クラブ全体で危機感を共有することによって

 湘南に0-6の大敗を喫したジェフ。
 今後の日程を見ると、富山戦、讃岐戦と続きます。
 ともに今季まだ未勝利のチームが相手という意味で、結果という意味においては比較的計算しやすい試合と言えるはずです。


 しかし、熊本、水戸と状態の悪い相手に連勝したこともあって、湘南戦で油断や甘さが出た部分もあったのではないかと思いますし、一概にそれが良い日程ともいえないのかもしれません。
 例え下位チーム相手の試合であっても、良い結果が出ようとも常に強い意識を持ち続けることが、本当に強いチームを目指すための必須条件になってくるのではないでしょうか。
 この日程をありがたいと思うのではなく、1試合1試合妥協せずに戦っていきたいところです。



 昨日も少し触れましたが、ジェフは湘南相手にも自分たちのスタイルを変えず勝ちに行く戦い方をしたことになります。
 もしかしたら、スタイルを変えメンバーも変更すれば、勝ちはないにしても引き分けは狙えたのかもしれません。
 全体のラインを引いて、ロングボールを出して…言わば"格下のサッカー"をすれば、あそこまでの大敗にはならなかったでしょう。
 けれども、それは"自分たちの強み"作りを一度放棄することになる。
 例としてあげるのは失礼に値するとは思いますが、今年J1で苦しむ徳島などは昨年相手対策を徹底して、結果的にJ2内での勝利にこだわったチーム作りをしていた印象があります。
 その結果"自分たちの強み"を作りきれずに昇格し、現在苦境に立たされている部分があるのではないでしょうか。


 ジェフでも例えば兵働のボランチ起用は、現状ではJ1レベルだと通用しないだろうと湘南と戦う前から思ってはいました。
 しかし、J2の下位チーム相手なら、かなり効果的な仕事ができてしまう。
 J2での確実な勝利を目指すのか、それよりも高い目標を目指すのか。
 もちろん理想を言えば両方を成し遂げたいわけですが、現実はそう甘くないことは過去5年間で痛いほどわかっているはずで。
 かといって、TVゲームではないのだから将来性を期待して若い選手を使い続ければ、必ず数年後に成功するかというとそう単純なものでもなく。


 今後どのような"目線"でチーム作りをしていくつもりなのか、改めて問われることになっていくのかもしれません。
 これからの姿勢を問われるのは、ジェフを見守るサポーター側にも言える部分があるのではないでしょうか。
 例えば井出の守備力、町田の技術、中村の判断力、谷澤の守備意識、天野の対人守備等々は、開幕からこれまでにも指摘できた問題だったはずです。
 それが湘南戦前の2連勝もあってどこかで許されてしまったところもあった印象で、まずはそういった細かな部分も追及できるチームになっていかなければいつまでたっても根本的な力はついていかないように思います。



 湘南に0-6で敗れたことで、今までどこか曖昧だった自分たちの立ち位置がよりハッキリとしたのではないでしょうか。
 選手1人1人の力を発揮できていないのではなく、現状では確実に力が足りないんだということをまざまざと見せつけられました。
 確かに監督を変えれば、チームのスタイルやカラー、選手の起用法などは変わるでしょう。
 けれども、湘南レベルの相手に勝つためには、そんな小手先の変化だけではどうしようもない。
 本来チーム作りとはクラブの方向性や目指すべきビジョンの策定から始まって、選手の構成や育成、監督の人選などが決まるはずで、湘南戦ではそのベースとなる部分からの大きな差を痛感しました。
 その差を埋めるのは簡単ではないはずで、長期ビジョンの下じっくりとチームを作っていかなければならないはずです。


 もちろんオシム監督レベルの指導者を招聘できれば、クラブの根本にも良い影響を与えることができるのだろうとは思います。
 しかし、そのオシム監督もジェフ就任前に、ジェフというクラブを細かく調査していたのは有名な話。
 それまで欧州路線を継続しクラブの方向性を育ててきていたこと、そして下部組織強化に力を入れており"ユース黄金世代"が花開こうとしていたことも分析した上で、ジェフからのオファーを承諾したのではないかと思います。
 それがあったからこそ"オシムジェフ"は成功を遂げたわけで、それこそがまさに当時のジェフのベースとなった部分だったはずです。



 一方の現チーム・選手においては、かなり厳しい状況に立たされていると思います。
 月曜日のエントリーを『ここを限界と見るか、ここから変わることができるか』というタイトルにしましたが、湘南と比べても平均年齢の高いジェフに今から大きく変われというのは残酷な話とも言えるのかもしれません。
 開幕前、特にベテラン選手は今年結果を残さなければ来年は厳しいだろうという話をしてきましたが、それは実績の少ない若い選手たちにも言える部分があるはずで。
 選手としては文字通り、生き残りをかけた勝負となるはずです。


 しかし、厳しい状況でも今はともかくもがくしかないでしょう。
 組織が一致団結する、あるいは大きく変わる上で、一番の近道は「危機感を共有する」ことではないでしょうか。
 もちろんクラブが自発的に内部から変われればそれに越したことはなかったのですが、なかなか本質的な変化は起こすことができず、J2生活も早5年となってしまいました。
 今のジェフには外部からの明確な刺激というものも、必要だったのかもしれません。



 0-6というスコアは刺激という意味で、なかなか経験できない程の大きなものです。
 それだけチームや選手へのダメージは大きいはずですし、このまま潰れてしまう可能性もあるかもしれないですが、ここで終わってしまうような選手たちならそれだけのレベルでしかなかったということ。
 その刺激を受けて、関係者1人1人の意識が変われることが出来るかどうかが大事なのではないでしょうか。
 幸いにもまだ4月ですし、時間は十分にあるはず。
 これまでJ1に昇格していったチームはシーズンを通して成長していったところが多いわけで、まだジェフにもチャンスはあるはずです。


 ジェフを応援する者としては、クラブが大きく変われる瞬間に立ち会いたいところ。
 そして、応援する側の意識も、変わっていく必要がある部分もあるのかもしれません。
 ジェフの根本的な問題をクラブ関係者全員が見つめ直し、チームとともにクラブ全体で危機感を共有することが出来るかどうかが、今後の分かれ道なのではないかと思います。


 まずは富山戦。
 0-6の大敗から気持ちを切り替えるのではなく、ここからがスタートだと思って戦わなければいけません。
 あの試合が後に良い意味でのターニングポイントだったと言えるか、それとも逆か。
 大敗した湘南戦のストーリーは、まだ終わっていないはずだと思います。



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