チャンスメーカーとしての山中の可能性

2年後のオリンピックに向けて。
山中「絶対に出なければいけない大会で、そのためにいろいろなことを逆算している。一番の目標です。そのために、ジェフでの練習や試合の経験を生かしていきたいです。  現在、中盤の左サイドで起用してもらっています。中盤の選手というからには点が欲しいし、そういう仕事を求められているので、ゴールを意識しています。2列目の選手が点を取れればチームが楽になる。チームの勝利に貢献できるように、頑張ります」(ちばぷら

 千葉県内の様々なイベント情報などを取り扱っている『ちばぷらnet』より。
 『ちばぷら』はジェフのスポンサーでもあり、市原市が創業の『シティライフ』が運営しています。
 インタビュー記事は選手がうまいこと話してくれれば、それだけで大きな価値のあるものになりますから、意外なところで面白い話が聞けることもありますね。
 変に内容の薄い短い記事をこまめにアップするよりも、インタビュー記事をこまめにあげてくれた方が、よっぽどためになる場合もあると思います。



 さて、1-2で敗れてしまった長崎戦でしたが、山中が周りの選手と連携した動きが出来るようになってきたことに関しては、チームの将来を考えてもすごく大きな収穫だと思います
 怪我で代表合宿を辞退したニュースは心配ではありますが、短期合宿は大事を取ってお休みする場合もありますし、ともかく軽傷であることを祈りたいですね。


 これまでの試合でも縦へのスピードやパワー、クロスボールやミドルシュートなど中長距離におけるキック力と正確さを見せてくれた山中。
 しかし、その能力を実際に試合で効果的に活かせてたかと言うと、そこまでうまくはいっていなかったと思います。
 連携面の課題もあって単発でのプレーが多く、周囲の選手との関係性もハッキリしておらず、周りの選手による山中の活かし方も、山中本人の活かされ方もまだまだできていなかった。



 けれども、長崎との試合を見ると、かなり攻撃時の連携面が解決されてきた印象でしてた。
 長崎戦での直接FKやCKなどのプレースキックでもチャンスを演出し、クロスから山口智のゴールをアシスト。
 そして、月曜日にも取り上げましたが、後半5分には左サイド寄り前目の位置からゴール前に侵入してフリーになった町田に、斜めからの鋭いグラウンダーのパスを通します。
 残念ながら町田は決定機をはずしてしまいますが、個人的にはアシスト以上にこのシーンが印象的でした。



 左足でのキックやスピード、パワーなどにおいて大きなポテンシャルは感じさせてくれていたわけですが、このプレーによってミドルパスの正確性や視野の広さ、そして、そこにボールを出せる積極性があることも見せてくれた。
 これによって、単純なサイドアタッカーやクロッサー、あるいはミドルシュートばかりを狙う選手…という役回りだけではなく、決定的なパスを出せるチャンスメーカーとしても期待できる可能性を見せてくれました。
 一芸に秀でた選手と言うだけでなく、プレーに幅があるということを証明してくれたことになると思います。
 例えば昨年の米倉などは、中盤的なプレーができずにSBに下がることになりました。
 G大阪でのプレーを見ても、やはり2列目で起用する場合はサイドでのプレーを中心としたウイングでの起用でしか使いづらい傾向にあると思います。


 それはそれとして、サイドのスペシャリストを目指す道もあるでしょう
 しかし、現代サッカーではDFやGKにパス出すを求めFWにも守備が要求されるように、どのポジションの選手にも様々なタスクを要求されることが多い。
 それによって、選手個々の選択肢を増やすことになり、延いてはチーム全体の幅を広げることにも繋がることになります。


 山中は長崎戦でクロス、シュートだけでなくパスをだせることがわかったことによって、今後マッチアップする相手も様々なパターンを警戒しざるを得なくなるはずです。
 またジェフとしてはあの試合でチャンスメーカーとして可能性を見せてくれたことによって、タイプはだいぶ異なりますが昨年の兵働に近いタスクを山中に任せ、他の選手が飛び出すような関係性を作ることができるかもしれない。
 そうなってくれば今後の攻撃陣の役割分担もはっきりしてくるかもしれないし、より連携も深まっていくかもしれないわけですね。



 それにしても、山中は加入当初に期待していた以上に、素晴らしい素材なのかなと感じるようになってきました。
 左足でのキックしかなく連携もほとんどない状況から、長崎戦では攻撃を引っ張る存在の1人として活躍できた。
 あそこまでのプレーができたのも、若さだけでなく類い稀なるセンスがあるからではないでしょうか。


 ちばぎんカップからここまで我慢して使い続けてきたことが、正解だったことが証明されたことになると思います。
 連携面などを含めて考えれば、兵働、谷澤あたりの方が単純な実行力は上だったと思いますし、正直ちばぎんカップでは能力はあるもののまだそれを活かせていない選手…というくらいにしか思えていませんでした。
 そして、その自分の能力を実際に試合で発揮できるかどうかが、若手選手の大きな壁になるはずだとも。
 ですから、ちばぎんカップの段階では他の選手をスタメンで起用して、山中は徐々に公式戦に慣らしていった方が良いのでは…と思っていたのですが、予想以上の吸収力を見せている印象で。


 このあたり鈴木監督は若手選手をよく見ていると感じますし、ポテンシャルのある選手なら多少課題があっても我慢して使い続ける傾向があるように思います。
 しっかりと育てられれば、もしかしたら倉田以上の選手になれるかもしれない…。
 いや、倉田のようにレンタル元のクラブに戻るパターンは、ジェフとしてはあまり望ましくはないのですが…(笑)



 まぁ、今はレンタル云々関係なしに現在いるメンバーがピッチに集中して、すべてを出し切れるように努力をすることが大事だと思いますし、やはりレンタルでなければこのレベルの選手はなかなか獲得できないでしょう。
 山中のポテンシャルを引き出せるようチームとしても良い形を作っていきたいところではないかと思いますし、長崎戦ではその大きな一歩を踏み出せたのかなといった感触も感じました。
 少なくとも山中を中心とした2列目からの攻撃に関しては、良い方向に進みつつあるのではないでしょうか。