観客動員数から感じるクラブの未来への危機感

 ジェフは明日の群馬戦に向け「フクアリ満員大作戦」と題して、大がかりな集客イベントを行っています。
 昨年の観客動員数が平均10004人に比べて今年はこれまで平均7530人と、深刻な観客減少に歯止めをかけたいところなのでしょう。
 もっとも観客動員数の減少はJリーグ全体にも言えることのようなので、ジェフだけの問題ではないんかもしれませんが。
 しかし、個人的にはJRに主導権が移ってからのジェフは、顧客満足度向上ばかりを狙い、既存のサポーターに媚びすぎている印象もあります。
 イベントをメイン側ではなくゴール裏に向けて行うようにし、試合前には一時期ゴール裏に選手を挨拶に行かせ、以前には元ジェフ選手の獲得や江尻監督の起用など強化面にもその傾向が見られたところがあったと思います。


 そして、今回は深井をPR部長に任命。
 確かに既存のサポには人気がある起用でしょうが、外に向けてのPRにはなりにくい。
 一時期のジェフや現在のC大阪のように、顧客を増やすためには外から新規顧客を連れてこないと難しいのではないでしょうか。
 もちろん既存のサポも重要ですし、今はともかく観客減少を止めたいという思いもわからなくはありません。
 けれども、本当にコアなサポというのは何があっても来てくれるのでしょうし、逆に何が合っても文句は出てくるのでしょう(笑)
 むしろ既存のサポばかりを優遇していくと新規ファンには敷居が高くなってしまう可能性もありますし、それよりもより新規ファンに訴えかけるような営業をしていかなければいけないような気がします。
 JRなら顧客満足度を高めればそれでいいのかもしれませんけど、サッカークラブの運営ではそうはいかないわけですからね。



 先日話した"クラブ"に関して強い危機感を覚える理由の1つとして、この観客動員数の大幅減少もあります。
 観客動員数が減少すれば予算減少も懸念されるだけでなく(また親会社が補填してくれる可能性はあるでしょうが)、クラブの魅力が下がることにもつながる。
 それも"チーム"が結果を出せなかったり、サッカーが面白くないからという理由もあるのかもしれません。
 けれども、それだけではないように思います。


 昨年とある他チームのサポと一緒にジェフの試合を見させていただく機会があったわけですが、現在のジェフサポは凄くストレスがたまっている状況ではないかと分析されていました。
 結果が出ないことへの苛立ち、うまくいかないことへの不満…。
 ただ、サッカーですから、結果を残せるのは一握り。
 その結果を残せているクラブだって、いつかは苦しむ時期があるかもしれない。
 結果が出ないことだけを言い訳にしていては、本当の意味での先には進めないかもしれない。



 また、別の他サポにも貴重な意見を伺ったのですが、そのチームもジェフ同様の悩みを抱えているようでした。
 サポーターを取り巻く雰囲気が、非常に悪いと。
 それによって、クラブを応援する気持ちも失せてしまうと。


 これはここ数年のジェフにおいても、似たような部分を強く感じるところでしたので、すごく共感できる思いでした。
 実際に居残り騒動もあって、フクアリに子供たちを連れていけないなんて話も伺ったばかり。
 試合に負けると、何が悪いのか、どの選手が問題なのか、誰がいけないのか…とすぐに戦犯探しに進んでいく。
 「勝てて当然」という前提の下で、減点法で試合を分析し始める…と。
 そのような雰囲気の中で、チームは万全の状況で戦い、良い結果を出せるのか。
 観客が増えて行くのか。


 このような傾向は昨今のSNSブームもあって、なおさら高まっている印象があります。
 いくらチームに前向きな意見を持った方でも、その周りの人が皆批判をし始めれば、疑問を感じるようになっていくかもしれない。
 または先ほどの話のように周りが批判し雰囲気が悪くなったことによって、不快感を覚えるかもしれない。
 あるいは、チームに対して不満のある人が、周りの人が批判を聞くことによって、更に声を大きくするかもしれない。
 物事マイナス面を探す方が簡単で、そういった声の方が大きくなりがちですから、余計にサポーター全体における"負のオーラ"は高まっていく…。



 歴史の長いクラブこそ、そういった方向にあるのでしょうか。
 長年やっているバンドでも、新曲が出るたびに「昔のほうが良かった」、「もっとこのバンドはこうあるべきだ」という話が出てくるといったケースは少なくないようです。
 一度成功しているからこそ、あるいはもっとできるはずだと思うからこそ、純粋に今を楽しもうという気持ちは薄まってしまう。
 それならば、極論をいうと私も含め古参のファンは、いなくなった方が良いということなのでしょうか…?
 逆にディズニーランドなどは、その点ですごいですよね。
 炎天下でも小雪舞う中でも人気アトラクションには数時間単位の待ち行列が並び、立ちながら待ち続けなければいけない。
 それでも不満の声は少なく、雰囲気の良い中で待つことができる。
 もちろんそれは運営側の努力もあってのことだろうけど…。



 以前にも話した通り個人的に障害者スポーツを見る機会があるのですが、選手たちはスポーツができる機会を純粋に楽しみ、応援する側も明るい気持ちで見守ることができる。
 ミスをしても励まし合って、次はしないように、さらに良くなるようにと、未来を見ながらプレーすることができる。
 そういった前向きな雰囲気こそがスポーツにおける良さの原点ではないかと思うわけですけど、今のジェフのサポーター周辺においてはそれが希薄な気がします。
 もちろん結果が伴えばそれも解消されるかもしれないし、毎年1年でのJ1復帰をクラブが掲げ失敗しているのだから、そこへの不満が大きくなるのは当然のこと。
 とはいえ、結果だけがクラブとサポーターを繋ぐものではないはずだし、全てのクラブが結果を残せるはずもないわけで。


 誰が見ても苦しいといえるようなクラブ状況ではありますが、問題なのは「苦しいからこそともに頑張ろう」と心の底から言えるのか。
 それとも「苦しいのは誰のせいだ」と内輪揉めを始めるのかによって、大きく雰囲気は異なるでしょう
 私はサポーターも含めてクラブなのだと思っていますし、であるのならサポーターにも現状への責任の一端はあると言えるのではないかと思います。



 "クラブ"の今後がどうなるかは誰にもわからないことではありますが、"チーム"がどう変わろうともまたどこかで躓くことは当然あるでしょう。
 その時にも前向きな雰囲気でいられるかどうか。
 そのためにも、明るい未来を築きあげられるかどうか。
 それは決してピッチ上やフロントだけの問題ではない。
 フクアリの観客席も含めたクラブ全体において、"未来のジェフ"が問われているのではないでしょうか。