ケンペス不在が大きく響いた岐阜戦

 ゴールデンウィーク最後の試合となったジェフ対岐阜戦ですが、J2でよく見る試合風景といった感じだったかなぁと思います。
 のんびりとした雰囲気がテレビを通じても感じ、上位を狙うチームがべた引きをする下位チームになかなか得点を奪えないといった流れで。


 しかし、今年のJ2は昨年よりはレベルの低下は落ち着いたのかなぁとも思います。
 昨年も守備を固めるチームは多かったものの、守備陣のイージーなミスで失点することが多かったですが、今年はJ2を通じてもそういった失点は少ない印象で。
 JFL降格2年目で下位チームも危機感を持つようになったのか、長崎の躍進もあって全体のレベルが保たれているのか。
 攻撃は相変わらずですけど、守備の安定によってある程度見られる試合は増えた印象があります。
■ビルドアップがうまくいかず
 ジェフはケンペスが不在。
 代わりに谷澤が前線に入り、ナムもスタメン。
 ジャイールをスタメンから外し、左サイドで兵働を起用しました。


 しかし、兵働は中央でボールを受けることも多く、トップ下で起用した時と同様にボランチのような役割というか、ゲームを作る仕事をしていましたね。
 まぁ、本来ならボランチで使ったほうが中央でボールも捌けるし、ゲームメイカーとしては機能するのかもしれませんけど、守備能力や運動量に問題があるからサイドやトップ下に回したいというところなのかもしれませんね。
 ただ、2列目で使うにはスピードや前への仕掛けが足りず、ここでも悩ましい問題が出ている印象です。


 兵働をそこで使わず守備を重視しているボランチエリアですが、ここ数試合は健太郎のパスミスも目立ち、ビルドアップの面で苦労している印象ですね。
 昨年の木山監督の意図なのだと思うのですが、守備もパス回しもできるボランチを監督が希望し健太郎を獲得し、勇人も同じようなところがあるボランチコンビですが、下手をするとどっちつかずになりがちで。
 なかなか万能な選手というのは獲得するのも難しいですし、ガツンと潰せるアンカーと、攻撃的な選手だとかゲームメイカーを組ませた方がシンプルだと思うのですけど、理想を追い求めすぎたということなのか…。
 まぁ、確かにダブルボランチで明確なアンカーを置いて戦うスタイルというのは考え方が古いのかもしれませんけど、現実も考えなければいけないと思いますし。


 もっともこの試合では兵働も決していい出来ではなく、ゲームを作れていたとは言いにくいのかもしれませんが。
 なかなか前線の動きがうまくいっておらず、ビルドアップの狙いが作れないこと。
 ピッチの問題なのかボールが伸びず、いつになくパススピードが遅くなってしまう問題などがあり、なかなかビルドアップで攻撃のリズムが作れずにいました。



 一方の勇人の関しては、この試合で積極的に前に出ていく動きを見せていました。
 ああいった動きこそ、勇人の真骨頂と言うべきなのでしょうが、チームとしての狙いでもあったのかなぁと。
 5バック気味にスペースを消して守る相手に対して苦労するところのあるジェフ。
 そこでウイングやSBが相手のウイングバックをサイド際で引っ張っておいて、ストッパーとの距離を広げ、そこに勇人や米倉などが飛び出していくという攻撃。
 日本代表での第二期岡田監督も狙っていた攻撃パターンということになりますね。


 しかし、ボールは圧倒的にキープしていましたが、なかなかチャンスは作れず。
 ジェフは中央での攻撃の形が出来ていませんでしたね。
 岐阜のほうはペナルティエリア内に5バックとダブルボランチがポジショニングして守るような時間帯も珍しくなく、後方に人数を割いて守っていました。


 それに対して、相手の戦う意欲も感じなかったのか、不用意に縦にパスを出して相手に囲まれてボールを失う…というプレーも少なくなく。
 なんとなくのんびりとした雰囲気に、ジェフの方も飲み込まれてしまったところがあったような気もします。
■セットプレーからようやくのゴール
 後半に入ってからも、ジェフがボールを回し岐阜がスペースを消して守る流れは変わらず。
 決定機もなかなか作れていませんでしたね。


 こうなってくると期待されるのはセットプレーなのですが、ジェフは昨年あたりからなかなかセットプレーで得点を奪えないイメージで。
 この日もCKは非常の多かったのですけど、得点は遠い印象でした。
 一昨年はCKから竹内がヘディングでゴールを決める流れがパターン化されていて、それによって勝点を稼げていましたが、現状ではむしろセットプレーからの得点が決まらないことが1つの大きな課題になっている印象で。


 キッカーの問題などもあるのでしょうけど、全体的に背の高い選手が少ないという問題もあるのでしょうね。
 FWも決して高い選手はいませんし、中盤も180cm以下の選手ばかりで兵働も180cmあるというイメージはないですし。
 そうなってくるとどうしてもターゲットは山口智、竹内ばかりになってしまい、そこへのマークが厳しくなってしまいます。
 今後も相手がスペースを消してくる試合というのは多いでしょうから、どうにかしてセットプレーからの得点力は高めていってほしいところなのですけど、セットプレーばかりは個々の勝負という面が大きいはずですから、なかなか難しい部分もありますね…。



 試合は65分あたりから、ようやく岐阜が攻撃への色気を見せ始めます。
 そこからのカウンターでピンチになることはありましたけど、引き分けでよい試合でもないですし、岐阜の攻撃も最後の精度は低かったですから、ジェフとしては大きなチャンスだなと感じました。


 それを見て鈴木監督は70分に田中に変えて深井を。
 80分にはナムに変えてジャイールを投入。
 基本相手の攻撃はそこまで怖くなかったですから、守備に不安のある2人を起用しても大丈夫と言うところだったのではないでしょうか。 



 そして、86分にようやくCKから米倉、ジャイールと当って、ゴールが生まれます。
 2人がうまく合わせたボールというよりは、ピンボールのようにボールが当たって決まったゴールであり、きれいな形ではありませんでした。
 しかし、その前には竹内がヘディングで惜しいシーンを作っており、さすがにそろそろ決まるかな…という印象はありました。


 そして、何よりもCKだけで16本ですからね(笑)
 これを「偶然決まったゴール」と言うのはおかしく、ゴールを狙える位置でのFKも数多くありましたし、あれだけ蹴っていればいつかは決まるだろうという印象はありました。
 逆説的に岐阜サイドから考えれば、あれだけCKやゴール前でのFKを与えては、いつかはやられてしまいますよね。
 もちろんジェフとしては、もっと早く、もっと多くの得点をセットプレーから決めたかったところですが。
ケンペス不在で攻撃のスイッチが作れず
 ここから本題に入って行くわけですが…。
 CKが多かったのは、偶発的なものではなかったと思います。
 原因はケンペスがいなかったこと。
 この日のジェフはケンペスが不在で、中央からの攻撃が作れていなかった。
 その分サイドからの攻撃が多く、そこから良い形でシュートに持ち込めなかったから、CKになってしまうことが多かったんだと思います。
 


 ビルドアップでも普段なら一番に狙うのは、ケンペスのポストです。
 ケンペスが前線から下がって受けに来て、楔のパスを中盤に落とし、それが攻撃のスイッチになっていたジェフの攻撃。
 しかし、この日はそのケンペスがおらず、谷澤、ナムもポストにうまく入れず、攻撃のスイッチが作れなかった。


 だから、ビルドアップもうまくいかなかったし、パスワークの意図も曖昧になり、ミスも多くボール回しも遅くなっていた印象です。
 ケンペスがいることによって、前線でのマークが集中するため、パスのターゲットになっていないときも結果的にオトリになり、トップ下の選手が相手バイタルエリアで受けやすい状況にもなっていたと思います。
 それによって、この日の前線のコンビとなった谷澤、ナムも良さが活きてこなかったですね。
 それまではトップ下でプレーすることの多かった二人は、ポストプレーや前への飛び出しなど、FWとしての役目は果たせませんでした。


 ケンペスの良さはポストの技術だと体の強さだけでなく、運動量が豊富で、ポストに動く呼び動作も優れていること。
 スッと後方からのパスコースに入って、ポストを受ける態勢を作り、体を張ると。
 前節の愛媛戦でも試合開始直後に劣勢を強いられていましたが、ケンペスがポストを受けに下がって兵働に良い形でボールを落とし、兵働がサイドに展開したところから、試合の流れが変わっていきました。



 加えてケンペスは、サイドからのクロスに走りこんでいってヘディングで合わせるのも得意な選手。
 決して長身ではないですけどヘディングはうまい選手ですから、クロスのターゲットにもなれる選手であり、現在J2得点王だというのも決して偶然ではないと思います。
 時折球離れが悪いのはちょっと気になるところですが…。
 谷澤とナムはそこまでクロスに合わせるのがうまいわけではないですから、サイドからのクロスに合わせられる選手がいなかった…。
 だから、CKに流れることが多かったんだと思います。


 遅攻においてのビルドアップのターゲットもいない、そのあとのサイドからのクロスの狙いもない。
 そんな状況だったからこそ、岐阜が前に出てきて裏にスペースができ、そこを深井やジャイールが狙える形になったのは、ジェフにとってチャンスだなと思ったわけです。
 深井もジャイールもスペースがなければ活きづらい選手ですし、交代のタイミングもドンピシャだったと思います。



 もちろん、谷澤とナムもポストプレーヤーとトップ下という関係ではなく、新しい可能性が見いだせればよかったのかもしれませんけど、前節から時間もなかったですし難しいところはあったと思います。
 これまでも何度かやっているとはいえ、ケンペスの役割が明確になっている今では以前とは違う状況になっていると思いますし、谷澤とナムもケンペスが受ける形の中でトップ下という役割を担ってきただけに。


 しかし、今回の試合は何とか勝てましたけど、今後ケンペスがいない状況も考えると、悩ましいところがありますね。
 谷澤とナムのコンビネーションの向上に期待するという考えもあるのかもしれませんけれども、基本2人にはトップ下という大事なポジションを任せたいという思いもあって。
 やはりセンターFWが他にいないというところが、根本的な問題なのではないかなぁと私は思います。
 ずっとその問題は心配ではあったわけですけど、ここでそれがより明確になってしまったかなと。



 まぁ、スッキリとした勝利ではなかったですけど、これで2連勝。
 変に"バカ試合"をやって勘違いするよりは、課題も含みつつ向上していったほうがジェフにとってはいいのかもしれませんし、そういう意味では決して悪いゴールデンウィークでもなかったのかぁと思います。