ケンペス、兵働不在での勝利

 先日亡くなられたクゼ監督に哀悼の意を表し、この試合選手たちは喪章をつけ、試合前には黙祷をささげました。
 改めまして、お悔やみを申し上げます。


 いろいろな形でジェフを去る人はいるわけで、それ自体は仕方のないことではあります。
 しかし、しっかりとその過去を忘れることなく、冷静に評価をして次に進むことが、大事なことなんだろうなと今回のクゼ監督への反応を見ても思いました。
 過去を振り返るなという意見が少なくもないわけですけど、過去を蔑ろにするから継続性もうまれず、足踏み状態が続いているわけで。
 今年のチームに対してもそうですが、正しい分析と冷静な判断というのが、クラブにもサポーターにも求められるように思います。
■竹内、ケンペス、兵働が欠場
 ジェフは竹内に代わってキムを起用。
 今年は山口智のプレー内容がいまいちでしたが、竹内の方を変えてきましたね。
 竹内も昨年までほどの強さを感じない部分がありましたが、それだけではなく山口と竹内とどちらかと言えば対人よりもカバーが得意なコンビなので、DFラインに強さをプラスするということが先に考えられていたのかもしれません。
 そういった状況下でキャプテンシーのある山口の方を残して、竹内を変えたのかなと。
 山口がキムをコントロールするような形で。



 一方、攻撃面ではケンペスと兵働が怪我で欠場。
 前線に大塚とナム、左に谷澤、右に田中を起用しました。


 前節徳島戦途中からケンペスが交代した後もそうでしたが、ジェフはケンペスがいないと攻撃の形が作れないことが多かったと思います。
 ケンペスがいないにもかかわらず、ロングボールを蹴ってしまったり、簡単に前にボールを出してしまったり…。
 ケンペスも後方からのロングボールに対して滅法強いというわけではないですけど、それでもイーブンのボールにしてくれたりと、時間を稼いでくれていた。
 しかし、そういったプレーができる選手というのは、今のジェフにはケンペスしかいないわけで、戦い方を変えなければいけない。
 それがこの試合の注目ポイントでした。



 この日のジェフは、しっかりそのあたりを意識して戦えていたなという印象でした。
 この試合も伊藤がボランチ起用でボランチにパスの出し手がいるだけでなく、ナム、大塚と相手の間で受けるのが得意な選手が動き回って、積極的にボールに触っていく感じで。
 いつも以上に素早く、相手バイタルエリアも含めてボールが回っている印象でした。
 ただ、そこから先がなかなか形にならない。
 前線で強さのある選手がいないので高い位置にポイントが作れず、なかなか中盤でボールを回せてもそこから前にボールを出せない展開となってしまいます。


 前半5分には相手の不用意なパスをナムがカットし、そのままドリブルで持ち込んで、DF2人の間を抜くシュートを放ちゴール。
 コンパクトな振りの精確なシュートで先制します。
 しかし、その後試合は一進一退の攻防が続きます。
■大塚のゴールで勝ち越し
 東京Vは前半から、ウイングバックを広く高い位置に置き、そこをポイントにして攻めていく形。
 大外に構えて、相手がついてくれば中の選手を使い、そうでなければそのまま縦に仕掛けていくという攻撃ですね。
 ボランチなどから長いボールを逆サイドのウイングバックに出すボールの流れから、チャンスを作っていきます。


 44分。
 東京V左サイドからの攻撃で裏を取られ、キムがついていきますが、簡単に滑ってしまいます。
 それまでのキムはしっかりとボールを跳ね返していましたが、ここはもう少し粘ってほしかったところかなと。
 それだけならまだよかったのですが、上がったクロスボールに対してジェフの選手が被ってしまい、結果的にクロスを落として安田のシュートをアシストするような形に。
 これが決まって1-1の同点。
 しっかりと声などをかけて被らないようにすれば、なんでもないクロスだっただけに残念でした。



 後半開始直後は相手の方が勢いがあったと思うのですが、60分あたりから東京Vの動きも止まっていきました。
 特に守備陣の動きが止まってきたのが、目立っていたかなと。


 これによって、ケンペス不在の攻撃陣にも良さが出てくるようになってきました。
 それまでは相手の守備も動けていたので、バイタルエリアでボールを受けることが出来てもなかなか前を向けずにそのまま後ろに戻すことが多かったですけど、相手の守備が緩くなてからはそこで前を向けることが多くなり、危険なプレーができるようになっていきました。
 バイタルエリアで前を向けるから、その前にいる選手にもパスを通しやすくなり、ケンペスのような強さのあるFWがいなくても形になる…。



 その流れから相手DFの裏を突く形でチャンスを作り始めるジェフ。
 そして、80分。
 谷澤がカウンターからドリブルで持ち込んで、前線の田中にパス。
 田中がフェイントを入れてシュートまで持ち込むもGKに弾かますが、そこを逆サイドで詰めていた大塚がゴール。
 これが決勝点となって、2-1。


 試合終了間際にも伊藤が抜け出しGKとの1対1に。
 伊藤はこの試合ゲームメイクの面で活躍していましたし、最後も決めてよい形で試合を終わらせてほしかったですけど、これはGKに止められてしまいます。
 結局2-1でジェフ勝利となりました。
■スタミナ切れを起こさなかった
 東京Vはやはりジェフと似たようなところがあるチームなのかなと感じました。
 実績のある選手が多く、ボールをつなぐサッカーで、前線にストライカーがいて…。
 東京Vの方がロングボールを織り交ぜる形だし、フォーメーションも違いますけど、どことなく他人とは思えないような。
 サッカーの戦い方というよりは、選手構成とか運営的な部分で近いところを感じるような気がしなくもありません。



 ジェフのほうはケンペス、兵働不在で勝てたということで、今後を考えても大きかったと思います。
 特に変えの効かないケンペスがいない状況でも、しっかりとサッカーをできたということに関しては、自信を持ってもいいんじゃないでしょうか。
 基本的な戦い方は一緒で、攻撃を"アジャスト"してきた感じだったとは思うのですが、それが形になっていたと思います。
 バイタルエリアに選手が入って、ボールを出し入れして攻撃のリズムを作っていくという点は、いつもよりスムーズにできていたと思いますし。


 ただ、相手のプレスが厳しい時に、競り勝てる強さのあるケンペスがいないというのは、課題の1つかなと。
 強さはない分、プレスが厳しい状況でも掻い潜れる技術だとか、パスワークのスピードだとか、そういった部分をより伸ばしていかなければいけないのかもしれません。
 クロスへの入り方なども、もっと中の選手が工夫していかなければ、米倉からの攻撃の形もなかなか効果的には使えていかないですね。



 しかし、ケンペス、兵働といった選手がいない分、目立ったスタミナ切れを起こさなかったという点は、地味だけれども大きな収穫ではないかと思います。
 大塚、ナム、キム、伊藤、田中といった若手から中堅の選手が、しっかりと走り続けたこと。
 それによって相手が先にスタミナ切れを起こし、スペースをつけたわけですから、それはそれで1つの攻撃の形とも言えるのかもしれません。


 もちろんこのままのメンバーで今後も相手にスタミナで勝てるかというとそうでもないかもしれないし、今までスタメン出場は少なかったフレッシュな選手が多く出場しているからこそ優位に立てたという部分はあるのかもしれません。
 しかし、スタミナ不足は今までの大きな課題でしたし、これまでの主力に代わって入った選手たちがしっかりと戦力になっているということも、今後に向けて大事な部分だと思います。
 本格的な夏場に向けてコンディションを落とす選手や、負傷者が増える可能性は十分あるでしょうし。



 個人的にはやはりケンペスがいる時とは若干違うボールの回し方などをしようとしていたように感じる部分が、一番好意的に受け止められたところかなと思います。
 それだけ賢く戦えていたということですし、臨機応変に戦えるようになれば、今後の道も明るいのではないかなと。
 自動昇格はなかなか難しい状況になってきましたけど、しっかりと力をつけていって、コツコツと勝点を稼ぐことが今は大事なのかなと思います。