2013シーズンを振り返る 鈴木淳監督編

 プレーオフも終わり様々なニュースも出ていますが、少しずつ今期の反省会を始めてきたいと思います。
 まずは鈴木監督についてしっかりと振り返っていくところから。
 ちょっと長いですが、ご了承ください。
■2強の戦力、準備期間の短さを考えれば成績は及第点?
 今季もJ1昇格プレーオフに回ってしまったジェフですが、一発勝負ではいくら強いチームでも100%確実な勝利というのは望めません。
 そう考えるとリーグ戦で2位以上に入って自動昇格を果たしたかったところですが、今季の自動昇格はG大阪と神戸。
 実際問題として、2チームの壁は非常に高いものだったと思います。


 よくジェフに関して予算のあるチームという話がされていますが、昨年度決算では総予算でG大阪は10億円以上、神戸も1億円以上ジェフを上回っています。
 1億円なら大きな差額とは言えないかもしれませんが、ジェフは3年間もJ2に留まっており、その分選手獲得では不利と言えるでしょう。
 FC東京サポも「1年目で失敗していたらウチもわからなかった」という話をしていましたし、実際に神戸は外国人選手3枠も見事に当たり戦力レベルはジェフより高いものだったと思います。
 昨年は甲府、湘南とジェフより10億円以上も予算下回るクラブが1位、2位に入ったので「予算で有利なジェフが自動昇格できなかった」と言えたかと思いますが、今年はそうではなかった。
 言い方を変えれば、自動昇格を目指すなら昨年だった…とも思うわけですが。



 ただ、最終順位には不満もあります。
 京都には予算でも上回っていますが、昨年も順位は京都が上でしたし大木監督・祖母井GM体制も3年目ということを考えると、ジェフにとって簡単な相手ではなかったのではないでしょうか。
 しかし、徳島には上回っておきたかったところではないかとは思います。
 まぁ、徳島も小林監督2年目で、監督継続による優位もあったのではないかとは思いますが。


 鈴木監督は就任1年目ですが、昨年ジェフがプレーオフ決勝まで行った上に、監督交渉が二転三転して準備期間はかなり遅れていました。
 比較としてわかりやすいのが、木山監督就任時。
 その前年ドワイト監督を早めに解任したことによって、準備期間が非常に長かった。
 それによって村井、茶野、青木孝太、太田、福元、ミリガンなどを戦力外とし兵働、山口智、藤田、健太郎、荒田、武田などを木山監督が好む選手たちを大量に補強することができた。
 しかし、今期は契約年数などの問題もあったのでしょうが、選手の入れ替えも少なく補強はキム、ナム、ケンペスジャイールといった外国人選手とGK碓井のみ(しかも補強した外国人選手は日本・韓国ルート)。
 主軸選手はベテランが多くさらにプラス1歳年齢が増すことを考えると、それによるマイナス面もあったと思います。


 そのあたりも差し引いて考えれば、昨年と同じ5位という順位は決して酷いものではなかったようにも思います。
 逆に今オフ継続となれば来季への準備は比較的しやすくなるわけで、そこが鈴木監督継続の大きなメリットということにもなります。
■スタイルの継続と柔軟な選手起用による成長
 個人的に鈴木監督続投を支持する一番の理由が、スタイルの継続と修正です。
 鈴木監督は年間を通して、4-5-1で間を取るショートパスサッカーとサイドチェンジを絡めた攻撃をやり通しました。
 江尻監督はやりたいサッカーが明確には作れず、木山監督もパスサッカー、カウンターサッカー、パスサッカーとやり方を変えていきました。
 ドワイト監督はスタイルをキープしていましたが修正能力がなく、シーズン中頃には選手主体でチームを作っていた印象で積み重ねが作れませんでした。


 ある程度のスタイル変更は理解できますが、コロコロと大きく変更しすぎるのは問題もあって。
 例えば昨年のように4-5-1でパスサッカーをしていた時に大塚を補強したものの、カウンターサッカーになったため立場を失ったり、逆にロボをカウンターサッカー時に獲得したもののパスサッカーに戻ったために起用しづらくなったケースもあります。
 これでは補強も積み重ねも期待できず、監督への継続の意味も薄れてしまいます。
 固定化しすぎるとドワイト監督の年のようなマンネリ化、対戦相手による対策強化なども起こりかねませんが、今期の鈴木監督は修正も行っていったと思います。


 具体的な戦術面は後日改めて話したいと思いますが、柔軟な選手起用も修正法の1つとして良い作用を与えていたと思います。
 就任当初は「鈴木監督は選手を固定化する」という評価が少なくなかったですが、実際には多くの入れ替えを行っていきました。 
 目立つところでは、当初のプランではなかった米倉のSB起用もはまればそのまま使っていきましたし、大塚、町田なども一度よいプレーをすればレギュラーとして起用していった。
 組織的な動きを好むという意見も聞きましたが、ケンペスジャイールなど個人技のある選手も使っていきました。
 これが良い意味での驚きで、木山監督が外国人選手を活かせなかった翌年だっただけにより前向きに映った印象もありました。



 この積極起用が若手の成長にも絡んでいったと思います。
 若手の育成には江尻コーチの指導というのが大きく影響していたと噂されている今季ですが、それをトップチームですくい上げたのは鈴木監督で。
 特に大事なのは、シーズン終盤に向けて若手の起用が増えていったことだと思います。
 ナムは残念ながら負傷してしまいましたが大塚、町田、高橋、キムといった若手選手は、シーズン後半から伸びていった印象があります。
 逆に昨年は大岩、武田などがシーズン途中までは主力として活躍していましたが、伸び悩みもあって高橋、渡邊にポジションを奪われてしまい、今後への成長に不安も感じていたところでした。


 もちろん井出、佐藤祥あたりも見たかったですし、町田ももっと早く起用しておけば…という思いもあります。
 しかし、より若い選手を積極的に使うべきだという意見も聞きますが、そもそも若手選手が少なく他の若手と言うと鈴木隆雅と栗山くらい。
 それぞれ若い選手とポジションが被っている場合もあり、これ以上の若手起用は大きくは望めなかったと思います。



 パスワークに関しても徐々に連動性が生まれていったし、特にシーズン終盤はスピード感も増しシュート数も増えていって、一時期の停滞感も薄れていった印象です。
 夏場を超えて選手たちが動けてきたという面も大きかったでしょうが、若手の台頭もあってシーズンを通して右肩上がりになっていたことが、監督継続やクラブの将来を考ると大事なところではないかと思います。
 もっともその成長度合いがもっと早ければ…と思うところはありましたし、特に8月9月に大きく勝点を逃した頃は苦しいところがありましたが。
■課題はスタミナ、守備、決定力
 今季1年間を振り返ると、その夏場での低迷というのは非常に痛かったと思います。
 様々な原因はあるのかもしれませんが、ベテランが多くスタミナが持たないことがやはり大きな要因ではないかと思います。
 しかし、それに関しては選手構成の問題が大きく、監督がどうこうできる範囲ではなかった印象もあります。
 例えばケンペスなどは代役がいなかったですし、山口智も課題は少なくなかったもののいざ変えるとなると他に選手がいたわけでもなかったはずで。


 より多くを望むのではあれば、プレスが効かないときにも上手く守備で対応できるように組織的なブロックを構築していくとか、主軸選手に限らず夏場に選手を使い分けていくといったところでしょうか。
 しかし、毎年同じ時期に選手たちが走れなくなり成績が伸び悩むという傾向があることを考えると、簡単に解決できる問題ではないことがわかります。
 うまく若手から中堅も交えた選手構成にしていければいいと思うのですが、1年でそれを変えられるかというのは難しいでしょうし、少しずつ修正していくしかないのではないかと思います。
 偏った選手構成に関しては、今年からTDの変わった強化部による修正も期待したいところではないでしょうか。


 また守備に関して振り返ると、山口慶が起用されるまで米倉の裏を埋められなかったという問題もあり、もっと早く対応できたのではないかという疑問もあります。
 加えてケンペスジャイールといった守備をしない選手たちに対して、もっと早く手を打っても良かったのではないか…とも思わなくもありません。
 もっともケンペスに関しては代役もいなかったわけで、今年はプレスをかけられるFWがいなかったことも守備において大きな足かせになったとも思います。
 藤田、荒田といった走れるFWが抜けたことは、攻撃面だけでなく守備面においても大きなマイナスだったでしょう。
 しかし、前からプレスがかけられないことや昨年以上にラインを押し上げようという意識が高かったこともあったかとは思いますが、CBの裏を簡単に取られることが多かったですしボランチの裏を取られた印象も少なくもありません。
 守備でのポジショニングや距離間においての課題もあった印象で、総じて攻撃に関してはチームとして成長していった印象はありますが、守備に関しては課題も多く個人的にはそこが不満でした。
 ここは来季に向け鈴木監督の課題の1つと言えるのではないでしょうか。



 その他の課題を考えると、ケンペスが点を取れないと勝てないという部分があります。
 ただ、これは以前にも話しましたが、ケンペスの個人能力での突破に頼っているわけではなく、得点力がある選手がケンペスしかいないかったという問題も大きかったように思います。
 ですから、それを解決するためには、その他の選手の決定力を高めていくことが一番の近道ではないかと。
 戦術的に考えるとするのであればパスワークに力を入れ過ぎた結果、そこまでの負担が大きくゴール前へ力を出し切れないという部分はあったのかもしれません。
 あるいはケンペスが難しいシュートを決めるという形ではなく、より確実により正確にチャンスを作れればよかったのかもしれませんが、それにしてもシーズン終盤はケンペスを含め決定機で外し過ぎていた印象で。
 来季シーズン終盤のサッカーが続けられるのであれば、あとは選手たち1人1人の決定力…町田の言うような「試合を決定づけられる選手」が出てくるかどうかが大事なのではないかと思います。


 加えてそれに関連する部分もあると思うのがメンタル的な問題ですが、これも選手個々の問題というのが少なくない印象もあり、そのあたりをどこまで監督に要求すべきかというのは毎年のように悩む部分があります。
 特に試合終盤に諦めがちだったように感じる面は、見ていても非常に残念でしたが、スタジアム全体にそういった傾向もあった印象で、選手だけでなく監督にも問題があるとすれば、観客側にも責任があったようにも思います。
 これはサポーターの来季への課題と言えるのかもしれません。



 守備や夏場の戦い方には課題もあったかとは思いますが、完璧な指導者などいるわけはなく課題を探せば何かは見つかるわけですし、総合的に見れば決して悪くない監督なのではないかと私は思います。
 確かにパスサッカーと言うこともあってうまくいかないとスッキリしない印象もあったかもしれません。
 しかし、どういったスタイルが良いのかという議論は結局のところ好みのレベルであり、絶対的に答えがあるわけではないはずで。
 それでも厳しい声も聞かれるのは、イメージの部分があるのかなとも思います。
 木山監督が爽やかで若い方でサポに人気があっただけに、余計にその傾向が見られたのかなと。
 以前にも話しましたが、イビチャ監督の後のアマル監督へはすごく厳しい目で見られていましたが、それに近いものすら感じます。
 まぁ、神戸TDも退団してどこかに当たりどころというか、結果が出ないことへの責任の押し付け先が欲しいのかなという印象もありますが、サポも我慢しなければいけない部分があるのではないでしょうか。


 パスサッカーという1つのスタイルを目指し、それを構築できるだけの手腕はあったと思いますし、やろうとしていることは明確だったでしょう。
 それはここ数年就任したジェフの監督には見られなかったことで、明確なスタイルがあるからこそ続投となれば、そこからの改善もしやすいはずです。
 また、現実問題として監督を変えたとしても次がいるのかという問題もあります。
 昨年も同じ理由で"消極的続投支持派"という話をしましたが、解任後多くの監督に断られた後に実績のある鈴木監督が拾ってくれた。
 これは非常にありがたいことだったと思います。


 町田がトップ下でワンタッチを交えながら駆け回って相手を翻弄するサッカーを来期も見たいですし、もし監督が交代するとなればそれも失う可能性も十分ありえる。
 昇格失敗は残念ではありましたが、継続性が伺える現在においては決してこれで終わりではないはずです。
 今季はサポも含めてネガティブな印象が強すぎた気もしますし、世論というのはチームに影響するものだとも思いますから、そこも改善すべき点ではないかなと。
 もちろん反省はしっかりとしながらも、前向きに将来を見据えてきたいところではないかと私は思います。