2013シーズンを振り返る 佐藤健太郎編

 2013年シーズンにおけるリーグ戦全42試合のうち、ジェフで40試合以上に出場した選手は岡本、山口智、米倉、佐藤健太郎のみ。
 健太郎は40試合に出場しましたが、出場停止が2試合ありましたので、それ以外の全戦に出場したことになります。
 中盤の軸となっていた選手であり、ショートパスサッカーを支えた選手の1人ということになるでしょう。


 綺麗なフォームから繰り出される左足からの丁寧なパスで、チームのビルドアップに大きく貢献。
 CBからFWや2列目に出された縦パスの落としを受ける際のポジショニングも良く、左SBや左SHとのトライアングルの作り方もうまい。
 左サイド際からのサイドチェンジにおいても、広角な視野を持っている印象があり、中距離パスの精度も高い。
 守備においても無難にこなせ、プレーに安定感のある選手だと思います。
 そのあたりが同じパサータイプでも、伊藤や兵働との大きな差だったのではないでしょうか。



 昨年目指したパスサッカーに合った選手だったといえるでしょうし、1シーズン通じて同ポジションを任された数少ない選手でした。
 健太郎自身は自分の能力を出し切れたシーズンだったのではないかのではないかと思いますが、それだけに厳しく言えば物足りなさも感じたというか、限界に近いものも感じた年でした。


 確かにビルドアップ面においては、技術だけなくサポートの動きなども良く、スムーズなパスワーク構築に貢献していたと思います。
 しかし、そこからのチャンスメイクまでは作れず、よく言えばシンプルなパスワークの中心選手だったわけですが、悪く言えば無難なパス回しといった感じでパスワークの変化を作りだせない印象もありました。
 シーズン終盤には健太郎が「アバウトでもいいから前に入れれば」と話していましたが、これに関しても個人的には違和感を覚えており、実際そのコメントの前後の試合はアバウトなロングボールが増えてパスをつなげなくなっていました。


 最終的にチームは縦に早いハイテンポなパスサッカーが作れ、そこに至るキッカケの一つにはなったのかもしれません。
 しかし、技術はあるにも関わらず、自身での"チャンスメイク"ではなく"アバウトなボール"を蹴ろうという選択になってしまっていたのが、個人的には非常に残念で。
 チャンスメイクとまでなれば技術だけでなく創造性や個人での打開力なども必要になってくるとは思いますが、性格的に控えめな問題もあって自ら率先してチャンスメイクをするという考えにいたらなかった部分もあったのではないかと感じます。


 個人的にはアバウトに前へボールを蹴っていた時期と、シーズン残り数試合のハイテンポなパスサッカーは明確な違いを感じていて、特にその変化を強く感じたのが健太郎のパスの選択でした。
 前者の頃は浮き球のパスをポンッと裏に蹴ることも多く本当にアバウトなボールが多かったかったわけですが、後者の頃になるとワンタッチで速いグラウンダーの縦パスを2列目やFWに向けて蹴ることが増えていき、それによってパスワークのスピードを上げ攻撃に勢いをつけることが出来た印象でした。
 そういった選択が自発的にできるかどうか、シーズンを通して明確な意図のある鋭く速い縦パスを出し続けられるかが、今年は大事になってくるのではないでしょうか。
 あるいは、逆に健太郎のところでパススピードを遅らせて緩急を作って、チーム全体をコントロールするといった動きなども必要になってくるのかもしれません。
 昨年の『無難なパサー』から『チームの司令塔』に変わることができるかどうかが、今後健太郎に求められる部分なのではないかと思います。



 パスが出せて攻守において計算できる選手ということで、最近のボランチらしい選手なのかなといった印象も受けます。
 日本代表でも長谷部などがそれに近い印象だと思うのですが、ピッチ全体でパスをつなぎたいという狙いから、守備だけでなくパスも出せる中盤の底が求められる傾向があるのではないかと。
 しかし、本当に高いレベルのチームならそういったボランチを置いてチーム全体で攻守に戦えるのかもしれませんが、そうでないチームがやると中途半端になりがちで。
 岡田監督時代の日本代表も結局アンカーに阿部を入れてチームが納まったように、理想は全員でパスを回せることであってもそれが出来ないのなら仕事を分担した方が賢い場合もあるのではないかと感じます。


 健太郎も攻撃ではシンプルにパスは回せるけれどもチャンスメイクはもう一つで、守備でもある程度は貢献できるし前に行ける時は激しく潰せるけれど、アプローチが遅れがちで跳ね返せる高さもなく攻守に課題も多い。
 その結果、チームが劣勢になると消えてしまう試合も少なくなかったと思います。
 来期はチーム全体をコントロール出来るボランチになれるか、劣勢時に頑張って体を張れるか…といった、積極性がより求められるのではないでしょうか。



 ボランチはチームの肝だと思いますし、J1に昇格できるかどうかもこのポジションにかかるところは大きいと思います。
 ここ数年ジェフのボランチは、誰もが一長一短といった印象でした。
 だからこそ、田代の補強があったのだと思いますが、予算的にもスーパーな選手を獲ってこれるような状況ではなく、既存の選手たちにも頑張ってもらわなければならないのではないかと思います。


 健太郎、山口慶、勇人、兵働など近い年代のベテラン選手たちが候補ということになるわけですが、今のままでは誰をとってもどこかが物足りない印象で。
 ここから更なる成長を遂げられた選手が翌年以降も生き残れるのではないかとも思いますし、ベテラン選手であってもお互いに競い合って成長することでチーム力を高めていってほしいと思います。