オシム監督「ティキ・タカをコントロールする方法を見つけつつある」

特に前半ですが、ボールを回してはいたけどもチャンスが作れませんでした。その要因は監督から見て何だと思われますか?
鈴木淳監督「やっぱりちょっとランニングをする選手が少なかったかなというふうに思います。パスして動く、単純なことですけども、それがあまりできていなかったように思います。(J's GOAL

 鈴木監督のコメントは概ね納得できるものだと思います。
 細かくパスワークを繋いでいる中で、うまく走り出せる選手がいない。
 単発での裏への飛び出しは多かったですけど、それでは相手に読まれやすいし、パスの距離も長くなりがちでうまく合わないことも多い。


 ですから、パスをつなぎながら飛び出していく選手。
 パス&ゴーなどがもっと作れてそこに出せる形が理想ではないかと思うのですけど、今はボールを繋ぐ、受けるといった意識が強すぎる部分もあるといったところでしょうか。

「外だけではなくてもうちょっと中に入れて何か仕掛けられると良かったのかなということは思っています」

 これも昨日お話した通りですね。
 サイドでのパスワークは相手にとってもそこまで怖くもないだろうし、そのまま縦をえぐっても中央に高さのある選手が多くいるわけでもない。
 外から中に入って行けるようなパスワークが出来ればそれでもいいんでしょうけど、岐阜戦ではそういった形もあまり作れなかったですね。


 ですから、群馬戦で見られた、中央でボランチの伊藤が縦パス、米倉が1タッチヒールで落としている間に、ナムが飛び出すというような形が1つの理想ではないかと思います。
 3人が絡んでスピードもあったため、厳しいエリアでも相手のマークをはがすことができ、中央でのプレーで飛び出す選手も作れたことによって、直接ゴールチャンスに結びつくパスワークになった。
 こういったシーンをもっと数多く作っていかなければいけないんだろうなぁと思うのですが、そう簡単にはいかないのでしょうね…。



 Twitterでも話しましたが、オシム監督が最近このような話をしていたそうです。

「ブラジル大会では、スペインは優勝候補のひとつではある。かれらのティキ・タカ(チクタクとパスをつなぎ交換するスタイル)は2〜3年前にさかのぼれば、たしかに世界中のサッカー関係者の目標とする「思想」「哲学」のようなものだった。しかし、すでに一部のものはティキ・タカをコントロールする方法を見つけつつある。」
「わたしの念頭にあるのはドイツだ。スペインと戦う時は、自分自身がイニシアチブを取らねばならない。」(『オシムの伝言』公式ブログ

 今期のジェフがやろうとしているのはスペイン風のサッカーですよね。
 2列目だけでなく1トップもボランチもパスをつなげる選手を置いて、相手チームの間を取ってそこから前を向いてスルーパスを狙う。


 しかし、そのスペイン流のサッカーも、「コントロール(=制御)」されるようになってしまったと。
 世界的な流れは詳しくわからないですけど、確かに時折バルセロナの試合を見ても、相手がしっかりと研究していて、パスワークに苦しんでいる場面が少なくない。
 やはり基本はDFラインを低めに設定して、中盤の中央を厚くして守る…というジェフ対策と同じような対策が確立されているのではないでしょうか。
 スペイン流のサッカーではクロスからの展開がメインになることはないはずですから、守備する際にサイドはある程度捨てても構わないと。
 スペイン流のサッカーが主流だったからこそその対策も世界的に研究されている部分はあるのでしょうし、それがジェフ対策のヒントになっている部分もあるのかなと思ったりします。


 オシム監督はドイツが来るという予想をしていて、実際にここ最近の国際大会で見てもドイツチームは結果を出していますね。
 そのドイツの特徴をオシム監督はフィジカルと見ているのか、あるいはパスを素早くつないでいくコレクティブカウンターと見ているのか…。
 しかし、日本人にフィジカルを前面に押し出したサッカーは難しいとも思いますし、J2でのジェフは相手が引いてくることが多いですからカウンターサッカーも難しいかもしれない。



 ただ、確かにフィジカルにおいて強い選手が少ないのも、ジェフの1つの課題なのかなとは思いますね。
 1トップで谷澤、大塚、伊藤の2列目の選手では(あるいは田中でも)、2列目が飛び出したとしてもゴール前での迫力があまり出てこない。
 技術力のある選手を置いてはいますが、その分正確なパスワークからの崩しが作れているかというとそうでもないですしね。


 結局はジェフらしいサッカーというか、ジェフに合ったサッカースタイルの確立というのが大事になってくるとは思います。
 その過程の中で、一度スペイン風のサッカーにこだわるというのも大事なことなのかもしれません。
 あまりにもフラフラしたサッカーを続けていては、何が合っていて、何が足りないのかもわからないまま終わってしまいますしね。


 良い内容までは作れていてもなかなか結果に結びつかない、最後のところが足りない…という試合を見て、スタイルの根底も含めていろいろなことを考えてしまいました。
 チームのスタイルの確立も難しいものがありますが、今は今シーズンの昇格に集中することが何よりも大事なのでしょうね。
 そこで結果を出せれば何かが見えてくるかもしれないですし、ともかく懸命にもがくことが重要なのかなと思います。