ケンペス不在で「ナチュラル0トップ」に

 またも試合直後の更新です。
 前にも少し話しましたが、SNSが多くの人に浸透して情報のスピードは速くなっている印象で。
 試合の観想戦なども一夜にして…どころか、試合後数時間には大枠の話が終わってしまっている印象があります。
 そのスピードにブログでついていこうというのは無理があるのかもしれないし、対抗する必要性もないのでしょうが、つられる形でこちらも早めにアップしている感じです。


 W杯が始まるとますます試合数も増えて、1試合を"消化"するスピードも早まっていくのでしょうか。
 ただ、1試合に得られえる情報量というのは変わらないと思いますし、もう少しじっくり試合を見ていきたいというか、1試合の価値は下げたくないところではないかと思うのですけどね。
 一応次の更新は火曜日ということで。
ケンペス不在でターゲット不足に
 ケンペスが出場停止、森本が負傷中のジェフは、大塚と町田が前線に。
 2人とも比較的自由に動き回って、結果的に決まったFWがいないような形だったかなと思います
 その他のメンバーは変わらず、サブには戸島が入りました。


 トラップが少しずれたり、若干ボール離れに時間がかかったりするケースがあるケンペスに代わって、町田を入れたジェフ。
 その分、ボール回しはスムーズになり、見方によっては綺麗なパスワークにはなったと思います。
 しかし、ケンペスがいない分、相手に囲まれてもマイボールにしたり、50/50に出来る選手が少ない。
 そのため、キックオフからボールを保持する時間は長かったですけど、前にボールを送れない状況に。
 町田、井出あたりの軽量級の選手が、相手に潰されるシーンも目立っていたように思います。
 このあたりは個々の課題でもありますが、全体のバランスの問題というのも大きかったように思います。


 また、横浜FCもしっかり前節のジェフを研究してきた印象があります。
 前節のジェフはダブルボランチからテンポよくボールを回して、パスワークのリズムを作っていた印象がありますが、横浜FCはしっかりとそのボランチをケア。
 前線の2人が引いてボランチの前に立ち、ボランチの2人もバランスを考えながら前に出ることで、ジェフのダブルボランチを4人で囲むような格好。
 ジェフのボランチも前後に動いてボールを受けるなど工夫はしていましたが、リズムを作るというところまではいかなかったかなといった印象でした。


 加えて横浜FCの守備は後方に引くことが多く、なかなか前線にスペースがなく飛び出していけなかったことも大きかったと思います。
 先日も話した通り、相手に引かれれば接触プレーはどうしても多くなりますから、小柄な選手が多い今日のスタメンでは厳しい部分があったのかなと。



 前半13分には山口智が与えたFKから、松下裕樹が直接ゴールを狙いポスト直撃。
 逆に前半19分には中盤右寄りの位置から兵働が、ファーの位置で飛び出していった井出にボールを出すも井出がハンド。
 前半27分には右サイドのパスワークから、大塚がポストに嫌われるミドルシュート
 良いボール、良い判断でのシュートでしたが、逆にゴール前にターゲットがおらず、ラストパスを出せないからこそのミドルシュートだったようにも感じてしまいました。


 その後もジェフは優勢で試合を進めるものの、なかなか決め手が見つからない状況に。
 アタッキングサードに持ち込んでも中に選手がいなかったり、いつもよりも速く低いボールでチャンスを狙うもそういったボールは出す方にしても受ける方にしても難易度が高く合わなかったり。 
 普段はチャンスメーカーとしての役割を担う中村も、明確なターゲットがいないため、なかなか良い形は作れませんでしたね。
 中村はパスワークで崩すような展開ではなく、サイドのタッチライン際からゴール前にクロスを上げるプレーが多いので、前線にターゲットがいないといないと合わせるのが難しい。
 前半44分のキムのロングシュートもGK南に弾かれて、ゴールとなりませんでした。 
■消耗戦の末のスコアレス
 0-0で折り返した後半直後。
 横浜FCのカウンターでジェフ最終ラインが裏へのボールを追う体勢から、山口智がGKにバックパスするも短くピンチに。
 危険なプレーでしたが、岡本が何とか触り事なきを得ます。
 後半5分にはキムがトラップミスしてボールを奪われるも、健太郎がカバー。


 前半以上に横浜FCがカウンターで前に出てくるようになってきて、ジェフの裏を狙ってきます。
 前半からジェフは相手が引き気味だったこともあって積極的にラインを押し上げていましたが、後半からはその裏を狙われていた印象です。
 横浜FCが前に出てきた分、ジェフはカウンターを狙いたい展開でしたが、ビルドアップ時のパスミスが目立ちます。


 しかし、後半17分には健太郎の高い位置でのパスカットから、左サイド前方に素早く展開。
 ボールを受けた中村がそのままシュートを放ち、惜しいシーンを作ります。
 後半22分には中央から兵働が、後半25分には左サイドから大塚がそれぞれおミドルシュートを放つも決まらず。
 その直後には右サイドに回った谷澤がサイドの奥で仕掛けて得たFKから、マイナスのボールを井出が受けてミドルシュートを狙うもジャストミートせず。



 そのまま勢いに乗っていきたいところでしたが、その後は横浜FCの時間帯…と、後半は一進一退の展開。
 13時キックオフということもあって、どちらのチームも体力的に厳しく、中盤でのミスが目立ちます。
 ジェフは前節のように、もっと選手の距離感を縮めたいところでしたが、それが出来ずに1本1本のパスが長くなって、ミスが増えてしまった印象です。


 ジェフは後半32分、スタミナ切れの兵働に変えてナムを起用し、そのままボランチ起用。
 続いて後半33分には町田に変えて山中。
 後半43分には谷澤に変えて田中と、攻撃的な選手を起用していきます。



 交代選手で攻め込むシーンもありましたが、その他の選手はついていけず。
 試合が進むにつれて運動量の低下はより激しくなり、全体的なラインも下がり、ギアを上げる体力も残されておらず…。
 そのままスコアレスドローということになりました。


 かなりの消耗戦だったと思います。
 やはりこの時期にこの時間帯キックオフの試合では、両者にとって体力的に厳しく、サッカーのクオリティもどうしても下がってしまいますね。
■「リスクを背負って前に走れ!」
 ケンペスが不在ということで、パスワークだけで相手を崩せるかどうか…といった試合。
 しかし、現実は甘くなかったというか、パスワークが上手くはまればチャンスになりますが、期待通りにはまりきらなかったですね。


 戸島などは身長はあるものの空中戦には強くなく足元の技術などに特徴のある選手ではないかと思いますし、フィジカルのあるケンペスのように強さがあって前線で相手を背負ってプレーできるタイプの選手ではないと思います。
 そのため、現在のFWのタスクである「複数の選手に競られた状況で一瞬でもいいから耐えてポイントになる、そして前に飛び込んでヘディングでゴールを狙う…」というような仕事が出来るようなタイプとはまた違うと思いますので、少なくとも今のままでははまりにくい。
 また少しタイプは違うものの、どちらかといえば今FWに求められているのは巻に近いようなタスクというか。
 岐阜戦でもケンペスがスタメンから外れて、結果的にケンペスの重要性をより色濃くした試合だったと思います。
 それでもこんな時こそ森本がいれば、ある程度ケンペスに近い仕事は出来たのではないかと思うのですが…。
 まぁ、怪我ばかりは仕方ないところがあるとは思います。



 ただ、出場停止などでメンバーが欠けることは当然あり得ることなので、選手がいない分出場した選手が違うメリットや良い面を出してほしかったところです。
 そこが思ったよりも出なかったことが非常に残念です。


 例えば前線からのプレス。
 大塚や町田はキックオフから積極的にチェイシングしていましたが、チーム全体においてはボールを奪ってカウンターという形があまり作れずに終わってしまいました。
 後半17分に健太郎が奪って素早くカウンターに持ち込んだシーンがありますが、ああいったシーンをもっと作りたかった。
 相手が引き気味だっただけに、ハーフカウンターの形がもっと欲しかったところです。


 また、遅攻の状況では、前線に選手たちが飛び出していけなかった。
 全体の運動量が少なくボールがつなげないから大塚や町田が下がって受ける時間帯も多かったですが、その時に前線に飛び出していく選手が前節よりも少なかった。
 前節好調だった谷澤もこの日はブレーキ気味でしたし、町田、井出なども受けてから前に飛び出すという動きが足りなかったように思います。


 その結果、「ナチュラルな0トップ」になってしまったように思います。
 0トップと言っても最近は定義が広くなっている印象もありますが、本来は前線の位置をあえて"空"にして、そこに中盤の選手が飛び出していってチャンスを作る形だったと思います。
 しかし、この日のジェフは大塚や町田などの後ろ向きでのプレーが多く、ゴール前が"空"でもそこに選手が飛び出していかないからチャンスにならない。
 単純にゴール前に選手がいないだけになってしまって、ボールを持ち込んでもラストパスのターゲットがいなかった。


 ケンペス不在でパワーでは勝てずアバウトなボールが出せないこのメンバーにおいて、ゴール前への動き出しも不足してしまえば苦しむのは当然のこと。
 単純に言ってしまえば、「もっとリスクを背負って前に走れ!」という話になるのでしょうか。
 ゴール前に飛び出していくには接触プレーも怖がらず、勇気をもって走りこんでいかなければいけない。
 そのあたりが足りなかったように思えます。



 相手チーム目線で言えば、「ケンペス不在でラッキー」と思っているんじゃないかな…なんて、試合前に思っていました。
 ケンペスは前を向かせたら怖い選手で、ミスもあるけれどもジェフの得点源であることには変わりない。
 でも、それは逆に言えば他の選手に怖さが足りないと思われていることであり、舐められているんだということにもつながりかねない。


 そこを見返すには、リスクを背負ってでも自分が怖いプレーをするしかない。
 そういった意地を見せてほしいと思っていたし、それによってまたチームが成長してくれれば…とも思っていたのですが、逆に他選手の課題ばかりが見えてしまったかなと。
 もちろん役割分担というのはあるわけで、ケンペス以外の選手にもケンペスにはできない部分もあるとは思います。
 しかし、それにしても攻撃面で怖さが足りなかった印象です。


 チーム単位で言えば、ひとまずはケンペスが帰ってくればいいかもしれない。
 けれども、そのままで他の選手は良いのか。
 あるいは、またケンペスが何らかの問題で出場できなかった時には…。


 客観的に見れば「ケンペスがいなくて苦しんだジェフ」という試合に写るのも、仕方ない内容だったと思います。
 他の選手にとってはそれは屈辱だと思いますし、それを悔しいとしっかり感じとって、次にいかしてほしいところではないでしょうか。