山口智「少し下がり過ぎたというのもあります」

山口智選手「ある程度自分たちの前でやらせようといっていた。前半はちょっと裏を狙われたりもしたんですが、そのへんの対応は…少し下がり過ぎたというのもありますけど、ガンバ相手だけにしょうがないなっていうのはあるし。」(J's GOAL

 そろそろはっきりとしてきた気がしますよね。
 ラインが下がりすぎる原因というか、理由が。
 自分のブログでは昨年、山口智が入団してミリガンに代わる形でDFラインのリーダーになった直後から、山口智によるDFラインが下がる課題に関しては触れていたと思いますが。


 ミリガンがいた当時は竹内などがDFラインのリーダーだった…という声もあるかもしれませんが、実際には積極的にミリガンがラインを上げるからそれに周りもつられる形でラインが上がる状態になっていました。
 一昨年震災直後に行われたFC東京戦などはそれが凄くわかりやすく出ていて、負傷明けのミリガンが途中出場でDFラインに入った途端、一気にDFラインが上がり押し込まれがちだった状況が解決したことがありますが。
 その分もちろん裏を取られるリスクはあったし、ミリガン自身も基本はハイスペックだったもののミスは少なくなかったわけですけど、ラインを上げることが出来る選手だったから、全体をコンパクトに戦うことが出来ていたと思います。


 山口智は自身にスピードがないことがわかっているというか、自分の間合いで守りたいために、ラインが下がりがちな傾向にある。
 それは山口主導のDFラインならベストな位置取りではあるのだろうけど、他の選手がDFリーダーになったらまた違うのだろうなと思ってしまいます。
 確かに昨年は最後に跳ね返すから失点数は少なくなっていましたけど、その分中盤やサイドの守備では苦しそうでしたし、プレスもかけにくく、全体が押し込まれやすい分、守備から攻撃に転ずる部分で余計に労力がかかってしまう…という弊害が出てきてしまいます。



 これが昨年まではチーム全体がゴール前で跳ね返す約束事だったのだと思うのでそれはそれでよかったのでしょうが、今年に入ってから試合内容や監督のコメントを聞いていると少し違う考えなのではないかと思います。

鈴木淳監督「前半からポゼッションの時間も多く、得点もあげることができて、いいペースでしたが、失点した時間帯だけ少しディフェンスラインが下がってしまって全体に押し込まれてしまったかと思います。」(J's GOAL

 監督はあの時間帯だけ…と話して(フォローして?)いますが、実際には他の時間も下がりやすい傾向にあったように思います。
 まぁ、確かに酷かった鳥取戦に比べると、サイドにボールが入った時に我慢しているのかな?という印象はありましたけど、それでもまだまだ簡単にラインが下がりがちで。
 しかも、山口智のラインコントロールを見ていると、一度下がった後に上げる動作というのは少ないのですね。
 確かにあげるリスクも大きくセーフティファーストでコントロールしているのかなとは思うのですが、J2で勝ち進んでいくためにはリスクを背負ってでも守備で主導権を握っていく考えも必要になってくるのではないかと思うのですが。


 G大阪戦で解説だった水沼氏は山口智はわかった上でラインを下げているし、ゴール前で跳ね返す考え方もあり…というような話をしていました。
 実際わかってやっているんだとは思うし、そういった考え方も間違いではないとは思います。
 しかし、その考えを監督が良しとするのか。
 チーム全体で意志が統一できているのか。
 攻撃への影響だとかスタミナの問題など、総合的に考えてそれがチームにおいて良い方向に行くのか…という部分が大事だと思います。


 また、昨年に比べても今年はラインが簡単に下がってしまっている印象もありますし、ゴール前で跳ね返せていないことも多い気がします。
 跳ね返せていないというか、深い位置まで楽にボールを持ち込まれて、細かなところでの相手のスピードや鋭さについていけていないというか。
 実際、G大阪戦で倉田にやられたのも山口智でしたし、動きのキレに若干の衰えを感じるような。
 これがコンディションの問題で、調子が上がってくればよくなるならいいのですが、そのコンディショニングの面も年齢を重ねると大変になってくるところもあるでしょうし。
 ストヤノフを獲得した岡山も、似たような苦しみがあったような気がしないでもないですが…。


 加えて竹内の動きもいまひとつなのかなとも思います。
 その竹内もミリガンとの方が、意外とやりやすそうな気はしましたけどね。
 タイプが違う分、分業できていたんでしょうか。

 

 オシム監督がスピードあるDFと高さのあるDFラインにこだわったのも、1人が高さで対応しもう1人が裏への対応もして、高さを維持しつつラインも上げられるDFラインが理想だと考えていたのではないかなぁと思います。
 それでも昨年は木山監督の考え方で低いラインでも良かったのだろうから、空中戦に強いCB二人でよかったのだろうけれども、今年はそうでないとしたら…。
 その山口智の獲得を希望したのも木山監督なはずで、今年はその木山監督の望む戦力のまま戦っている難しさを感じる部分があります。


 現状のDFメンバーだとラインが下がりがちだからといって、総合力で選手を選ばなければいけないでしょうし(言い方を変えれば妥協とも言うのでしょうが)、実際山口智など実績のある選手を外すに周りへの影響力も懸念されます。
 もちろん若い選手の成長にも期待したいところで、キムなどはCBとしてみてみたいところもありますけど、現実的に考えると山口智自身が調子を上げることと、現状のメンバーでラインを上げる勇気がもっと必要になってくるんじゃないかなと私は思います。