小林可夢偉、ケータハムからのF1復帰が決定

 ようやく、小林可夢偉ケータハムからF1に復帰することが発表となりました。
 年末から濃厚という話が出ていたわけですから、かなり待たされたことになります。
 といっても、可夢偉はほぼ確定でチームメイトやリザーブドライバーの報道が二転三転する流れでしたから、ほとんど心配はしていませんでしたが。


 ご存知の通り可夢偉は、一昨年までザウバーからF1に参戦。
 ある程度の実績を残し、アグレッシブなドライビングから海外でも人気の高いドライバーという評価を受けていました。
 しかし、スポンサーが見つからなかったことや交渉が遅れがちだったこともあって、昨年はF1のシートを獲得できず、フェラーリAFコルセからWECのLMGTE Proクラスに参戦。
 慣れないGTカーでのレースで、まずまずの走りを見せていました。



 そして、今オフにF1復帰を模索。
 今オフはフェラーリからフェリペ・マッサが退団したり、キミ・ライコネンロータスから移籍したり、マーク・ウェバーがF1から離れたり…と多くの上位シートが空くことになりました。
 これに関してはF1ファンでもわかっていたことですし、可夢偉もそこを狙うと話をしていました。
 しかし、実際には可夢偉が上位シートの候補として名前が上がることはほとんどなく、ようやく下位チームのケータハムとの噂が出てそのまま加入となったことになります。


 ケータハムは現在もライバルであるマルシャ、2012年末に撤退したHRTとともに、2010年F1が新規参戦を募集したタイミングから参戦したチームです。
 その中でもケータハムは資金力のあるチームとして期待されていましたが、結局既存のチームとの差は大きく新規チームが最下位を争う状況は変わらず現在に至ります。
 昨シーズンはマルシャよりもマシンのスピードはあったものの最終順位では敗れ、ドライバーの責任も問う声がありました。
 そこで実力のある可夢偉に期待した…というところではないでしょうか。



 今年からF1はレギュレーションが大きく変わります。
 空力的にもフロントノーズの形状から大きく変わることが予想され酷い見た目になるのではないかという話もありますし、パワーユニットも全く違うものになります。
 今年から1.6リッターV6ターボエンジンになり、エネルギー回生システムも大幅に変更。


 可夢偉はそれによって下位チームでもチャンスが回ってくるのではないかという話をしていましたが、実際には実力あるチームの方が新レギュレーションへの対応が早い場合の方が多いですから、個人的には戦闘力に対して懐疑的です。
 可夢偉はシートを失った一昨年末にファンから支援金として2億円近いお金を集め、スポンサーとあせて800万ユーロの予算を確保していました。
 今季もケータハム加入に当たって、同額の持ち込み金があると報じられています(追記:自身のサイトの動画で支援金しか使用していないことを明らかにしました)。
 そして、ケータハム加入は昨オフにも噂されていましたが、可夢偉が断ったという話もありました。


 それだけに、もしF1にこだわるのであれば、昨年ケータハムに妥協しておいてもよかったのではないか…と思ってしまいます。
 確かにザウバーからは"都落ち"ということになってしまい、可夢偉は支援金を募る際などにも「勝てるチームへの移籍」を何度も言っていましたのでそれには当てはまりませんが、もし昨年ケータハムである程度の結果を残せれば、今季他チームへ移籍する道も見えたのではないかと思うのですが…。
 もちろん結果論とはいえ、1度F1を離れたドライバーに上位チームからオファーが来るということは、よっぽどのことがないと厳しいと思いますし。
 逆に今回のケータハム加入は、もしかしたらファンからの支援金を無駄にしないため…という思いも、どこかにあったのかもしれませんが。



 いろいろ考えるとあまりポジティブなことばかりではありませんし、考え方次第ではそこまでF1にこだわらず他でレースをするという選択肢もあるはずです。
 ケータハムで会争いをしたとしても、ドライバーとしての評価を上げることは難しいかもしれませんし。
 しかし、1つ前向きなのは、ホンダが来年からF1に復帰すること。
 元トヨタ系ドライバーの可夢偉ですからホンダのチームに加入するというのは現実的ではないのかもしれませんし、ホンダも今のところ1年目はマクラーレン1社にだけにエンジン供給する見込みということですから、名門マクラーレンに日本人ドライバーというだけでゴリ押しするのは難しいのかもしれません。
 しかし、ホンダがF1に参戦すれば日本での注目もまた高まってくる可能性があるかもしれないし、スポンサー集めなどでも追い風が吹く可能性がある。
 そこを可夢偉がうまく掬い上げることができるかどうか…ということですね。


 可夢偉も今年で28歳ですから、F1ドライバーとして考えると決して若くない年齢で。
 ここからのステップアップを考えると、時間はあまりない状況です。
 ケータハムではエースとして期待されているのでしょうし、チームを引っ張っていく能力も含めて、1年目から結果が求められることになると思います。