左サイドに攻撃が偏る状況で天野は

　積極的な攻撃参加に持ち味があると言われていた天野ですが、ちばぎんカップではなかなか右サイドにボールが行かなかったですね。
　まずは左サイドに攻撃が偏ってしまった理由を、考えてみたいと思います。

　1つにはこの前も少し話しましたが、山口智、健太郎といったビルドアップの起点が左サイドにいるということ。
　昨年は左サイドからのゲームメイクが多かったですが、ちばぎんカップでも昨年の流れのまま左サイドにボールが回ることが多かった印象です。
　町田が左サイドに寄る傾向があったのも、昨年の癖という部分が少なくなかったような気がします。

　去年と今年で異なるのは、そこから先。
　昨年は左サイドのパスワークでタメを作って、右サイドに展開という流れも多かったわけですが、ちばぎんカップで起用された中村、山中は展開の意識がほとんどなかった。
　自らドリブルで仕掛けるか、アーリークロスを上げる。

　アピールしたいという気持ちが強かったのか、サイドアタッカーを並べたためなのか、どちらにせよ自分で最後のところまで持っていこうというプレーばかりで、サイドチェンジという形はほとんど作れませんでした。
　まだ周りを信頼できていない問題もあってか、2人ともチームで攻撃を作るという形ができていませんでしたね。
　昨年は仕掛けの意識が足りなかった印象もあるためそういった積極性は買いたいものの、逆にそういった意識ばかりでは強引なサッカーになりかねず攻撃が淡白になってしまいます。
　最終的にはバランスと判断力の問題になってくるのかなと思いますが、なかなか難しいところですね。

　もう1つの原因として考えられるのが、中央でパスワークを作れなかったこと。
　もっと中央で形が作れれば、そこから右への展開も出来たのではないかと思います。
　しかし、先日も話した通り、柏はボランチ2枚の守備バランスが良く、2シャドーも中に絞る傾向があるため、ジェフのCBあるいはボランチの前には柏の2シャドーとダブルボランチの4人がいることになります。
　それによって縦パスを通すスペースがなくなり、楔からの展開というのがほとんど作れなかったのだと思います。

　そこに対しても、もっとサイドチェンジをして左右に揺さぶるか、町田が上下動して受ける形もとれればよかったんですけどね。
　町田は裏への飛び出しを強く意識していたのかもしれませんけれども、個人的には裏ばかりを狙う町田にはあまりいいイメージがなくて。
　確かにこの試合でも前に出ていってうまくボールを引き出した場面はあったのですが、あの状況だと下がる動きもしてもっとボールを触る必要があったのではないかと思います。

　右サイドからの攻撃に関ては、兵働がうまく攻撃に絡めなかったことも問題であり、そこがあの試合での大きな誤算だったのではないでしょうか。
　兵働がもう少しタメを作って右は兵働や天野の連携で、左は山中と中村の仕掛けでチャンスを作る…というバランスが試合前のイメージだったのかなと思います。
　右からの展開が作れれば山中がゴール前に飛び出せるタイプなのかどうかも、チェックできたと思うのですけどね。

　もちろん兵働に関しても、右サイドにボールが来なかったことによる影響は大きかったと思います。
　しかし、運動量が足りず、切り替えのスピードも遅かったことにより、どうしても攻撃で一歩遅れることが多かった。
　加えて兵働のキレのなさは守備面でも問題になってしまい、山口慶と天野が兵働の裏をカバーするシーンが増えていました。

　ちばぎんカップでの天野は、守備面で貢献していた面が大きかったように思います。
　兵働の戻りの遅さだけでなく、大岩がサイドや前方に釣り出されてしまうことが多い中で、うまくその穴を埋めるポジショニングをしようと動いていた印象があります。
　身長のなさが懸念されてはいましたが、体が小さいタイプではないように見えましたし、運動量も豊富で何よりもバランスを取ろうという意識を強く感じましたから、もしかしたら守備面ではカバーリングで貢献してくれることになるかもしれませんね。
　どうも守備バランスやポジショニングに優れた選手が少ないように感じるジェフですから、こういった選手は貴重なのかなと。
　まぁ、去年そこに米倉がいたので、余計にそう感じてしまうのかなとも感じるのかなとも思いますが…（笑）

　攻撃に関しては攻め上がる回数が少なかったものの、兵働や町田と連携を取ってクロスを上げるところまで持ち込めたことがありました。
　シンプルに前に預けて飛び出していけるタイプの選手なのかなと感じましたし、米倉とも中村とも高橋とも違うタイプなのかもしれません。
　それぞれに違う個性を感じるところであり、見ていて新しい発見があり面白いところでもありますね。
　しかし、その分連携の構築はどうしても遅れる面があり、そこが現時点での改善点なのかなとは思います。
　個人的には思ったよりも守備で気の効く動きが出来ていた印象がありましたので、そこが収穫だったように思います。