飛び出しのクオリティが向上し札幌に快勝

 本格的に気温が高くなってきて、日差しも厳しくなってきましたね。
 夏の季節ももう少し…といった感じでしょうか。
 ベテランが多いこともあってかコンディションに不安があるジェフですが、意外とここ数年夏の始まりはそこまで成績が悪くありません。
 8月中旬から9月にかけて成績を落とすことが多いですから、それまでに巻き返すこと。
 そして、今年はこれまで勝点を伸ばしていませんから、8月中旬から9月の落ち込みを避けることが必要になってきます。
■ジェフ優勢の中、井出が初ゴール
 ジェフのスタメンは、田中に変えて井出を起用。
 また、DFラインではこれまで右SBだったキムをCBに移し、大岩を右SBに移しました。
 森本、山口慶あたりは怪我で不在。
 慶が長引いているのも気になりますが、森本もちょこちょこ怪我がありますね。


 キックオフから、両ゴール前でのプレーが多い展開。
 初めは札幌FW前田が低い位置でボールを持って、都倉に向けてふわっとした浮き球のボールでチャンスメイク。
 しかし、その後はジェフのチャンスが続きます。


 その直後には井出が中盤でボールを奪い、大塚が裏に飛び出してGKと1対1になりましたが、ゴール前でのプレーに迷ってしまい決定機を逃します。
 前半5分にはDFラインから健太郎、兵働とつないで、谷澤が中盤で前を向いてドリブル。
 谷澤からのスルーパスを井出が受けてチャンスになりますが、相手DFに潰されてしまいます。
 その後も左サイドからのチャンスメイク。
 中村の右足でのクロスを跳ね返されたところから、谷澤が再びクロスを上げケンペスがヘディングで井出に落としますが、これも決まらず。
 ボランチ2人でゲームを作り、サイドからチャンスを作り、ケンペスをターゲットにしながら2列目が飛び出す形でチャンスを作っていきますが、ゴールには至りません。


 その後は、ジェフが若干勢いを落としていきます。
 前半15分には谷澤の多少強引なスルーパスに対してケンペスが懸命に追い、GKとのパス交換をゴールにしようかというところでしたが決まらず。
 逆に札幌は都倉が山口智をドリブルで簡単に抜き去るも、キムのカバーもあって岡本がセーブ。
 前半25分にはケンペスが中央からドリブルで持ち込み、強烈なミドルシュートを放ちますが、相手GKがセーブします。
 前半30分、右CKから智がヘディングでゴールを狙いますがバー直撃。
 これも決まりません。



 ようやくゴールが決まったのが、前半34分。
 相手ボランチの位置で、大塚がボールを持って反転。
 右サイドに移っていた谷澤がアーリークロスを上げると、走りこんでいた井出の足元にピタリ。
 これをワンタッチで井出が合せて、先制ゴールをあげます。
 井出にとっては、これがプロ入り初ゴールとなりました。


 前半5分に谷澤が前を向いたシーンでも感じましたが、札幌は中盤のマークが中途半端。
 大塚が下がって受けたり、SHが中に入ってくる動きに対しての対応がはっきりしていない印象で、ジェフの中盤の選手をフリーにさせがちでした。
 得点直後にもジェフのプレッシャーから相手のミスを誘い、井出が右サイドからクロス。
 谷澤がファーで飛び込み、惜しいシーンを作ります。
ケンペスの追加点で快勝
 後半4分には左サイド寄りの位置で、ケンペスが反転してボールを持ち込みキープ。
 中央に折り返して兵働がシュート。
 しかし、札幌の5分には左右からのクロスを跳ね返すも、中盤で拾われミドルシュートを放たれます。
 徐々にジェフの最終ラインが下がり、中盤のスペースが広くになっていき、守備で甘さが生まれていきます。


 しかし、なんとかその時間帯をしのぐと、後半15分あたりからは札幌の勢いも落ち込んでいきます。
 後半20分には、大岩のクロスからケンペスへタイミングぴったりのクロス。
 ケンペスはヘディングでゴールを狙いますが、GK金山が片手でファインセーブ。
 このあたりは、さすがの反応といったところでしょうか。



 後半25分にはカウンターでケンペスがサイドに抜け出し、大塚にラストパスを送るもこれが通らず。
 ケンペスはこの試合、前へ馬力のある動き出しを何度も見せていたのですが、最後のところでもう少し…といった感じでした。


 そのケンペスにようやくゴールが生まれたのが、後半28分。
 右サイドで井出からのボールを受けた大塚が、ふわりとしたセンタリングを上げて、ケンペスがヘディングでゴール。
 このシーンでの大塚のクロス。
 素早くクロスを上げるプレーを選択したことで、相手のチェックが来る前にボールを出しきることができた。
 ちょっとしたスペースではありますけど、そこが大きかったと思います。


 また、ケンペスはこの日、頑張って動いていたので、ゴール決められてよかったですね。
 もちろん頑張って動いていたといっても、運動量豊富とまではいかないと思います。
 けれども、その分ケンペスは体を張ったプレーができる選手だと思いますから、1つ1つのプレーの効果は大きいですね。


 その直後には左サイドの谷澤からのクロスに、大外の大塚が合わせてシュートを放つものの決まらず。
 しかし、サイドに開いた位置から大外を狙ってのクロスだっただけに、ダイナミックなプレーとなりました。



 2点目を取ったジェフは、運動量豊富な田中、町田、勇人を立て続けに投入。
 後半40分には兵働から町田がボールを受けて、中盤右サイドの位置で反転。
 その間に田中が飛び出して、ゴールを狙います。


 続く後半89分には、町田が相手の間でうまく受けて谷澤とワンツー。
 完全に抜け出した町田はフリーのケンペスにパスを出しますが、シュートは相手GKにストップ。
 ゴールにはなりませんでしたが、スタメンを外れている選手たちも、意地を見せてくれました。
 

 最後までジェフが攻めこむ展開で、2-0でジェフの勝利となりました。
 スコアに関しては、もっと差がついても良かったかなと思うくらいでした。
■チームとして狙うファーの飛び出し
 ジェフは連戦から1週間開いて、コンディションも良かった印象です。
 少し時間が開いたことで頭の中も整理できたのか、攻撃時の動きなどもより整理されていたようにも感じました。
 逆に札幌の方はアウェイで気候の違いもあったのか、コンディションが整っていなかった印象。
 プレーにも迷いが感じ、守備時のポジショニングやマークの対応にも不安定な部分を感じました。



 ジェフは特に攻撃時の飛び出しのクオリティが、向上してきたように思います。
 キックオフ直後の大塚の飛び出しも、パスを出した井出のプレーも質も良かったですが、ケンペスが受けに少し下がった瞬間を狙って、大塚がタイミングよく飛び出した動きが効果的でした。
 また、前半5分の井出の飛び出しも、谷澤が左サイド気味の位置でボールを受けたところから、ケンペスがニアに走りこみ、井出が大外から斜めに飛び出したところから。
 得点シーンでの井出やその直後の谷澤の動きも近いものがありましたが、良いタイミング、良い形で後ろの選手が前へ飛び出していたのが印象的です。


 ようするに、ニアでパワーのあるケンペスが受ける動きを軸として、ファーに両SHや大塚が飛び出す展開が明確にできてきたと。
 相手としてはケンペスをフリーにすることもできないし、後ろから裏に飛び出してくるからマークもしにくい。
 また、これまで悪い時のジェフはゴール前への飛び出しが不足がちだったジェフですが、ファーで選手が飛び出す意識付けをしたことでそれも解消することができた。
 ニアの動きとファーの動き、連動したゴールへの動きが作れていたように思います。


 そして、そこにパスを出す側の選手も、しっかりとファーの選手を見てボールを上げている。
 そこが決して選手個々の狙いではなく、チームとして意図的にこの形をやってきた結果、連動性が高まってきているのだなと感じる部分です。



 また相手の中盤の守備が終始不安定だったこともあって、結果的にサイドだけでなく中央の位置でも中盤の選手がプレーしたいという意図を感じた試合でもありました。
 うまく相手のボランチの横あたりを両SHや大塚・町田あたりが使って、そこから反転してのチャンスメイクや飛び出しが出来ていた。
 相手の守備がきつい時は中央でのプレーが厳しくなってしまい、中を使えないこともありますが、本来はこれをやりたいのではないでしょうか。
 やはりチームの根本は、そこまで大きく変わったわけではないということ。
 そこが確認できたことも、私としてはすごく大きな部分でもあったと思います。


 相手の出来を差し引かなければいけない部分はあったと思うのですが、「自分たちの意図するサッカーができたこと」という部分が個人的にはサッカーを見るにおいて、あるいはそのチームを評価するにおいてすごく大事な部分だと思っていますので、この試合は非常に良かったと思います。
 選手個々ではなく、チームとしての"意志"も感じたし、それを実現できたということ。
 そして、勝利という結果も残せたということ。



 もちろん個々の決定力や守備能力など、細かな課題もありましたが、チームとして前進していることを感じましたし、波に乗れそうな試合ではなかったかと思います。
 あとはこの方向で続けて、さらに成長していくことが大事なります。
 SHが飛び出すためにはSHの運動量だけでなく、全体もコンパクトなサッカーをやっていかなければいけない。
 後半の途中まで少し苦しんで飛び出しが減ったのもそこが理由だと思いますし、今後気温が高くなってきた時にどうなるか。
 逆に守備においてはその苦しい時間帯に我慢できたことが、完封に繋がったのだとも思いますが、それが今後も続けていけるか。


 今後を考えれば、決して不安がなくもありません。
 とはいえ、収穫は非常に多かったと思いますし、今は久々の"快勝"を喜びたいところですね。