大塚に期待するマリオ・ハース的存在

 マリオ・ハースは元オーストラリア代表FWで、ジェフには恩師であるオシム監督に請われて05年と06年に在籍。
 もっと長くいたように思えるのは、あの頃のチームが充実して濃厚なシーズンを送っていたからでしょうか。
 個人的には非常に好きな選手で、プレーを見ていても勉強になるFWだったと思います。


 ジェフでは、主に巻と2トップを組んでいたマリオ・ハース
 当時のジェフはいまさら説明する必要がないと思いますが、積極的な前への飛び出しがウリのチームでした。
 しかし、ハースは2トップの位置ながら、どんどん前に出ていくタイプではありませんでした。
 むしろゴールに背を向けてのプレーが多かった印象で、そこからうまく走りこんでいた2列目の選手にボールを落としたり、少し引くことによって相手のマークをはがし、斜め前の巻や2列目の選手に向けて中距離のラストパスを出すプレーが絶品でした。


 まさに走るサッカーにおいて、司令塔とも言える存在。
 走る部分ばかりがクローズアップされますが、ハースがスピードあふれるサッカーに緩急を付けて、攻撃に変化を与え、高質なボールを供給していたことは見逃せない部分だと思います。
 オシム監督は日本代表でもボランチに憲剛を使い、トップ下に遠藤を使っていたように、高い位置にラストパサーを置きたがる傾向にありました。
 エキストラキッカーとも言っていましたが、ジェフはそれ以来そういった選手の補強に成功していない印象です。



 個人的にはあれ以来ハースに似たような選手を期待しており、実際チームもそういった選手の補強を目指していたところがあったのではないかと思います。
 レイナウドフルゴビッチ、レジナウド、日本人では村井や兵働もそうかもしれません。
 けれども、高い位置でプレーするためには相手の厳しいプレッシャーに負けずに、前を向いて高質なボールを出さなければいけない。
 テクニックはもちろんですが、素早い判断力やフィジカル、スピード、視野の広さや創造性なども必要になってくる難しい仕事だと思います。
 加えて攻撃のラストプレーを引っ張る意志の強さも欲しいところで、なかなかそういった選手はいないと思います。


 けれども、もしかしたら大塚なら、そういった選手になれるのかもしれない…と感じるようになってきました。
 ラスパスにおける技術力や視野の広さは、以前から感じていたところ。
 さらに今年に入ってからはプレーに積極性も出てきて、アタッキングサードでの攻撃を自ら演出できるようになってきた。
 もちろんまだまだ司令塔としてのプレーはハースには及ばないと思いますが、その分前への飛び出しや守備面で貢献できるかもしれない。



 攻撃の司令塔になるためにも、もっと自信を持って周りを使うプレーをやって行っていいんじゃないかと私は思います。
 自分が走るのももちろんですが、周りの選手を走らせて攻撃で主導権を握ること。
 それと高い位置でプレーするために、もっとフィジカルコンタクトのところでうまく体を使えるようになって、よりゴールに近い位置でマークをいなせるようになってほしいところではないかと思います。
 高い位置でプレーするためには、ヘディングなどでの競り合いも頑張ってほしいところですね。


 横浜FC戦でもゴールにはなりませんでしたが、枠をとらえたミドルシュートが2発。
 サイドからゴール前を覗いてのシュートは、ハースっぽさを感じたところがあります。
 決め手のない中で、何かしようという意図は感じました。


 ただ、あの試合では、もっとゴール前でのプレーを増やして欲しかったところではないでしょうか
 ハースも代表で巻が不在となった時には1トップで起用されたことがありましたが、普段はチャンスメイクの面で見せていた「試合の流れを読む能力」を、ゴール前でうまく活用し相手守備陣の隙を突いてボールを受け得点を決めていました。
 大塚も試合を読む賢さはもっている選手だと思いますので、状況に応じたプレーを身に付けて賢いプレーヤーとして、レベルを上げていってほしいところではないかと思います。
 大塚がゴール前で攻撃の司令塔になれれば、決定力・得点力の部分も改善されていくかもしれませんし、ぜひこのまま成長していってほしいところです。