ゴールデンウィーク連戦を経ての3つの収穫

 4月13日、第7節の湘南戦に0-6で大敗。
 巻き返しを期待した第8節富山戦でも1-1の引き分け。
 今思い返しても、現時点での今季ワーストゲームだったように思う富山戦を経て、第9節讃岐戦…。
 この試合からゴールデンウィーク連戦ということで、最悪の状況で連戦がスタートしました。


 ゴールデンウィーク中、第9節讃岐戦から第13節山形戦の成績は、1勝1敗3分。
 順位も現在15位で、自動昇格圏の2位磐田との勝点差は10。
 昇格を目指すジェフとしては、厳しい状況となってるのが実際のところです。


 …もっとも、クラブとしては「今年の昇格」は目標として掲げていないはずなんですけどね。
 もちろん現場の指揮官である鈴木監督はベストな結果を考え「昇格」を口にしてはいましたが、サポコミで社長とTDは「昇格」を約束してはいないはずです。
 そこは"クラブ"にとって非常に大事なポイントだと思うのですが、時折勘違いされている印象もあります。
 今までの経緯というのもあるのでしょうが、あまり認知されていないのでしょうか。



 とはいえ、出来ることなら昇格が望ましいのは、ジェフ関係者の誰もが思うところなはず。
 それを考えれば、劣勢の状況であることには間違いありません。


 しかし、正確にチームを評価しようとするというのであれば、この連戦で確実に収穫もあったことも決して見逃してはいけないところでしょう。
 オシム監督も「一歩退いて状況を冷静に、客観的に把握しようと努めてほしい」と話しているそうですしね。
 これは日本代表に際してのお話ですが、クラブチームでも状況は変わらないでしょう。



 まず1つ目は山形戦後も話した通り、新たなシステムにおいての連携面が向上し、チームとしての形が出来つつあること。
 湘南戦での大敗、富山戦での悪い試合内容を経験して、連戦初戦の讃岐戦で4-4-2に変えてきたジェフ。
 守備の課題への応急処置的な意味合いもあったと思うのですが、初戦ではまだ左サイドに攻撃が偏るなど全体的なバランスには課題が見受けられました。


 しかし、中村からのクロスだけでなく、中盤から兵働への縦パスも出るようになり、森本のポストや大塚のチャンスメイクも絡められるようになってきた。
 中村と周りの連携も向上し、右サイドにおける守備も徐々に改善。
 また当初は守備で相手ボランチを空けてしまいがちでしたが、大塚が守備時に下がることによって改善し、ジェフのボランチもバランスを考え大きくスペースを空けることは減ったように思います。
 チームにおける大枠のデザインが出来てきた印象で、戦い方に安定感がでてきました。


 欲を言えば大塚がクロスに合わせる形を作れたり、ポストプレーなどができるようになってくれば、前線の関係も強固になっていくのではないでしょうか。
 現時点ではまだ森本とケンペスの2トップの攻撃力も捨てがたい状況で、今後どういった組み合わせになるかはわからない状況ですが、大塚が下がって守備で貢献しつつ前でもFWの役割を果たせれば、大塚を軸に1.5列目を置くシステムで固定化できるのではないかと。



 2つ目の収穫は、新たな選手の活躍。
 ポストプレーからの飛び出しが機能するようになった森本や、ドリブルでの仕掛けに可能性を見せた井出。
 プレーの幅が広がった大塚や、右SBで守備に貢献しているキムも、開幕前の怪我や体調問題による出遅れから追いつき、コンディションは良好なように見えます。 
 また怪我を乗り越えたナムや山中、田代なども途中出場の機会を得ており、今後戦力として期待が高まります。
 山中、田代以外は昨年から在籍する選手ではありますが、若手〜中堅の選手たちですからまだ成長できる選手たちだと思いますし、チームに勢いをもたらしてくれる可能性もあるでしょう。


 もちろんどの選手もポジションを確保するのは簡単ではなく、それぞれ出場機会やベンチ入りを争うライバル関係でもあり、これまで出場機会の多かった町田や大岩なども今後が期待される選手。
 本来ポジションというものは他選手から奪うものなはずで、若手だからといって出場機会を簡単に与えられるような環境ではそこでの成長も難しいでしょう。
 しかし、この連戦で一定のチャンスはもらえたはずだし、それぞれに可能性も課題も見えてきたわけですから、ここから更なる競争が始まることになるのではないでしょうか。
 当然ベテラン選手にも意地を見せてほしいですし、ぜひとも激しい競争の中で更なる成長を期待したいところです。



 そして、3つ目は新たなシステムを採用したこと。
 「いまさらか…」という話題になるかもしれませんが、これが今思えば結果的にチームにおいて大きな意味をなしてきたような気がします。
 思い起こせば開幕戦から2列目にアタッカーを置いて、ボランチが積極的に前に出ていくサッカーを目指していた今年のジェフ。
 序盤戦は苦戦しましたが、徐々に形が見えてきて第5節熊本戦・第6節水戸戦で連勝を記録しました。
 しかし、翌戦の湘南戦で大敗。
 ようやくここから勢いに乗って行こうといったところだったからこそ、チーム内でのショックは大きなものだったのかもしれません。


 正直あの湘南相手では2順目の対戦で勝てるようにはなかなか思えず、数年後にやって勝てるかどうか…と感じてしまうほど、圧倒的な差を見せつけられてしまいました。
 このままやっていてもチームは大きな進化を遂げられるようには思えず、あの湘南に勝つためには小さな進歩ではどうしようもない…と。


 それだけに、その後4-4-2をベースとしたサッカーにシフトしたことは、結果的にかもしれませんがチームの新たな可能性を探る上でも大きな意味を持ち、その可能性における成果も見えつつあるように思います。
 中村を活かすにはSHをサイドに開かせて相手を喰いつかせておいて前を空けたほうが良さそうだし、兵働もトップ下の位置に選手を置かずに低い位置から前を向かせた方がチャンスを作れる。
 森本も動き自体は好調で2トップ気味にすればケンペス・森本などの負担も軽くなり、今まで不足がちだった裏への飛び出しも増えるようになってきた。


 もちろんその分町田などは出場機会が遠のきますが、今季の町田はここまで大きな活躍を見せられていなかったことを考えれば、それも仕方のないところ。
 ここまでの流れで言えば、ライバル争いにおいて大塚に巻き返され、一歩遅れを取りつつあるといったところでしょう。
 しかし、山形戦での途中起用を見ても町田にもまだまだチャンスはあるはずで、この悔しさをバネにここから更なる成長を遂げられるかどうか。
 個人的に今期は町田のチームになると思っていたからこそもう1つだったのは残念で、それがあったからこそチームは変わらざるをえなかったとすら思っているのですが、再び町田がチームの中心として返り咲くことができるのか…。
 そこも今後の見どころの1つではないでしょうか。



 ベースは変わらないけれども、"型"を変えつつあるジェフ。
 それが湘南戦で感じた根本的な実力の差において、どれだけ有効なものになるのかは正直わかりませんが、個人的には熊本・水戸戦での内容もそこまでよくはなかったように感じていましたし、現在の戦い方が今年のチームにはピタリとはまっているようにも思います。
 あの2連勝の時はボランチ兵働が積極的に前に上がって行ってチャンスを作っていきましたが、あれが成り立ったのも相手の出来が悪かったこともあって、結果的に"神風アタック"が成功したような試合だったと思います。
 少なくともあの戦い方ではJ1では通用しないと思っていましたし、それに比べれば現在の方がより現実を捉えられており、内容も良くなっているように感じます。


 それでも結果がついてこないというのがもどかしいところではありますが、そこは強い気持ちを持って、下を向かずに戦っていくしかないのではないでしょうか。
 確かに自動昇格圏は遠い。
 けれども、見方を変えれば、追う立場になったことによって「失う物は何もない」状況になったはずで。
 長年プレッシャーに苦しんできたように感じるジェフにとっては、はっきりと追う立場になった方が戦いやすい部分もあるかもしれません。


 ここから勢いに乗って巻き返し、最終的に昇格を成し遂げられるかどうか。
 厳しいチャレンジかもしれませんが、だからこそそれを乗り越えればクラブにとっても大きな財産になるでしょうし、今はその挑戦を共に楽しみたいところではないでしょうか。



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