シーズン後半戦1試合目、薄氷の勝利で3連勝

 週の間に行われた、雨の中でのアウェイ富山戦。
 シーズン後半戦一発目の試合だったわけですが、内容は乏しいものでした。
 試合は何とか2-1でジェフの勝利となりましたが、反省材料は多い試合でしたね。


 まぁ、まだまだやることはたくさんあるということ。
 メンバーを大幅に入れ替えての2戦目で、課題の方もはっきり出たように思います。
■竹内不在のビルドアップ
 ジェフは、前節怪我で欠場したケンペスがスタメンに復帰。
 代わりにナムがスタメンからベンチに入りました。


 前回の富山戦は3-2でジェフが勝利。
 先にジェフが3点取って、そこから富山に2点に返されるという大味な試合でした。
 そうなった原因として富山が積極的にラインを上げる攻撃的なサッカーをしてきたことが考えられ、その後ジェフがスタミナ切れを起こしたという流れだったと思うのですが、昨日の試合での富山は前回の反省を活かしてか慎重な立ち上がりだったように思います。


 DFラインの上がりも前回ほどではなく、ウイングバックも待ち構えてスペースを消すような戦い方。
 前線もジェフのDFとボランチの前を空けないようにして、そこからボールを奪って縦にドリブルを仕掛けていくような感じだったかなと。



 とはいえ、ジェフとしてはその分その前にスペースはあるわけですから、じっくりとボールを回していきたいところだったのですけど、なかなかそのボール回しがうまくいかない。
 1つには運動量が不足していたこと。
 そして、この試合は雨でボールがなかなかスピードに乗らず、素早いパス回しが出来なかった印象もあります。
 なかなか人もボールも動かない状況になっていた、ということになりますね。


 それと前節から竹内ではなくキムが起用されたことによる課題も、ここにきて出てしまいましたね。
 これまでの試合では、竹内のトップ下やFWへのズバッと通る縦パスが、ビルドアップの軸になることも多かったと思います。
 しかし、この試合でのキムは相手の守備ブロックもあって、なかなか縦にパスを出せない。


 キムも決して技術のない選手ではないと思うのですが、パスの受け手との意思の疎通や視野、縦パスを出す勇気も足りず、ボランチや前の選手がスッと受ける形を作っても、そのタイミングでボールが出ないシーンが多かったと思います。
 縦にボールを出せないキムは、近くの山口智や米倉につなぐことが多くなります。
 しかし、米倉に低い位置でボールを預けることによって、米倉が前に出ていく形が作れない状況に。
 竹内のように中央で縦パスを出せれば、中央で攻撃の形を作り米倉が上がる時間も作れるのですけど、そこがこの試合ではできていなかったと。



 とはいえ、キムも経験は浅い選手ですし、いきなり多くを求めるのは酷なはずで。
 実践を通じてキムの成長を促すことと。
 キムは高さの面で貢献しているわけですから、その分ビルドアップではもっと周りサポートがサポートしてあげてほしかったなと。
 特に健太郎と伊藤がうまく後方に下がって受けたり、自らもパスの出し手として貢献していかないと。
 ちょっとこのあたりの距離感というか、サポートの関係もうまくいっていなかったように思います。
■米倉の奮闘で2ゴール
 前半があまりにも動けていなかったこともあったのか、後半開始直後にジェフは一段ギアをあげます。
 このジェフに対して富山は、若干受けに回りすぎた印象でした。
 そして、後半開始早々、右サイドで持ち込んだ米倉が早めにアーリークロスを上げると、中央から右斜めに走りこんだ田中が相手を抱えたまま、腿のあたりでシュート。
 これがループ気味のシュートとなって、そのままゴール。


 しかし、得点後に勢いを落としてしまう課題は、これまで通りで。
 48分、高橋がペナルティエリアで大山のドリブルに粘って対応していたのですが、手を使って相手を倒した判定でPK。
 これで同点か…と思ったのですけど、岡本がしっかりと相手のシュートを読んでストップ。
 事なきを得ます。


 ピンチを凌いだジェフは55分。
 右サイドの奥で米倉が相手からボールを奪うと、ゴール前に侵入した大塚にスルーパス
 大塚は中央の田中へのパスを選択して、田中がこの日2ゴール目をあげます。
 米倉のフィジカルと大塚の冷静な判断と田中の思い切りの良いシュートが、得点の形につながったシーンでした。



 富山は58分に、高さのある元ジェフの黒部を投入。
 黒部にシンプルにロングボールを上げて、落としたところを拾うサッカーをしてきました。


 以前からロングボール対策に課題のあるジェフ。
 この日は高さのあるキムがいるわけですけれども、なかなかうまくはまらない。
 黒部めがけてロングボールを上げてくると2シャドーが一気に縦に仕掛けていくため、キムはそちらの選手も気になっているような感じで黒部に集中できなかったのかなと思います。



 ロングボールで富山がリズムを作っていった70分。
 右サイドからの攻撃を一度ジェフがサイドへクリアするも、再び相手に拾われてもう一度右サイドからクロス。
 これが逆サイドまで流れて、前を向かれていしまいシュート。
 最後はジェフの選手にあたって、1点を返されます。



 黒部へのロングボールによって、相手にリズムを作られていたジェフは74分に高橋に変えて大岩を、谷澤に変えて勇人を投入。
 大岩はそのまま左SBに、勇人はボランチに入って伊藤が1つ前にポジションチェンジ。
 そして、83分には大塚に変えて竹内を投入し、米倉を1つ前に移動して、竹内は右SBに入りました。
 これで4バック全員がそれなりに高さのある選手となり、サイドに流れることもあった黒部へのロングボール対策もある程度落ち着きました。
 ジェフは全体的に運動量が落ち、押し込まれる状況ではありましたが、選手交代の成功もあって2-1でジェフの逃げ切りとなりました。
■コンディションとビルドアップ
 薄氷の勝利だったと思います。
 富山の攻撃においての最後の精度がもう1つだったので、そこまでの怖さは感じなかったとはいえ、ジェフの選手の動きも悪く1つ間違えば…という内容でした。


 一番は繰り返しになりますが、コンディションの問題でしょう。
 週の半ばの連戦で、しかも富山までの移動距離の影響もあったのか、前節に比べて動けていなかった印象が非常に強いです。
 選手が動けないから、なかなかスムーズにパスも回せないし、高い位置でボールを奪われることも目立っていた。
 また、前線からのプレスもうまくいかず、簡単にジェフの最終ラインまでボールを持ち込まれるシーンも多かったですね。



 それとビルドアップの問題。
 高さで貢献しているキムを責めるつもりにはなれませんが、基本的にCBからのビルドアップでリズムを作るチームだっただけに、相手がじっくりと待ち構えて守る守備をしてくると、予想以上に形が作れなかった。
 東京Vはそこまでビルドアップのコースを消すような守備ではなかったのであまり目立ちませんでしたけど、守備から集中して入ってきた富山相手には難しい状況になってしまったのかなと思います。


 これに関しては、しっかりとキムありきでもビルドアップができるように連携を深めていくことが大事なのかなと。
 これまでは山口智がシンプルにつないで、竹内が若干右寄りにポジションを修正していって、そこから角度をつけて縦パス…というような形を狙っていたと思うのですけど、それをそのままキムがやるとキムが縦パスを狙う形になるわけで、逆の関係になるような状況をもっと作るとか。
 あるいはせっかくパスを出せる伊藤が入っているわけですから、伊藤が後方に下がってそこからパスを展開する形も考えるとか。
 SBがビルドアップをサポートする形もポピュラーだとは思いますけど、先ほども言ったように米倉は後方ではなく高い位置でボールを受ける状態を作りたいところ。
 出来れば中央でビルドアップを作る形を維持して、そこにサイドが絡むような攻撃を作っていきたいですね。
 もちろん左SBがもっとビルドアップに絡んでもいいとも思うのですが、高橋は現状でもビルドアップに参加していますし、現在大事なのは基本センターラインで攻撃の形を作ることだと思うので、それでは根本的な解決にはなりにくいのかなと。


 竹内のパス出しが良かっただけに、簡単に解決できる問題ではないとは思うのですけど、高さが欲しいのも事実ですから、周りが助けながら今は我慢していくしかないと思います。
 まったく足元の技術がない選手なら困ったことになりますけどキムはそうでもないと思いますし、改善される可能性は十分あるはずですから。
 うまく本人の成長とともに、チームとしての改善策を見つけていってほしいと思います。



 良い試合とはいい難いですけど、コンディションが悪い中でも我慢して1つ勝てたというのは収穫だと思います。
 悪いなりにもチームのやりたいことははっきりしているので、そこまで焦らず戦えたのが勝利における1つのポイントだったのかなと感じました。
 うまくいかずに焦れて強引な攻撃ばかりしていたら、結果も違ったかもしれません。
 それとともに、新メンバーでの課題が早い段階で見つかったというのも、今後を考えれば大きいのではないでしょうか。
 こうやって少しずつでも修正して、前に進んでいかなければいけませんね。