2013シーズンを振り返る 田中佑昌編

 昨年の田中は2012年から1ゴール増やし9ゴールと、2009年以来の二桁ゴールまであと一歩というところまで来ていました。
 出場試合数も34試合から37試合となり、出場時間も1838分から2614分に伸ばしています。



 両サイドでプレーできるプレーヤーで、献身的にアップダウンでき攻守に貢献することができる。
 そして、勇気を持って体を投げ出しゴール間に飛び出していける選手ということで、一世代前のジェフに多く見られたタイプの選手ではないかと思います。
 ただ、田中自身は福岡ユース出身の選手で、今のジェフにおいては数少ないハードワーカーといった感じですけどね。


 ジェフに限ったことではないのかもしれませんが、現在の若い選手たちはトラップも正確で間で受ける動きもすごくうまく、狭いエリアでちょこまかと動ける選手が多いのではないかと思います。
 しかし、ダイナミックに泥臭くゴール前に飛び込めるような選手は少ないのかな?という印象もあり、チームのバランスを考えるとそういった選手の必要性はむしろ高まっていく可能性もあるのかもしれませんね。
 オシム監督時代の山岸や現日本代表の岡崎のような存在で、ジェフでも田中のような選手は貴重な存在だと思います。
 田中が動き回ることによって攻守においてチームが活性化していく印象で、"水を運ぶ選手"と言えるのかもしれません。



 昨年は特にシーズン終盤、町田がトップ下に固定されてから田中の重要性が増した印象で、ゴール数もその頃に増やしています。
 小柄な町田のサイズ面をカバーしただけでなく、得点力の部分も田中が補った印象で。
 やはりサイズが小さくフィジカルもないとどうしても得点力の面では難しくなりがちですし、町田をトップ下で使うためにはSHから飛び出してゴールを狙える選手が重要になってくると思います。
 昨年その役割をこなしたのが田中だったということで、シーズン終盤にチームの中心となった"トップ下町田"を支えた、とても重要な選手だったと言えると思います。


 また、FWケンペスとの連携面も向上していき、特に右サイドからのクロスに対して、左SHの田中がダイアゴナルに飛び出していってニアで潰れ、ファーに開いたケンペスがヘディングでゴールを狙うというパターンも出来ていきました。
 シーズン途中まではなかなかゴール前での連携が見られずケンペスが孤立していた時期もあっただけに、ケンペスと田中のコンビネーションが見られるようになったことは、非常に大きな変化だったと思います。
 出来ることならもっと早い時期からそういった連動した動きを見たかったところではありますが、夏場はチーム全体のコンディションも低下していてそれどころではなかったということなのでしょうか…。



 田中は中盤エリアでのプレーにおいても、相手の間で受ける動きがうまくなっていったと思います。
 特にCBやボランチがボールを持ってルックアップした瞬間にスッと2列目の位置から顔を出して受ける動きが出来るようになり、そこからパスワークが生まれていったパターンもありました。
 こういった動きは田中だけでなくその他の選手も向上していった印象で、そのあたりが昨年チームはシーズンが進むにつれて着実に成長していった印象を受ける要因の1つでした。
 同じ監督が指導し続けても、細かな連係が一向に成長していかない場合もありますからね…。


 しかし、田中は間で受けてもトラップでボールが足元に入りすぎてしまったり、反転して前を向く時にもたついてしまったりと技術面で課題が見られた…。
 クロスなどは良いボールを蹴れるのだけど、細かな技術に関してはどうしてももう1つといったところが多い。
 決定機でのシュートを吹かしてしまうことも多く、それがなければ二桁ゴールも達成できていたと思います。



 2列目には若く有望な選手も多いですが、田中のように思い切って飛び出してゴールを狙える選手はなかなかいません。
 昨年の9ゴールはケンペスに次ぐゴール数であり、ぜひ足元の技術面を向上して、今年は二桁ゴールを達成してほしいと思います。
 ケンペスに波があることもあって、ケンペス以外のスコアラーというのも欲しいところですしね。


 一方でジェフとしては、田中に続くような若い選手が出てきてほしいところではないかと思います。
 技術面ももちろん大事ですけど、個人的には献身的に走り回って球際で頑張れる選手の方がジェフらしい選手といったイメージもあるので、もっとそういった選手がジェフで見たいなぁと思うところがあります。