ケンペスと森本のポジション争い

森本貴幸「自分がボールを収められるところと収めきれないところがあったので、そこを１００パーセントできるように、チームのビルドアップに貢献できるように精度を高めていきたいです。点が取りたかったのでシュートを打って行きましたけど、決められなかったのは反省していますし、こういう拮抗した試合で決められるように力をつけていきたいです」（J's GOAL）

　昨日の話の続きということにもなるのですが、森本は守備面の継続性やポストプレー時に高い位置でボールを受けることに関しては良かったと思います。
　献身的に激しいチェイシングが出来ていたかと言えばそうではないですし、ポストプレーにおいても空中戦では負けることが多いなど課題もありました。
　しかし、守備時はポジショニングを考えてしっかりと戻り最低限のことは出来ていたと思いますし、ポストプレーも足元でのさばきはやはりうまくシンプルに叩くのでリズムの良いパスワークを形成しやすいという面があったと思います。

　けれども、前を向いたプレーに関しては、まだ物足りない印象で。
　町田は「モリくんは裏に抜けるのがうまい」と評しており、そこが森本の武器ではあるはずです。
　しかし、相手に引いて守られることも多いチーム状況を考えると、なかなか裏抜けでは形を作ることは出来ないところもあって。
　ドリブル突破を図ろうとするもボールを奪われるシーンも少なくなく、奪われないドリブルという意味ではケンペスの方が一枚上手なのかなと。

　また、ケンペスはフィジカルが強いため、相手に囲まれていても競り勝てることが多い。
　そのためスペースがなくても強引にチャンスを作れる場面もあって、そこが引いた相手への対策として有効な手立ての1つだったのだと思います。

　ケンペスはゴール前での瞬間的な迫力はあるものの、それ以外の場面ではフラフラと歩いていることも多く、そのために動きが野暮ったく感じる部分もあるとは思います。
　とはいえ、チームのどこかで相手に勝てる強みは欲しいところですし、場合によってはそれを活かすためにある程度何かを犠牲する必要がある場合もあるのかなとも思わなくもありません。
　これがジャイールほど大きな犠牲を伴うものになると考え直さなければいけなくなるとは思いますが、ケンペスはあそこまで極端ではない印象で。
　もちろん昨年途中までは他にFWがいなかったという問題もあり、別の選択肢がなかったというのも大きいとは思いますが。
　まぁ、今年はケンペスへのマークもより厳しくなるかもしれませんし、今はコンディションもベストではないのかもしれませんから、今年も昨年のように点を奪えるかどうかはまだわからないとも思っているのですが…。

　得点感覚に関しては文字通りフィーリングの部分が大きいのでしょうから、本人が感覚をつかむことが何よりも重要な部分もあると思います。
　森本に関しては昨年末行われた大学生相手の練習試合でも多くの決定的なチャンスを決めきれていなかったですし、なかなかゴールが増えていかないのは動きや能力的な問題だけではなく感覚の問題もあるのかもしれません。
　これがポストプレーに特徴のあるFWなどならそれでもいいかもしれませんが、森本はもともと前への強さに特徴のある選手だったはずで。

　相手が引いてくる問題や戦術的なものもあるとは思うのですが、まずは1つ自分の形でゴールを決めて良い感覚を思い出すことが大事ということになるのでしょうか。
　1度良い形でゴールが決まれば、ボールの出し手も森本を使ったゴールへのイメージがしやすくなるでしょうしね。　
　イメージからするとスルーパスからの抜け出しも得意な選手だとは思うのですけど、早いタイミングでのクロスから飛び出していってゴールを決める方が今の森本には期待できるのかなぁなんて思ったりもします。

　ケンペスに関しては、まずはコンディション調整ですよね。
　岡山戦はけがのため欠場とのことですが、鈴木監督のコメントを読むとそこまで重症ではない印象を受けます。
　もしかしたら昨シーズン前半なら、今回のような軽い怪我なら無理をしてでも出場していたかもしれない。
　そういう意味では可哀想な面もあったと思いますが、今年は森本が開幕時からいるわけですから、ケンペスが無理をする必要性もあまりないわけで。
　その分、しっかりと調子を上げていって、出場した時に良い状況でプレーできるように出来れば理想的なのかなとも思います。

　現時点ではケンペスもゴールを決めていないし、森本も決めていないものの守備とビルドアップでは貢献したわけですから、若干森本の方がリードしているのでしょうか。
　けれども、ケンペスには昨年の大きな実績とともに爆発力もある選手ですから、まだ2人のポジション争いはどうなるかわからない。
　この2人の対決の行方も、これからが非常に楽しみですね。