。



 厳しい意見も述べましたが、深井のような選手の退団は今後のジェフの方向性を占う上でも重要になってくるでしょう。
 今後のスタイルを考える上でもそうだし、世代交代という点においても現実を見なければいけないと思います。
 現在のジェフはベテラン選手が増えているわけで、今後大きな変革を求められる可能性があるわけですから、サポも覚悟はしておかなければいけないと思います。
 しかし、愛されてきた"傾向"を変えなければならず、自分たちが獲得したわけではない選手たちを世代交代させていかなければいけない上に、結果を求められるのですから、斉藤TDや鈴木監督も大変ですね…。
 そう考えれば、なかなか人気が出ないのも当然なのかもしれません。
 けれども、今のジェフはともかく多少無理をしても、「変わらなければいけない」はずで。


 深井は非常に性格もプレーもまっすぐな選手で、周りに愛された選手だったと思います。
 それゆえに多少課題があっても許されていた部分もあり、プレーヤーとしてもそれでいい選手であり、それしかできない選手(良くも悪くも変えられない選手)だったとも思います。
 しかし、だからこそどのチームにも合う選手とは言い難く、求められるチームがあるのであればそこに行ったほうが本人のためにもなるタイプではないでしょうか。
 深井のプレースタイルを考えると、海外移籍の噂もあったようですから、少しレベルの低い海外チームで自由にプレーするような環境の方が合うのかな?なんて思ってもいたのですけどね。



 どうしても完全移籍での退団や喧嘩別れのような状況が多いスポーツチームにおいて、今回のような友好的な退団・移籍は数少ないと思いますし、それも深井の性格があったからこそ。
 ジェフの功労者の1人であることは間違いないわけで、その本人が現役を希望したわけですから前向きに送り出したいところではないかと私は思います。
 今年はライバルということになりますが、これからは長崎の地で頑張ってほしいですね。