中村を前へ押し上る攻撃パターンを作り上げるも

 岐阜は名のあるベテラン選手の補強もあってか、昨年より観客が平均で2000人ほど増えているようで。
 それもあり更にGWということもあってか、テレビ中継で聞く限り「わー」とか「おー」といった、素直な反応が多かったような気がします。
 純粋に観客がサッカーを楽しんでいるような印象をうけて、雰囲気はよさそうでしたね。
 まぁ、いつまでもああいった反応というわけにはいかないのでしょうが…。
■バタバタした序盤に失点
 ジェフは前節ゴールを決めた大塚が、ケンペスに代わってスタメン。
 FWというよりはトップ下、1.5列目といった役割で、森本より若干遅れて前に出ていく動きをしていました。
 また、スカパーによると山口智が体調不良で、ベンチにも入れず。
 代わりに大岩とキムのCBコンビとなり、右SBに天野が入りました。



 岐阜はキックオフからナザリトを中心としたFW陣に早めにパスを出し、ポストプレーから中盤やサイドに展開して攻撃を作っていきます。
 ナザリトは前への仕掛けに迫力があるだけでなく、ポストプレーも丁寧でシンプルに落とせる。
 ボールを奪われるシーンでも簡単にはロストしないので、中盤以下の選手もナザリトを信じて思い切った攻撃参加ができる。
 そのうちJ1に上がっていったりするんでしょうか。
 また元ジェフの右SB益山がスピードを活かして積極的に上がっていき、谷澤、中村といったジェフ右サイドの守備を翻弄していきます。


 前半10分。
 岐阜の益山からのロングスロー。
 一度は大岩が跳ね返すも、ナザリトに拾われ、キープされて中盤に落とされます。
 跳ね返した後のジェフ最終ラインはポジショニングが不安定で、中盤から前に出されたボールに対し、マークが遅れて相手に繋がれ失点。
 一瞬のすきをつかれた感じでしたが、それまでもナザリトのポストからの中盤の展開にやられていましたし、その流れでの失点。
 加えて、跳ね返した後の守備バランスも悪かったですね。



 その後は、ジェフがボールを持つ時間が増えていきます。
 しかし、山口智が不在な影響もあってか、序盤は前へのロングボールが増える展開。
 しかも、前線にケンペスがいないため、簡単に蹴ったボールでは競り勝てない。
 森本も1トップ気味になって、前節、前々節ほどポストが機能していませんでした。
 もう少しボランチから丁寧につなげればよかったのでしょうが…。


 そのため、中央からの攻撃が作れず、左サイドの中村からクロスを上げる攻撃一辺倒に。
 前半20分には、中村の速いクロスに森本が合わせようとしますがゴールならず。
 このシーンでもそうですが、ジェフは上手く中盤の選手が低めの位置で受けて、中村の前を空けうまく中村を押し上げていましたね。
 ここでは谷澤が引いて、兵働がボールを受けている間に、中村が前に飛び出していって、ボールを受けています。
 左サイドに攻撃が偏る課題は依然として感じますが、中村をうまく活かす連携面は向上しているように思います。



 徐々にトップ下の大塚もボールを触れるようになっていったこともあってか、ボランチからも縦にパスが供給されるようになり、攻撃のバランスは改善されていったと思います。
 なかなかボールがつながらないこともあって、大塚が中盤で受ける形に変えていったのでしょうか。
 ただ、岐阜の守備も局面で激しく、なかなか決定機がつくれません。
ケンペス投入から2ゴール
 後半開始早々、森本がゴールに迫りますが、結果にはつながらず。
 前半から森本は後方からのボールをうまく反転して前に出ていったり、クロスに飛び込んだりと、ボールの受け方だけをみると「さすが」と思わせるプレーを見せていました。
 しかし、肝心のそこから先で、強さを発揮できません。


 後半15分。
 岐阜のFKで、中央の選手をフリーにしてしまい2失点目。
 前のヘアニに気を取られて、マークを空けてしまったんでしょうか。
 


 ジェフは天野に変えてケンペスを投入。
 田中を右SBに起用する攻撃的な布陣に変えてきました。
 その直後、ジェフ右サイドで得たFKからの展開。
 逆サイドに流れてケンペスがクロスを上げ、最後は大岩がシュートを放ちますが枠外に。


 そして、後半22分。
 ジェフ左サイドでのFKからの攻撃で、ボールが右サイドに流れます。
 一度はボールを奪われるもプレスで相手のミスを誘い、キムがボールを持つとサイドの大塚にパス。
 大塚から大外を狙ったクロスに対し、ファーのケンペスが相手に競り勝ってヘディングでゴール。
 ジェフが1点を返します。



 続く後半30分。
 左サイドで中村がボールを持ち込んで仕掛けていくと、相手DFがペナルティエリアでPK。
 これをケンペスが決めて同点とします。
 このシーンでも、中村の前にいた大塚がゴールに背を向けた形でボールを受けて、スイッチする形で中村を前に押し出します。
 前半20分と形は違いますが、前の選手がうまくスペースを作りつつ、相手を引きつけて、中村を走らせる形をチームとして作れてきているんでしょうね。
 また、この日の大塚はパスワークの部分で貢献していたと思います。


 その直後にも大塚のビルドアップから、森本がうまくボールを引き出し、2列目から走りこんできた兵働が飛び出します。
 角度のないところから狙ったシュートはポスト直撃。
 非常に惜しいシーンでした。


 直後にカウンターから危険なシュートを作られるなど、両者ゴール前でのプレーが増えていく展開に。
 ケンペスが右サイドに流れて、中央でフリーだった森本へ折り返すも通らず。
 最後は兵働からの浮き球のパスを、森本が受けてゴールを狙うも決まらず。
 良い攻撃が出来ていた者のゴールとはならず、そのまま同点で試合終了となってしまいました。
■危機察知能力に課題?
 つい「FWの違い」に目が活きがちな試合だったかなぁとも思うのですが、FWへの中盤のサポートも気になりました。
 岐阜の中盤の選手たちは切り替えが早く、運動量も豊富で。
 それによって守備も厳しく、セカンドボールも拾え、攻守に良いリズムを作っていたと思います。


 一方のジェフのボランチなどは、運動量や守備においてやはり甘さを感じる。
 けれども、その分チャンスメイクはできていたようにも思いますし、特に試合終盤の兵働などは積極的な攻撃参加も見せることができていました。
 ただ、欲を言えばチームが良くない流れの時に、ボールをうまく回して試合を落ち着かせてほしいところ。
 守備などではどうしても課題があって、運動量もないため、全体が押し込まれがちになるわけですから、その分ボランチのところでボールを持ってチームに安定感を与えてほしいところではないでしょうか。



 また、智のいなかったDFラインにおいては、2失点と課題を感じましたが、智がいる状況でも失点は多かったですから、そこだけの問題でもないのでしょうね…。
 逆に2失点で済んだのは、キムがフィジカル面で頑張れたからという部分もあったと思います。
 ポストでは貢献していたナザリトですが、前は簡単に向かせずキムがスピードと体の強さで相手を何度も止めていたシーンがあったと思います。
 連携面とビルドアップでは課題も多かったですが、フィジカル面では収穫もあったキムのCB起用と言えるのではないでしょうか。


 森本は前を向けたけれども、得点を奪えなかった。
 ナザリトはポストで大きく貢献していたけれども、前は向けなかった。
 結局スタメンで注目された両FWが、得点を奪えなかったことになりますね。



 失点シーンは今回もまた事故的な印象も強かったように思います。
 けれども、毎回事故的な失点が多すぎるのでは言い訳にはならず、信頼性がないということになってしまう。
 危機察知能力の問題を感じますし、特に1失点目などはもう少し早く大岩が元のポジションに戻る姿勢を見せていれば、ああはならなかった可能性があるのではないでしょうか。
 しかし、そこに戻らなくても危険だと思わないから、遅れてしまう。


 守備の集中力の問題という話を何度かしていますが、集中力は90分間100%を保てるものではないでしょう。
 「ここが危険だ」と思った瞬間だけ100%の集中力を持って守るものだと思うのですが、そのためにも「どのタイミングでどの場所が危ないか」を把握しなければいけない。
 それがいわゆる危機察知能力だと思うのですが、大岩に限らずそこが足りないジェフの選手が多いような気がします。
 これはいわば守備センスというものではないかとも思いますし、なかなか習得は難しいところですね。



 試合を通してみると、中村の具体的な活かし方が見えてきたことや、大塚のパスセンスなど収穫もあったと思います。
 特に中村を前へ押し上げる形はスムーズで、見ていても可能性を感じるところで、そこからPKを得ることもでき結果も残せたことになります。
 しかし、一方で失点が多いことが、やはり気になるところではないでしょうか。