徳島戦の選手交代と谷澤のスタメン起用

 いろいろ気になるニュースはありますけど、今のところそこまでの大きなサプライズはないですので、徳島戦を振り返ってから今季のまとめという流れでいきたいと思います。
 そんなこと言っていると、一歩出遅れたりもするんですけどね…(笑)


 今回は徳島戦での選手交代に関して。
 ただ、個人的には以前から言っていますけど、選手交代だけで監督の力量を計ろうという考えはあまり好きではありません。
 先を読むセンスや勝負師的な勘は見て取れるかもしれませんが、オシム監督も試合前までに監督の仕事はほとんど終わっているんだという話をしていたように、そこまでの準備が非常に大事だと思いますしね。

鈴木淳監督「最初に大塚を入れてもう少しボールを動かすことを狙った。森本のところは、うちの場合は2トップにするとボールが動くなることが多いので、そのカードは最後に取っておいた」(J's GOAL

 スポニチが采配のことを書いていたので、「そうか、田中の起用に関してだな…」と思ったら森本の話でした。
 確かに森本は良くなってきていたとは思うのですけど、監督の言う通り2トップにすると軸となるパスワークが失われることも少ないですし、前節の鳥取戦などは徹底したジェフ対策をしてきたから、いつもとは違うサイドをゴリゴリと行く展開からゴールが生まれたわけで。
 記事にしやすい森本を中心に書いたという思惑が、薄らと見て取れる気もします。



 それより田中を使わず、大塚を途中投入したことが試合中は驚きでした。
 確かにこの試合では裏への飛び出しよりも、パスワークが効いていたところもあった。
 そして、健太郎に変えて大塚を投入した後半25分頃には中盤の選手の運動量が落ちてきて、「下がって受ける動き」、「間で受ける動き」、「前に飛び出していく動き」が減ってきているな…と感じていました。


 そう考えると監督の言うように、大塚を投入して中盤でボールをもっと動かそうという狙いはわからなくもなかったかなと。
 昨日のエントリーでもチャンスとなったシーンを1つ1つ上げていきましたが、中盤からの素早いパスワークから決定機が作れていましたしね。
 確かに大塚は決定的なプレーはできませんでしたけど、地味ながらも中盤で谷澤などと近い距離を保つことでパスワークをサポートしており、そういった動きは田中では期待できない部分です。
 ただ、一方でゴール前への飛び出しやケンペスへのフォローが減っていたところもありますから、そこで田中が見たかったという気持ちもなくはありません。



 しかし、逆算していくと、最後のパワープレー要員として森本は残しておきたい。
 そうすると通常4-4-2になることが多いわけですが、中盤の攻撃的MF2人のどちらかには最低1人パサーが必要である。
 田中を起用するとなれば当然その攻撃的MFのもう1枠になるわけですけど、この日はそこに深井を使ったということではないでしょうか。


 ようするに「大塚か田中か」ではなく、論点は「深井か田中か」ということになるのかなと。
 田中のゴール前への飛び出すプレーも好きではあるのですけど、この試合ではDFラインの前でボールを受けることが出来て、そこからチャンスを作れていた。
 それなら深井が相手の前で受けて、そこからドリブルを仕掛ける形の方がうまくいく…という考えだったのかもしれません。


 最終的には高橋に変えて森本を投入し、山口慶をSBに移したスクランブルな4-1-3-2となったので、深井、森本、田中の同時起用も不可能ではなかったかもしれません。
 しかし、相手が1枚FWを削って後方の守備を厚くしてきたからこそ出来たという部分も大きいでしょうし、深井、森本、田中といったアタッカーを並べてうまくいくのか…という疑問もなくはありません。
 まぁ、個人的にはそれでも深井より田中が見たかったですけど、深井もここ数試合途中出場で良い動きを見せていましたし、途中出場なら深井の方が良いという判断もあったのかもしれません。
 交代時期に関しては遅いとも言えるかもしれませんけど、結局そのあたりは結果論になってしまいますからね。



 さらに前まで振り返ると、谷澤ではなく田中がスタメン起用されれば、ここ数試合の定番策である途中出場からの谷澤、深井、森本を投入という展開になったのかなと思いますし、大塚の起用もなかったのかもしれません。
 しかし、その谷澤のスタメン起用が大当たりだった。
 シーズン途中からスタメンを外され、途中出場でもそこまでのプレーは見せられていなかった谷澤でしたから、正直スタメンは心配ではあったのですけどこれが見事にはまった印象でした。


 前半序盤のパスミスこそ痛かったですけど(それをフォローした山口智がイエロー)、それ以降は決定的なシーンを演出。
 前半失点直前にあった左サイドからの町田のシュートも、谷澤が高橋とのパス交換から左サイドを抜け出しセンタリングを上げたところから。
 後半10分のパスワークからの崩しも谷澤が下がって受けたところから始まって、そこから前へ走り直してケンペスへのスルーパスを出しています。
 そして、米倉のGKを抜いたビックチャンスに浮き球のパスを通したのも谷澤でした。


 しっかりと谷澤のコンディションや精神面等々を、監督が把握できていたからこそこの大一番でのスタメン起用での成功。
 それに加えて、徳島が密集プレスを仕掛けてくるという分析の下、それを交わせるだけのパスワークがジェフにはあるという自信もあって、谷澤を起用し中盤を厚くしようということだったのでしょう。
 相手チームへのスカウティングが成功した成果とも言えると思います。



 もちろん勝ちきれなかったのですから、100点満点というわけにはいきません。
 けれども、選手交代ということで監督を評価するのであればその前にスタメンの選手起用の話が来て然るべきだと思いますし、この日のスタメンでは谷澤起用という博打に打って出た上でそこでは成功しているという評価もあるべきではないかということです。
 本来はそういった話の流れもあっての選手交代になるべきだと思うだけに、冒頭で言ったように選手交代だけで監督を評価するのはどうか…という話につながるわけですが。
 その上で勝ちきれなかったのはなぜか、昇格できなかったのはなぜかという話になるわけですけれども、それはまた別のお話になると思います。