コンパクトな守備対パスサッカー

 開幕してまだ数試合しか経過していませんから、自分としてはじっくり試合を見ていきたいというか吟味したい季節だったりするのですが、20日には早くも次の試合があるんですよね。
 まぁ、昨日の栃木戦はあまり語れる部分がない試合でもあったので、それでよかったのかもしれませんが(笑)


 しかし、内容がない試合だったという意味ではなく、焦点がはっきりしていたという意味で。
 コンパクトな守備をしてくる相手に対して、どうやってパスで崩すのか。
 あるいはパスサッカーではないにしても、他の方法でこじ開けるのか…というところが、この試合での見るべきポイントだったと思います。
■栃木のプレスに苦しむジェフ
 試合序盤から栃木が積極的にプレスをかけてきました。
 ジェフが低い位置でボールを持っているときは、DFラインをかなり高く維持し、前にプレスをかけ。
 ある程度の位置までボールを持ち込んだ際には、栃木のFWの位置を下げて全体的にコンパクトに。
 ジェフはこの守備にかなり苦しめられた印象です。


 熊本戦の印象だとジェフの攻撃の狙いの1つは、ピッチ中央で相手のDFラインとMFラインの間でボールを受けること。
 しかし、それを相手も研究してきたのか、中盤中央ではかなり厳しく守備をしてきました。



 ジェフのFWがDFラインとMFラインの間に下がってボールを受けようとしても、栃木のCBが厳しくついてきて前を向かせない。
 あるいは、そのエリアで中盤の選手が受けようとしても、相手ボランチがプレスバックしてきて潰しにかかる。
 また、熊本戦ではジェフのボランチからの縦パスが通っていましたけど、ボランチに対しても相手のFWを中心に厳しい守備で潰しにくる…。
 ジェフCBからの縦パスに関しても、相手FWと相手ボランチがスペースを消しながら中央を守っていますから、なかなかその2列を超えてパスが入ることは少なく、縦パスがうまく通らない状況になってしまいました。
 それでもジェフはその厳しいエリアでパスを通すチャレンジをしていた印象ですが、相手の動きも良くなかなか思う通りにはいかなかった印象です。


 そこで栃木はサイドへの守備はスライドして守る傾向にありますから、そのラグを狙って一方のサイドから逆サイドで大きなサイドチェンジからの展開を狙っていった印象でしたが、ロングボール一発などではうまく展開することが出来ず。
 サイド攻撃も左SBはキムの攻撃力はもともと期待されていないものとしてジャイールも単独での攻撃ばかりで対応しやすく、右も右で米倉が中に絞っていることが多いため高橋のみでの攻撃ばかりになっていた印象で、両サイドに攻撃に厚みを感じませんでした。
 熊本戦でも感じましたが、やはりサイド攻撃の質、周りとのコンビネーションなどをもっと深めていかないといけないように感じます。



 前半途中からケンペスジャイールが裏を狙う形も交えるようになっていきますが、そこも精度の問題などもあってなかなかうまく通らないことが多かったですね。
 それでもそういったボールを交えることで、徐々に相手が下がってきたかなとは思うのですが、ゴール前でボールを持っても焦りすぎてボールを失うことが多かったかなと感じました。
 そのあたりに関しては谷澤に期待したいところだと思うのですけど、今日の谷澤はあまりいい方の谷澤ではなかったかな…といった印象です。
 あいかわらず、調子にムラがあるのが残念なところかなぁと。
 今年はチームの攻撃を谷澤が引っ張っていってほしいのですけどね。
■中盤の構成力が足らず…
 前半の途中から動きが落ちてきたかな?と感じた栃木ですけど、後半に入ってから再び巻き返してきた印象でした。
 キックオフ当初から栃木はかなり飛ばしてきた印象もあったので、ジェフがうまく相手の勢いをいなすことさえできれば相手を疲労させればチャンスがあると思っていたのですが、なかなか相手を走らせる状況は作れず、逆にジェフのほうが守備などに追われて苦しい状況になってしまったのかもしれません。


 ただ、優勢に進める栃木ではありましたが、栃木の攻撃も決して鋭さがあるわけではなく。
 やはりボールを失った後のリスクを考えてか、サイド攻撃が基本となっていましたが、ジェフのゴール前を崩せるような形は少なく。
 ジェフのほうもある程度サイドは、やられてもいいという戦い方だったのではないでしょうか。
 前半はキムの方を攻められていましたが、後半は右サイドをやられていましたし。
 シュート本数は栃木のほうがかなり多かったですけど、後半途中までは苦し紛れのミドルシュートも多かった印象で、正直そこでシュートを打ってくれる分には怖くないなといった感でした。
 栃木のミドルシュートが多いのも、シュートで終われば守備に戻りやすいというメリットを考えてのことなのでしょうか。



 ジェフのほうも前半よりは良い動きが増してきて、縦にパスを出せる機会は増えたとは思いますが、なかなか決定的なチャンスとまでは行かない…。
 例えばケンペスあたりが少し下がってボールを受けても、相手CBがついてくるため、熊本戦のようには簡単には前を向けない。
 そこでそのまま中盤に落としたい状況になるわけですけどその落とす相手がいなかったり、中盤でイーブンなセカンドボールを拾えなかったり…。
 このあたりは中盤の選手の補助動作というのも大事になってくるとは思うのですけど、やはりケンペス、米倉、谷澤あたりが3トップ気味のポジション取りをしていて、ジャイールも基本サイドに固定ですから、中盤の人数が根本的に足らないという部分があるように思います。
 しかも、ボランチ二人はジャイールの守備のフォローで、左サイドよりにまわっていることも多いですし。


 これをどのように解決するのか。
 熊本戦では谷澤などが下がって受けることも多かったですけど、それだけでは難しいかもしれないし。
 3トップ気味でターゲットを増やす形は出来るのでしょうけど、運動量なども含めた中盤の構成力が厳しくなってしまいますね。
 ジャイールも中盤でボールを供給する側というよりは、ボールを受けて仕掛ける側の選手ですし。


 やはりちばぎんカップのように、谷澤や米倉が後方から前に上がっていく感じというのも交えてやっていったほうが良いのではないかと私は思うのですが…。
 そちらの方が中盤の人数が増えてパスや運動量が増えるんじゃないかともいますし、中盤から飛び出して行く選手も、前を向きやすいしそのままの勢いで攻めていける。
 ただ、ターゲット役のポストプレーヤーが減る分、そこへのマークは厳しくなるかもしれませんが…。



 試合の方は終盤に入って、両者ミスが増えていきます。
 ミス絡みの攻撃だとさすがにジェフも厳しくなり、何度か危ないシーンを作られますが、岡本の素晴らしい対応もありスコアレスドローで終了ということになりました。
■見えてきた課題
 基本的に中盤のパスワークに対して、コンパクトな守備で潰された試合ということで、そういった試合はこのような展開になりがちではないかなと思います。
 ジェフから見れば、自分たちの好きなようなサッカーをすることが出来なかった。
 試合を潰されたというか、なかなかサッカーにならなかったというか。
 しかし、栃木のほうもその相手の良さを消す守備はしっかりと出来ていたけれども、守備の方に力を注いで攻撃のほうにまで余力が回らなかったのかなと思います。



 問題点は複数あるのでしょうけど、まずは単純に運動量が足りなかったかなと。
 しかし、これに関しては栃木がかなり良かったという印象もあり、相手をほめるべき部分でもあるようにも思います。
 90分近くあれがもつとは思いませんでしたし、特に中盤の動きは良かった。
 ただ、栃木に関して言えばこれがフルシーズンやり通せればいいのでしょうけど、コンパクトに戦えることが前提のサッカーなだけに、走れないときに厳しい。
 だから、毎年走れている時期は非常に強いのだけど、気温が高くなったりすると厳しく、年間10位くらいにとどまってしまうという課題があるのでしょうけどね。
 逆にジェフは瞬間的な運動量も課題ですけど、スタミナの部分でやっぱり課題があるのかなと思います。


 それと中央が厳しくマークされた中で、サイド攻撃の質の問題。
 シンプルにサイドを突ければチャンスが作れたかもしれないですし、もっとサイドで縦に仕掛けられれば相手のラインを下げることも出来たかもしれない。
 中央も含めてではありますが、全体的にスピードのある選手が少ない問題も感じられたかなと思います。
 今日のような試合でこそ深井が必要だったような気もしますし、深井が怪我でないのならベンチ入りメンバーを間違えたのかな…とも思わなくもありません。
 代わりに入った大塚も見てみたい選手ですけど、なにせ中盤の守備はきつかったですからね。



 そして中央でのパスワーク。
 まずは厳しく狭いエリアでもパスをつなげる選手が単純に少ない。
 この展開だとボランチに兵働がいたほうがよかったのかな…とは思いますが、ただ、熊本戦では勇人と健太郎のシンプルに縦を狙うパスワークのほうが良かった気もするし、状況次第なのではないかとも思います。
 その分パスミスは多いですし、サイドへの展開も少なかったですけど、縦へチャレンジするパスを狙ってミスをするのなら仕方ないところもあると思います。
 そこで安全な横パスを狙ってばかりでは開幕戦のような「ただパスをつなぐだけ」の展開になってしまいますし、兵働は視野が広い分逆にそちらに出してしまいがちなこともあるのかなとも。


 それでもパスの出し手のほうはダブル佐藤とCBで、ある程度出来ていた部分もあったとは思うのですが、より問題なのは受ける方の選手。
 運動量に関しては先ほども言いましたけど、プレッシャーをかけられても相手のチェックをいなしてキープして、そこで時間を稼げる選手や良い態勢で前へボールを持ち込める選手が少ない。
 こういった選手の不在が、守備の厳しい状況では大きく響いてきてしまうように思います。


 何度も同じことを言うことになりますけど、マリオ・ハースだとかレアンドロ・ドミンゲスだとかルーカスなどのように厳しいプレッシャーの中でもキープが出来て、周りを活かしたりラストパスを出せるような選手が欲しかったんじゃないかなぁと…。
 ジャイールはどちらかといえば、自分で仕掛けるタイプですしね。
 兵働もシンプルにパスを回す選手であって、タメを作って攻撃に変化を与える選手ではないですし、フィジカルもないので高い位置では消えることも多い。
 少なくとも高い位置で司令塔になれるタイプというのは、現時点ではいないように思います。
 そういった高い位置でポイントになれる選手がいないと、なかなか攻撃に深みが出てこないのかな…なんて思ったりします。



 まぁ、左SBもそうですけど足りない選手のことばかりを言っていても今は仕方がないので、今いる選手たちの中でどう戦うかを考えていくべきなのでしょうね。
 激しいプレッシングを受けた中で、更なる進歩のために課題が見つかったことのは、収穫ではないかなと思います。
 ただ、ここまで激しいプレッシャーを狙っているチームもJ2では(今では世界的にも?)少ないでしょうから、自分たちの道は見失わずに課題を克服していってほしいと思います。