ここを限界と見るか、ここから変わることができるか

 さすがに振り返るのも辛い試合ですね。
 幸か不幸かこんなブログをやっていますので、負け試合でもしっかりチェックしなければいけないわけですが、その中でも特に難しい試合となりました。


 本当に残酷な結果でした。
 もちろんここに至るまでには様々な経緯があったわけで原因は自分たちにあるわけですけど、それにしても今季ようやく形も見えつつあった中でこの大敗は残念なものがあります。
 最も残酷なのは、このレベルの湘南がJ1で残留できないということなのかもしれませんが。
 ただ、湘南の中でも良い試合だったのではないかと思いますし、昨年の湘南より強いのではないかとすら感じた試合内容でした。
 もしかしたら、ジェフがJ2に落ちてから数多く対戦した相手の中でも一番強い相手だったのではないかとも思いましたが、それらを差し引いたとしても大きな差を見せつけられてしまいましたね。
■CBのオーバーラップに対応できず
 ここまで全勝の首位湘南とジェフとの対決。
 序盤からペースを握っていたのはやはり湘南でした。
 攻守においてボールへのアプローチが速く、ジェフを思い通りにさせない。
 ここ数戦プレスが機能していたジェフでしたが、湘南相手だとやはりベースとなる走力で勝てず、プレスもほとんど効きませんでした。


 前半3分。
 湘南がボランチから右サイドの宇佐美へ展開すると、そこへオーバーラップを仕掛けたのはCBの遠藤。
 宇佐美に遅れて井出が守備に行きますが寄せが足りず、そのままクロスを上げられて危ないシーンを作られます。


 そして、10分。
 相手のカウンターから兵働の後ろでボールを持たれると、そのまま左サイドの武富へ展開。
 武富がボールを持つと、今度はCB三竿がオーバーラップ。
 その三竿を使ってクロスを上げられ、ウェリントンが中で合わせてゴール。


 湘南の素早いカウンターで、守備で対峙した天野に対して兵働も谷澤もフォローが間に合わず、数的不利が作られてしまいまいました。
 特に兵働は前節の失点でもやられたボランチの裏のスペースを相手に取られてしまい、更にその後の守備への対応も甘く、非常に残念な対応だったと思います。
 湘南に関しては3分の攻撃同様に、CBの積極的なオーバーラップによってジェフの守備陣を混乱させることになりましたね。
 ジェフ目線で言えば、そこへの対応がうまくいっていないということになるわけですが。
 マークの受け渡しの勘にギャップが作られるだけでなく、そもそも守備に間に合わないことが多かったですね。



 ジェフも13分には中村から、14分にも兵働からクロス。
 そして、15分にも町田、井出、町田、中村とテンポよくつないでクロスを上げ、谷澤がヘディングで惜しいシュートを放ちます。
 前半20分にも町田からふわりとしたクロスが上がりケンペスがシュートを狙うなど、このあたりまでの時間帯では決してノーチャンスではなかったと思います。


 しかし、28分。
 天野のクリアミスから右サイドを突破されて、逆サイドから飛び込んできた宇佐美がゴール。
 宇佐美に誰もついていなかったのも残念ですが、天野がセーフティに外に出していれば、失点にはならなかったのではないでしょうか。
 攻撃でチャンスも作れていただけに、もったいないプレーでした。



 30分にはジェフが左CKからケンペスがヘディングでゴールを狙うも、GKに当たってゴールならず。
 すると、その直後の守備。
 相手のクロスボールに足して兵働、山口智山口慶が強く当たりにいけずかわされ、最後はウェリントンがゴール。
 井出が簡単にクロスを上げられてしまったのも気になりましたが、ゴール前での気の抜けた守備がひどかったですね。


 その直後、ジェフの右サイド裏で井出と遠藤が競争になると井出が振り切られ、クロスを上げたところの跳ね返りをそのまま遠藤が拾ってゴール。
 もう3失点目の前後から気持ちが切れてしまっていた印象で、メンタル面の弱さもうかがえました。
 これで早くも0-4と非常に苦しい試合展開になってしまいました。
■山中、井出などが反撃を計るも大敗
 前半立ち上がりジェフは慎重に試合に入ったところもあったのでしょうが、相手との間合いが掴めていなのも気になりました。
 過去2試合の対戦相手があまり良い出来ではなかったこともあって、トラップにせよパスにせよ甘いところにボールを置いても問題なかったのですが、アプローチの早い湘南相手だとボールを奪われてしまう。
 試合が経過して徐々に慣れていった部分はあったと思うのですが、それでも相手の激しいプレッシャー下における技術の面で課題が多くパスミスも多い状況でした。
 この辺りは、常日頃からの意識の問題も大きいのではないでしょうか。


 ジェフはハーフタイムに町田に変え山中を投入。
 最初は「町田を交代?」と思いましたが、前半の町田は受け方は良かったものの足元でのイージーなミスが多かったので、そこが理由ではないかと思います。
 井出は技術面では通用していたし、谷澤も得点力はあるので残したかったということなんでしょう。
 実際、井出を残したのは正解だったように思います。
 また、井出はサイドでの守備で遠藤とのマッチアップに何度も競り負けていたので、山中を左に移して井出をトップ下に置きたかったのかなとも感じました。


 しかし、試合は後半5分。
 左サイド後方で中村が一度はボールを奪うも、相手を交わそうとしてボールを奪われ、クロスを上げられて逆サイドの菊地が合わせて5点目。 
 これまでにも低い位置で相手を交わそうとして、危ないシーンを作っていた傾向にある中村。
 いつかはやらかすだろうと思っていたのですが、ここで失点に絡んでしまいましたね。
 この試合の2失点目も天野が安全な選択を取っていればやられなかったわけで、ここは簡単にクリアしてほしかったところです。
 まぁ、逆にこの試合で問題を出しきってしまえば良いと、考えられればいいのかもしれませんが…。



 後半9分には中村、井出、山中とつないで、井出が前方で受け直しそのままドリブル。
 シュートも狙えそうでしたが、中央に走りこんできた天野にパスをして、シュートも決まらず。
 後半14分には左サイドのフリーな状態で谷澤がクロス。


 このあたりから、さすがに湘南の方も動きが落ち着き、守備時にスペースができるようになっていきました。
 5点も差が開いた状況ですから、それも当然といるかもしれませんが。
 特に湘南の右ウイングバックと右CBの間のスペースが空くようになり、ジェフはそこを突くようになっていきました。
 前半からケンペスが左サイドに開きがちだったのも、そこを狙おうという意図があったのかもしれません。



 その後も、山中を中心に何度か攻撃の機会を作っていきます。
 後半23分には右サイドから、飛び出してきた山口慶にクロス。
 後半28分には山中、井出が繋いで、最後は山中が相手を抜き去ってクロス。


 しかし、ジェフも攻撃にもう一歩力を与えきれず、湘南の方もゴール前はしっかりと固めてきて、攻撃時には人数をかけてきましたから、ジェフに勢いを傾けるまでにはいたりませんでした。
 そして、後半35分。
 ジェフが後方でボールを回していた状況で、山口智が相手にプレゼントパス。
 そのままカウンターで0-6となってしまいました。
 精神的に厳しい状況だったのは理解できなくもありませんが、ベテランがあれでは…。
 何とも残念な最後でした。
■まずは1人1人の意識を変えることから
 2年前に湘南と戦ったときにもこのブログで話した記憶がありますが、悔しいかな今の湘南はオシム監督時代のジェフのようなサッカーをしていますね。
 運動量とスピードをベースに、攻守に寄せを激しく速く、ボールを奪ったら素早く攻撃に移って、前の選手を追い越す動きでギャップを作っていく。
 前が空いてチャンスと見れば、CBだろうと、逆サイドの選手だろうと、リスクを冒してどんどんオーバーラップしていく。
 一時期の広島や浦和などよりもオシムサッカー感を強く感じるチームで、それがJ1を経験してさらに熟成されているような印象を受けました。



 ジェフの方は戦術だとかメンバーだとか関係なく、ベースの部分で湘南に劣っていた印象でした。
 運動量やスピードだけならまだしも、技術面でも、フィジカル面でも勝てていなかった。


 例えばとして兵働のボランチ起用は、相手チームが弱ければ守備面でも大きな課題にはなりませんが、このレベルの相手だと守備面において大きな穴になってしまいます。
 攻撃面でもゲームを作ることは出来ませんでしたし、相手の守備ブロックは固く、プレッシャーもきつく、効果的な動きが出来ていませんでした。
 かといって、兵働以外のより守備的なボランチを置くと、今度は攻撃面で課題が出てしまう。
 だから、リスクを冒しても"ボランチ兵働"という選択に至った経緯があるわけで、それを戻すような選択をしては過去に戻ってしまうことになる。
 まぁ、状況によっては、一歩後ろに戻る必要性も出てくるとは思うのですけど、少なくとも2連勝後にそれはないでしょう。


 「選手を使い分ければいい」と外からは簡単に言えたとしても、実際には流れというものもあるわけだし、連携などを考えればそうコロコロと変えるわけにもいかないでしょう。
 攻撃を取れば守備に穴が出るし、守備を取れば攻撃に物足りなさを感じる。
 ようするに、総合的に見て能力面で足りている選手がいないと。


 これはボランチに限らず、どこのポジションにも同じようなことが言えるわけで、この差を埋めるのは非常に難しい。
 2列目の選手も動き出しは良くても技術面が足りない町田だとか、技術があってもフィジカルや守備に課題のある井出など、それぞれに大きな課題を感じました。
 後半、山中や井出が多少やり返したとはいえ試合の大勢に変化を与えるレベルではなく、あくまでも大敗の中で可能性を見せられたというレベルであり、実利という意味ではまだまだでしょう。



 なかなか現実を見つめ直すにしても、難しいところがありますね。
 結局のところ、ジェフの現在の目標はJ1昇格。
 それが1年なのか、数年なのか、どういった形なのかという部分はそれぞれの見方があるにしても、そこが最終的に"戻るべきところ"であり、多くのジェフ関係者が抱いている大きな目標であることには間違いないでしょう。
 それだけに1年でJ2に戻ってきてしまった湘南を相手にして、大きな差を見せつけられたショックというのは大きいのではないでしょうか。


 とはいえ、やるべきことは今さら大きく変えられないし、変えようもないと思います。
 あれだけ大きな力の差を見せつけられては、監督交代などで根本的な何かが変わるとも思いませんし。
 ベテランが早い時間帯に前節と同じように自分の後方にスペースを空けて失点したり、相手にプレゼントパスを与えているようでは勝てるわけもないわけで。
 今後は勝ている試合でも油断せず、高い意識をもってレベルを上げていくことが大事だと思います。
 また、ビハインドになるとガクッと落ちてしまうところも、大きな問題点として感じられました。
 特に3失点目、4失点目は集中力が欠如していたように思いますし、大差が付いたのは能力的な部分だけでなく精神的な脆さの問題もあったのではないでしょうか。



 まさに大敗となってしまった湘南戦ですが、それだけ反省点も見つかったということ。
 相手がオシム監督ようなサッカーだったということもあって思い出したのが、03年第3節神戸戦で0-3で敗れた時のオシム監督のコメントでした。
 「唯一よかったのは、全員が最悪なプレーをしたという点」。
 今後選手の入れ替えなどがあるかどうかはわかりませんが、今日ピッチに出た全員に課題は見えたと思いますし、しっかりとそれを解決することが大事ですね。


 まずは1人1人の意識を変えることが、スタートなのかもしれません。
 ここを限界と見るのか、それともここから変わることができるのか。
 変わることは大変だとは思いますけど、1人が少しずつでも変わればチームにとっては大きな変化になるかもしれないわけですし、ここから変化し成長していくことを今は祈りたいと思います。