3連勝で軌道に乗ることができるか

 つい先日までなかなか気温が上がってこないなぁと思っていたのに、一気に気温が高くなりましたね。
 こうなってくると心配なのは、年齢層の高いジェフの選手たちのスタミナの部分。
 実際、そこが1つのネックになってしまった試合だったかなと思います。
■兵働の右ウイング起用が当たる
 ケンペスの1トップに戻ったジェフは、左ウイングに田中、トップ下に谷澤、右ウイングに兵働という新しい並びになっていました。
 流動的な形ではありましたが、左の田中が走り回って、トップ下の谷澤が前を向く。
 そして、右ウイングの兵働がパスワークのポイントとなって相手をひきつけ、右SB米倉の前を開け飛び出していく米倉へパスを出す形。
 特に試合序盤はそのあたりがうまくいっていた印象でした。
 富山は積極的に最終ラインを上げ、サイドではさらに高いポジショニングで守ろうとしていましたので、その裏をどんどん狙えましたね。


 そして、前半5分。
 ボランチの勇人から中盤の間に入った兵働にパスが入り、そこに相手選手が集中。
 それによってできたスペースに飛び出した米倉にスルーパスが出て、米倉が相手のDFの間を狙ったボールを上げて、そこに飛び込んできたケンペスがゴール。
 チームの狙い通りの得点パターンだったのではないでしょうか。
 兵働のスルーパスも見事でしたし、米倉も精度の高いクロスを上げ、ケンペスのヘディングシュートも「さすが」でした。


 試合序盤のジェフは、守備の方もまずまずうまくいっていた印象で。
 富山はDFラインから中盤にショートパスをつなぐ形でしたので、その中盤への縦パスを狙ってボールをカットにいく。
 あるいは中盤で前を向かせず、バックパスをさせたところで、一斉に前にチェイスにでる形で相手を押し込むことが出来ていました。



 しかし、15分過ぎからはそのプレスも機能しなくなっていきます。
 プレスを掻い潜られた後にボランチ付近から後ろで潰せず、ピンチを作られたこともあって、DFラインも下がり、プレスをかけにくい状況に。
 加えて、富山のビルドアップもロングボールを交えだし、ジェフの運動量も落ちていった影響もあったのかなと思います。


 ボランチのエリアで相手を潰せない、サイドの守備で簡単に裏を取られてしまうという問題もあり危ないシーンが続きましたが、結果的にプレスをある程度諦めて徐々に守備が落ち着いていった形で。
 すると、前半42分。
 左サイドからの田中のアーリークロスを、右ウイングの兵働が合わせて2点。
 富山は試合序盤から感じましたが、斜めのアーリークロスへの対応がうまくいっていない印象でした。
 全体的にサイドに寄りすぎる分、逆サイドへのケアが疎かになりがちだったのかなと。


 ジェフからすると田中のクロスも良かったですけど、しっかり兵働がゴール前に飛び込んでいるというのは大きな進歩だったんじゃないでしょうか。
 試合前からサイドの裏を突くよう指示されていたのかもしれませんけど、その前にも兵働が裏に飛び出す動きを見せていました。
■3点目を取るもセットプレーから2失点
 2-0で折り返し。
 後半からは前半よりも落ち着いた試合展開になった印象です。


 積極的にDFラインを上げるのは変わらない富山でしたが、守備に回った時はウイングバックの位置を下げてきたように感じました。
 その分、サイドの裏を取れず、前半ほど楽に攻撃の形は作れず。
 ジェフの方も2−0ですから、あまり無理をする必要はなかったですしね。


 ジェフは前半よりもシンプルに、ケンペスや谷澤など相手3バックの中央を狙うボールが増えていきました。
 高くラインを上げる富山の裏を取る狙いだけでなく、相手CBにはさほど高さがないですから、ケンペスか谷澤のどちらかが競り勝てて落とせれば、チャンスを作ることができる…。
 そういった意図があったのかなと思います。


 57分。
 ケンペスが相手ボランチへのチェックからボールを奪い、谷澤にパス。
 このパスに対応した相手DFがボールはじきますが、それをケンペスが拾ってゴール。
 この試合は前半から積極的にプレスをかけに行きましたが、それが形になったことになります。



 これで3-0としこの試合、圧勝かと思いきや、そこからが良くなかったですね。
 77分には、右後方からのセットプレーをすらされて失点。
 山口のところで潰せなかったのが大きかったかなぁと思います。
 続く79分にも左サイドからのFKから、苔口に決められてしまいます。
 相手のキックも良かったですけど、完全に守備陣を前を取られての失点で、ニアでケンペスがしっかりと跳ね返せていれば防げたと思うのですが…。


 この2失点の前からジェフの運動量が落ちて、最終ラインがかなり低くなってしまっていましたね。
 富山は後半からジェフの右サイドを積極的についてきて裏を取られていました。
 これまで米倉の守備をサポートする形になっていた田中ではなく、兵働が前にいたということもあって、後半から明確に狙いを定めてきたのかなと思います。
 それによる怖さもあって、ラインが下がったという部分もあったのでしょう。


 しかし、それだけでなく暑さによるスタミナの問題も強く感じ、それによって足元まり、集中力も欠いていったように思います。
 最終ラインが下がることによって、中盤で前を向かれ、守備で後手を踏むことが多くなっていってしまいました。
■まずはこの3連勝で
 相手が積極的にラインを上げ、細かくパスをつないできたことにより、見るべきものがあった試合ではないかなと思います。
 試合序盤は特にサイドを中心としてうまく裏を取ることが出来ていて、良い攻撃が出来ていました。
 ただ、後半サイドの裏をケアされてからは、うまくいかない時間帯も多かったかなと。


 もう少し中央からの形を作りたかったものの、相手はDFラインを積極的にあげてきているために、中盤の間を付くのは難しい。
 そこでロングボールをケンペスに出す形が多くなったんだと思いますが、それを交えつつももう少しじっくり攻めていくべきではなかったかなぁと思います。
 基本、富山のサイドはウイングバックが相手を遅らせているうちにインサイドの選手がフォローに来る形をとっているのだと思うのですけど、インサイドの選手のフォローが遅れることも多く、そこで数的優位を作れていることが多かったと思います。
(逆に富山目線で言えば、特殊な3-1-4-1-1とも3-3-3-1とも取れるフォーメーションの大きな課題が見えた気もします。特殊だからいいとも限らないですし、運動量でカバーするにも限界がある気がしますが…。)


 それでも後半の富山はウイングバックの位置が低めになったため、後方のスペースは消せていました。
 それを見てジェフは他の狙いを探すことが多かったですけど、サイドで数的優位なのは変わなかったわけですから、そこからチャンスも作れたのではないかと…。
 もっとはっきりと言えば、サイドで裏を取る動きとパスを出す関係だけでなく、攻撃のバリエーションを増やすことが大事なのかなと感じました。



 一方の守備に関しては、ショートパス主体で回されていた時間帯は、思った以上にプレッシングが効いていましたね。
 相手のビルドアップが拙い、パスワークが遅いという部分は、しっかりと差し引かなければならないとは思いますが、パスカットを狙ったり相手がボールを受ける瞬間にアタックを仕掛けて、あそこまで中盤でボールを奪えたのは新鮮でした。


 ただ、2列目までを主体としたプレスがうまくいっていた分、逆にロングボールへの対応やそれに応じて最終ラインが下がってしまうこと、ボランチエリアで潰せなかったり、サイドで簡単に裏を取られてしまうことなどに関しては、大きな課題に見えてしまいました。
 それとともにセットプレーからの守備の拙さも、目立ってしまいましたね。
 昨年もセットプレー時の守備時はゾーンで守っていて危なっかしさを感じましたけど、今年も不安材料の1つといった感じで。
 そういえば一昨年も、オーロイの前を取られてやられることが多かったですが。


 加えて、最終ラインのスタミナ不足もこれから暑くなるにつれて、すごく心配ですね。
 ナイトゲームも徐々に増えていくとはいえ、ベテラン選手が多いと90分間のスタミナもですが、蓄積された疲労も心配になってきます。
 疲労による怪我なども多くなってくるかもしれませんし、例年夏の終わり頃に調子を落とす傾向にありますから、しっかりとコンディション調整をしていかなければなりませんね。



 それとともに、選手たちの足が止まった状況での試合の進め方。
 今回の場合は試合の終わらせ方も、気になったポイントでした。
 攻めるにしても、リスクケアは十分にされているのか。


 単純に守備を固めても、チーム全体の勢いを止めてしまい、より動きが少なくなるかもしれないですから、全体のバランスを考えながらプレーしなければいけないと思います。
 簡単なことではないと思いますけど、ベテランが多くスタミナでは勝てない試合が増えることは覚悟しなければならないと思いますし、その分より賢くプレーしなければいけないはずで。
 試合巧者になれるかどうかが、今後、大事になってくるように思いますね。


 ともかくこれで3連勝。
 この3連勝の中でも攻撃はある程度形が作れてきていると思いますし、成績が良くなってきたのも決して偶然ではないでしょう。
 今後は暑さという新たな敵が出てくる可能性も感じた試合ではありますが、まずはこの3連勝で軌道に乗る可能性が見えてきたところを喜びたいと思います。