見えてきた得点への流れ
開幕戦だったフクアリでの札幌との試合が低調だったので今後が心配でしたが、先週末の熊本戦は期待よりも良かったですね。
スコアもそうなんですけれども、それ以上にやりたいサッカーが見えてきたい試合だったんじゃないかなぁと思います。
もちろん完璧な試合とはいい難いですけれども、収穫の多かった試合内容だったのではないでしょうか。
ようやくジェフが開幕を迎えられたかなと(笑)
できればこの試合内容を開幕戦で見せてほしいところでしたけど、長いシーズンですし、あの試合があったからこそ気持ちも引き締まったところがあるかもしれないですし、その分ここから巻き返してほしいですね。
■ケンペスのゴールで先制
ジェフは序盤から優勢に試合を進めていきます。
積極的に動き回り、相手を押し込む形に。
明らかにコンディションが前節とは違い、1人1人が動けている印象を受けました。
10分にはいきなり試合が動きます。
怪我の兵働に代わってスタメン出場した佐藤健太郎が中盤でボールを落としたところから、佐藤勇人が相手との競り合いに勝ってボールを奪うと、素早やく前方のケンペスに縦パス。
ケンペスがくるっと反転して前を向くと思い切ったシュート。
これが相手DFにあたってコースが変わり、そのままゴールに吸い込まれます。
ここまでの流れは非常に良かったですね。
相手とのせめぎ合いで、ボールを奪ったら素早く前に出ていく姿勢。
ボールを持ったら素早く縦パスを狙う選択。
これらはこの試合のキックオフから感じられた部分で、良い試合のできたちばぎんカップでも印象に残っている部分です。
この1点はそれが実った形でのゴールということになりますね。
相手からボールを奪った瞬間というのは、ボールを奪った選手の前が空くことが多いですから、その時に自分でボールを持ち込んでどんどん前に出ていくと。
これはオシム監督も得意にしていたパターンです。
ボールを奪う選手というのは得てして後方の選手である場合が多いですから、その選手がそのまま前に出て行くというのはリスクもあります。
けれども、相手チームとしてもボールを持っていたところから奪われて攻撃を受けるわけですから、選手が前掛かりになっていることが多く、ピンチになりやすい。
ですから、ボールを奪ってから確実に攻撃に持ち込めさえすれば、チャンスになる…と。
こういったショートカウンターの形が1つの狙いなのかなと感じました。
また、ボールを奪ってから素早く縦パスを狙う形も、ちばぎんカップで見られたパターンですね。
札幌戦では選手の動きが全体的に悪く、素早い攻撃に移れなかったこともあって、結果的に横パスばかりが目立つ展開になってしまったと思います。
しかし、この試合では選手たちの運動量もあり、縦パスへの意識がより強くなって、相手の守備が整ううちに攻め込むという狙いがあったのではないかと思います。
先制点を決めたケンペスは試合開始直後にポストで体を張ったり、ゴールの直前にもCKからのヘディングシュートをクロスバーにあてるなど、開幕戦とは全く違う動きの良さを見せてくれました。
もう1人、開幕戦の出来は批判を受けることも多かったキムも、体を張ったディフェンスだけでなく、機を見たオーバーラップも見せ、徐々に良くなっている印象を受けました。
2人とも何度かあったパスミス、選択ミスがもう少し減れば…とは思いますけど、今後に向けて明るい材料ではないでしょうか。
■しっかりと守って2点目、3点目
早い時間で先制点を奪ったジェフですが、そこからは停滞気味でしたね。
先制点を奪ったことで気持ちが落ち着いてしまったのか、ゆっくりと後方でボールを回す機会が増えてしまいました。
こうなってくると相手は守備を固めてしまいますし、攻略がしづらい…。
もちろん時間帯によって試合を落ち着かせることも大事だとは思いますが、ちょっとそれにしては早すぎたし、もう一度勢いを取り戻すこともなかなかできませんでした。
試合開始と同時に飛ばしていたのか、後半からは運動量も落ち、攻撃にかける人数も減って、DFラインも下がっていってしまいました。
相手に攻め込まれる機会も増え、これはまずい展開だな…と感じる流れに。
しかし、鈴木監督は冷静でした。
ケンペスとジャイールの2トップにして、トップ下だった谷澤をサイドハーフに回して4-4-2に。
後ろを4×4で守って、2トップでカウンターを狙う守備的な布陣にして、この時間を耐えようという戦略だったように思います。
相手の実力や試合展開を考えると、もう1点取りに行きたくなってもおかしくない状況だったと思うのですが、あえてそこで守ろうとしたところは、さすが経験のある監督さんだなと感じました。
こういった冷静さがジェフには欠けていた部分だとも思いますし、今後も鈴木監督に期待したくなる判断だったように思います。
相手の攻撃の鈍さもあってこの時間帯を何とか凌ぐと、69分には追加点。
佐藤健太郎からのパスを前線のナムが受けて反転し、前方の米倉が裏に飛び出す形で受けて、2点目のゴール。
これもいい流れでしたね。
続いて、74分にはケンペスがアーリークロスを落として、ナムが前を向き、再びケンペスがパスを受けて3点目。
ケンペスがしっかりと落として再び前へ走りこんだのも良かったですし、ナムの冷静なパスも美しかったと思います。
これで試合は決まった感じでしたね。
■見えてきた得点のパターン
全体的に見ると、前半10分から後半得点を決めるまでの流れは決して良くはなく、課題も感じる試合でした。
特に後半は熊本のラストプレーの精度に助けられた部分もあって、強い相手ならどうだったのか…と感じる部分も正直あります。
それでも岡本を中心に冷静に守り切ったのは、さすがというか。
この試合では健太郎の守備での貢献も光っていたと思います。
コンディションがいいのか、なんだか昨年よりも局面で体を張れているような気もします。
そして、何よりも良かったのは、攻撃で得点を奪う形が見られたことです。
前節札幌戦では前線の選手たちが相手最終ラインに吸収されて、ゴール前のスペースもなく潰されることが多く、仕方なくサイドに逃げることが多かった印象です。
しかし、この試合ではDFラインとMFラインの間…つまりバイタルエリアを、うまくつくことが出来ましたね。
ジェフボールになった瞬間、相手のDFラインとMFラインはスッと下がるわけですが、この瞬間に前線のケンペスや米倉、谷澤、ナムなどがあえて立ち止まる。
あるいは、若干下がってポジショニングをする。
これによって、バイタルエリアの間でフリーになることができ、そこで縦パスを受けて前に反転する。
または、そこにCBがついてきたら、ポストプレーをして、中盤の選手に落とす。
そして、2点目のように他の選手が、あるいは3点目のケンペスのようにポストで落とした本人が前を向いて、縦パスを受ける形。
これが今期のジェフの攻撃の狙いなのかなと感じました。
やっていることは比較的シンプルではあるとは思うし、難しいことをしているわけではないようには思います。
しかし、これをやるために、体の強いケンペスや米倉、ナムや谷澤などを選んでいること。
そして、時には3トップ、4トップにも見えるように前方に人数をかけて、ポストや飛び出しをさせてターゲットを増やすなど、その目指すべきサッカーに対してのメソッドというか、アルゴリズムがはっきりと見えているように感じるのは、非常に大きな部分ではないでしょうか。
もちろんこれが通用したのは相手の動きがいまいちだからかもしれませんし、正直2点目のナムへの寄せは緩すぎたと思う部分などもあって、強い相手にどこまで通用するかはわかりません。
しかし、それでも攻撃のパターン…というか、より具体的に"得点のパターン"が見えてきたことというのは、ここ数年の課題だった部分なだけに、すごく期待してしまうところですね。
今後その形をより強化できるか。
あるいは、もっと別のパターンを増やしていけるのかという部分も含めて、今はすごく楽しみです。