大久保、米倉の移籍と高木、中村の加入

 思ったより長くなってしまったことを先にお詫びしたいと思います…。
 ここまで長く書くつもりはなかったんだけどなぁ(笑)


大久保択生選手移籍のお知らせ(ジェフ公式サイト)
 今シーズンは第2GKとして、リーグ戦の全試合にベンチ入り、天皇杯讃岐戦にも出場していました。
 24歳とGKとしてはまだ若く、岡本の次を期待される選手でもあったと思います。
 また、性格も明るく我慢が続く控えGKという立ち位置の中で、チームを盛り上げてくれたのではないでしょうか。
 自身のtwitterジェフに挨拶しただけでなく、仲の良かった町田に千葉を頼んだ!と力強く返しているところからも人柄の良さが伺えます。


 それだけに残念な移籍ではありますが、一方で大久保は2009年に横浜FCで正GKを務めるなど実績のある選手。
 ユース年代の代表でも活躍したGKでもあり、チャンスがあれば出場機会を求めたいという気持ちも十分に理解できるところではないでしょうか。
 ちょっと残念なのは、移籍先が今年昇格のライバルだった長崎だったことかな…と(笑)
 金山が札幌に行って戦力が落ちるのかなと思っていたのですけど、大久保なら十分穴を埋めるポテンシャルはあるんじゃないでしょうか。
 来年からはライバルですけれども、頑張ってください。


高木駿選手加入のお知らせ(ジェフ公式サイト)
 櫛野が引退、大久保が移籍というところで、川崎からレンタルでの補強ということになりました。
 川崎での出場機会はないということですが、U-16日本代表やユニバーシアード代表にも選出されたGKということで、大久保と同じ24歳ではありますが将来を期待されているGKということになるのではないでしょうか。
 ジェフは名古屋に加入した駒大GK野村獲得に動いていたそうですが実現しませんでしたし、岡本、碓井と来期は3人体制の可能性もあるんでしょうか。


 すでに大きな話題になっていますが、今オフはGKの玉突き移籍が凄いことになっています。
 櫛野が名古屋に移籍した際も、名古屋の川島が川崎に、川崎の吉原が東京Vに…と玉突き移籍がありましたが、今年はその時とは比べ物にならない状態になっていますね。
 大久保、高木関連でも、ジェフの大久保が長崎に、長崎の金山が札幌に、札幌の曵地が愛媛に、愛媛の秋元が湘南に、湘南の安藤が川崎に、そして川崎の高木がジェフに…と"輪"が出来たわけですけど、その他でも大きな玉突きが起こっています。
 まぁ、チームとしてはGKの穴は確実に埋めたいですし、穴が空けば大久保のように出場機会を求める選手が出てくるでしょうから、玉突きが起こりやすい面はあると思うのですけど、それにしてもすごいですね。
 ライセンス制度導入でGKなどからコストを削減したいというチームもあるのかもしれませんが、それにしても驚きです。
 レンタルですけど、まずは1年間よろしくお願いします。


中村太亮選手の加入について(ジェフ公式サイト)
 2013年は山形でレギュラー。
 そこまで熱心に見たことのある選手ではないですが、左SBの位置から積極的にドリブルを仕掛けられ、精度の高いクロスを上げられる選手で、FKも蹴ることができる。
 守備に関しては課題もあるという話も伺いましたが、攻撃においては山形でも重要な選手だったはずだと思います。
 年齢も24歳でここからが働き盛りですね。


 同時に米倉が移籍したことを考えれば、昨年米倉が右でやっていたことを左の中村に期待することになるのではないでしょうか。
 今季左SBでプレーした高橋は本来右サイドの選手ですし、高橋が残ってくれれば…というところがすごく重要になってきます。
 右SBに関しては左SBに比べて大岩、竹内、佐藤祥とできる選手がいるとはいえ、両SBは今季サッカーの肝だったと思うだけに、ぜひとも高橋には残ってもらわないといけませんね。
 そして、米倉の移籍もあって、中村への期待も大きく高まりますね。
 今から米倉以上の活躍を期待したいと思いますし、それが出来たとしても私は驚きません。


米倉恒貴選手移籍のお知らせ(ジェフ公式サイト)
 ある程度覚悟はしていましたけど、いざ決まってしまうとやっぱり寂しいですね…。
 どこから話したものか、といった感じですが。


 米倉は2007年ジェフに入団。
 当時のジェフと言えば、オシム監督が日本代表に奪われ、雰囲気も最悪だった頃でした。
 オシム監督時代から毎年のように選手が流出し、06-07年オフにも阿部、坂本、ハースなど主力選手が退団。
 ジェフの魅力を増すためにはどうしたらいいのか、選手流出を防ぐためには何をすればいいのか…そんなことが議論になっていました。
 まさかその数年後に元ジェフ選手が大量に帰ってきて、それはそれで困る状況になるとは思ってもみませんでしたが(笑)


 そんな状況で地元八千代出身で、家族とともにジェフサポであるという米倉が加入します。
 しかも、オシム監督が希望したサイズがあって、足元もあって、走れるポテンシャルの高い新人選手。
 おまけに八千代高校では司令塔のポジションで、入団1,2年目は主にボランチとして起用されていたのですが、ボランチは阿部・勇人のコンビが強力で長らく次が出てこない状況でした。
 様々な観点で米倉の将来には期待が高まっていました。



 しかし、入団から数年はなかなかそのポテンシャルを生かしきれない印象もありました。
 アマル監督を解任し勇人、羽入、山岸、水野、水本といった主軸選手が流出した翌年の2008年も、リーグ戦で8試合の出場のみ。
 それ以降も毎年のように怪我があり、本人も認めているようにメンタル的な課題もあって好不調の波がありました。


 なかなか目立った活躍はありませんでしたが、個人的に転機に見えたのはジェフがJ2に降格した2010年の6月6日愛媛戦。
 それまで江尻監督はパス&プレッシングサッカーを目指していた印象はあったもののノウハウが足りず、フラフラと方向性が定まらない状況でした。
 このままズルズルと崩れてしまうのかとも感じていた頃だったのですが、愛媛戦で巻と米倉を2トップ気味に使い、前からガツガツと戦い続けることでプレスを成立させ、米倉はその試合で2ゴール。
 その翌戦の甲府戦でもこの2トップで可能性を見せますが、その後、巻は退団、米倉も怪我があって出場機会を失います。
 それでも米倉が戦えること、結果を残せる選手であることは十分見せてくれたのではないかと思います。


 2011年にはオーロイに放り込むアバウトなサッカーにおいてトップ下で起用され、左ウイングの深井とともにこぼれ球を拾う役割を担い、出場試合数も一気に35試合に増加。
 ドワイト監督が解任されてから菅澤代行監督時代には1トップでもプレーしていましたが、1トップでも期待以上に推進力を活かしてプレーできていました。
 2012年の開幕前もトップ下で期待されていたのですがちばぎんカップで負傷し、怪我明け以降も試合に出たりでなかったりといった状況でレギュラー獲得とまではいきませんでした。
 しかし、リーグ戦も残り4試合となったところで、右ウイングとしてスタメンで活躍。
 その年のプレーオフでのゴールも記憶に新しいところです。



 そして、今年SBとしてブレイク。
 SB起用は賛否両論あったかと思いますが、個人的には正解だったと思います。
 振り返って見ると2010年の愛媛・甲府戦でも、2011年のトップ下やFWでも、ガツガツとした役割を任されて活躍していた印象で。
 今季初めて右SBで起用された時も右SB高橋が試合直前に負傷したというのもありましたが、練習の段階でそれまで右SHだった米倉は主力組から外されていたという経緯があります。
 実際右SHとしての米倉は今シーズン終盤にもテストされましたが、ボールを受ける時の細かなポジション修正やシンプルなパス回しができず動き直しなども苦手で、パスワークが米倉のところで止まってしまう印象でした。
 シーズン序盤にも前に飛び出し過ぎて前線の渋滞を引き起こしてしまうなど、スペースがないところでのプレーに多くの課題が見られました。
 今思えば入団時のボランチ起用からアタッカーにコンバートしたのも、中盤の細かい仕事が上手くいかなかったではなかったからなのかなぁとも思わなくもありません。


 昨年末は右SHで活躍しましたが、それも偏にSHというよりはウイングとしてアップダウンだけを任されていたからではないでしょうか。
 しかし、昨今そのポジションでアップダウンだけというのは難しく、実際にプレーオフ決勝大分戦ではマンマークを付けられ、それだけで打開策がなくなる課題を露呈してしまった印象でした。



 今季は右SBとしてブレイク。
 SB起用されたことにより前にスペースができやすくなり、思い切ったスプリントで飛び出していくプレーが出来るようになりました。
 そして、そこからスピードがあり、精度があり、重さのあるクロスを出せる。
 精度だけなら他の日本人選手も高いものを持っているかもしれませんが、あれだけ速く重さのあるクロッサーというのはなかなか日本では見ないのではないでしょうか。
 ミラー監督もクロスに関しては評価していましたが、それがようやく活かせる形を見つけたようにも思います。


 一方で守備に関しては課題もあり、フィジカルはあるもののスペースの埋め方や戻りの面での遅れも目立ち、ボールの奪い方も体で止めてしまうことが多い。
 これに関してはアタッカーで起用された時にも感じていたところですが、SBで起用されたことによって余計に目立つようになってしまった印象です。
 またシーズン途中から相手に警戒され、前のスペースが消されるようになって、正直使いにくさを感じたことも事実です。


 しかし、終盤に入ってから調子も戻ってきて、相手が対面した状況でもアーリークロスを上げるなど少しずつ工夫が出来るようになっていきました。
 守備時もCBとラインを合わせる動きが出来るようになっていきましたし、徐々にジェフでも成長がうかがえたと思います。
 もしジェフがJ1に上がったら守備を余計に攻められるだろうし、攻撃面でも幅が狭いし不安だなぁ…と思っていたのですが、天皇杯FC東京戦ではどんどん相手の裏を突き米倉の良さを出していました。
 FC東京のスタイルもあってのことだとは思いますが、上でもやれる可能性は見せてくれたと思います。
 一方でプレーオフ準決勝では決定的なチャンス決めきれず、ジェフでやり残したこと、成長できる部分はまだあるんじゃないの?まだ恩返し済んでないんじゃないの?とも思ったのですが…(笑)



 米倉のクロス、飛び出しなどはもちろん大きな武器であることに変わりはないですけど、その分ビルドアップや守備など課題も明白な選手でそれが周りの選手の大きな負担になっていたこともまた事実です。
 そして、強化部がしっかりと中村を補強してくれましたし、左右こそ違うものの戦力面では最低限の穴埋めが出来たんじゃないかなと思います。
 これで高橋が残れば左SBが高橋だけの状況から中村、高橋と出来る選手が増えることになるし、右には他に大岩などもいるわけですから、今年よりバランスも良くなるかもしれませんしね。


 しかし、一方で米倉の入団当初の思いなどを考えると、やはり悲しいですね。
 高卒で継続してジェフに所属し主力選手まで育ってくれた選手も、今やユース出身の岡本を除くと米倉だけですし、非常に愛着の強い選手の1人でした。
 そういう意味で、戦力面よりも心情的に残念な移籍かもしれません。


 とはいえ、本人としても更なるステップアップを目指したいという思いは当然わかります。
 J1とJ2では露出も明確に違うし、代表などを目標にするとしても大きな差がるでしょう。
 結婚もありお金の面での違いなども重要なことだと思うし、年齢などを考えても1年が大事になってくる頃ですしね。


 まぁ、行き先がG大阪ということで、あちらではDF登録なのですが、前にも言った通り上手くフィットするのか心配ではあります。
 いろいろ苦労することもあるとは思いますが、潜在能力は非常に高い選手ですし、うまく乗り越えられるといいですね。
 まだ複雑な心境の方が強いですが、ジェフでの経験を無駄にせず、これから先の道を歩んでほしいと思います。