2013シーズンを振り返る キム・ヒョヌン編

 昨日の大岩編に続いて。
 韓国出身の大卒ルーキーでありながら、プロ入り1年目にして25試合に出場。
 怪我などで戦線を離脱した時期もあったことを考えれば、上出来なシーズンだったのではないでしょうか。


 渡邊の負傷もあって開幕戦から4試合は、慣れない左SBでプレー。
 前方に守備のしないジャイールがいたこと、他に守備が出来てスピードあるDFがいなかったこともあって、急遽キムが起用されたのではないかと思いますが、これは失敗に終わりました。
 試合をこなして徐々に改善されてはいきましたが、守備時のポジションバランスもうまくとれず、攻撃面での仕掛けもあまりなく足りない部分の方が目立っていました。
 ビルドアップ面では大岩より期待できそうな気配もありましたし、高橋の使い方を見てもそこを期待しての起用だったのかもしれませんが、さすがに無理がありましたね。



 その後、守備堅めによる途中出場で少しずつ信頼を勝ち得ていくと、6月下旬からCBのレギュラーとして試合に出場。
 山口智、竹内のベテランコンビはスピードが弱点で、フィジカル面にも課題があったため、キムの起用は非常に大きかったと思います。
 フィジカルコンタクトに強く、高さもあって、雑誌で他選手が認めていたようにスピードもある。


 ここまでフィジカルを前面に押し出したCBは、ジェフでは久々ではないでしょうか。
 ミリガンも身体能力は高かったですけどそれだけの選手ではなかったし、池田もちょっと違う印象だし、結城・水本あたりまで遡ることになるのでしょうか。
 ベテラン選手補強が多かったこともあって、それだけここ数年はテクニカルなタイプのCBが多かったということになると思います。
 テクニカルなCBも良いですけど、そういった選手ばかりではバランスが悪いですからね。


 キムは細かなプレーでの課題も多かったですけど、なかなか潰せなかったロングボールへの対応や、裏へのスピード対応で大きく貢献。
 特に米倉の後方を突かれることが多かったところを、並走して簡単にやらせなくなったという点は戦術的にも大事なポイントでした。
 足元の技術に関してもあれだけグラウンダーで強いボールを蹴れることが出来れば十分でしょうし、実際キムの鋭いパスからチャンスを作れた展開も少なくありませんでした。
 もちろん山口智や竹内などと比べれば、トラップでの柔らかさや視野の広さはまだまだですが、22才の新人にそこまで求めるのは酷というもの。
 そういったところを我慢して見守ってあげられるかどうかが、選手育成にとっては大事なのだと思います。



 試合を通じて徐々に安定感も増していった印象でしたが、シーズン終盤には再び荒さが目立つようになっていったように感じました。
 特に目についたのは、相手を体で止めようとしてしまう場面。
 シーズン序盤にもありましたが、フィジカルで相手に勝ててしまうからこそ、強引に潰しに行ってしまうプレーが出てしまうのかなと。
 また、並走してスピードでは負けないものの、強く寄せられずに逆足でボールを出されることも増えてしまい、課題も見えつつあったように思います。
 このあたりはシーズンを通しての疲労もあったのかなと思ったのですが、どうも体調面でも問題があったようでそれがプレーにも影響を与えていたのかもしれません。
 急遽試合に出られないこともありましたが、それも体調の問題があったようですね。


 また、シーズンを通して他選手との連携面での課題も多く、外国人DFの難しさも感じる部分でした。
 そこを山口智がうまくサポート…といいたいところですけど、実際には山口智が潰しきれずに後方のキムが対応に追われることも少なくなかったですから、そこはお互い様なところもあったのかなと。
 田代がボランチに入ってヘディングで跳ね返せるようになれば、山口智が前に出ていって競り勝てずに裏を取られる…といった失点パターンも減るかもしれませんし、今年はそこに期待したいところだと思います。
 なんにせよ、連携面の課題克服は大事になってきますね。
 そういえばオシム監督もコーチングに関しては非常に厳しく細かく指摘していましたが、特に後方の選手はコミュニケーションが大事だと思います。



 来シーズンは体調も治して、ぜひ1シーズン戦い抜いてほしいところだと思います。
 キムのような選手が安定したプレーをフルシーズン出来るようになれば、チームとしてもワンランク上が目指せるのではないでしょうか。
 韓国人選手なので、将来的には徴兵があるのがちょっと気になりますけどね。


 個人的には0-3で敗れた岡山で多くの選手が諦めかけていた状況で、3失点目のカウンター時に1人必死で戻ってきたキムの姿がとても印象的でした。
 1失点目がキムのミス絡みだったという面もあったのかもしれませんけど、ああいった姿勢を大事にしていかなければこのチームのメンタルはなかなか変われないんじゃないかなぁと思います。
 ときにプレーが激しすぎる面もありますけど、今のジェフにおいてはその気持ちの面を買いたいところではないでしょうか。