鈴木監督「ストロングポイントを持つこと」

 先週発売されたサカマガに鈴木淳監督のインタビューが掲載されていました。
 今期からジェフに就任された鈴木監督のインタビューはここまであまり出てきていなかった印象ですから、今期のジェフを占う上でも貴重なものになるのではないでしょうか。



 インタビューの冒頭ではサポコミでも同様のことを言われていましたが、「サッカーを楽しむ」という話をされており、楽しめる環境が良い仕事を生むという考えとのこと。
 いろいろとスポーツ界では指導者の体罰・暴力問題も言われていたところですから、考え方としては興味深いところがあるのではないでしょうか。


 しかし、それだけでは甘い部分があるな…とも正直感じていたのですが、それ以降はしっかりと厳しさもある内容となっていました。
 例えばとして、「今期に関しては鈴木淳という物差しでやってもらう」という話をされていたり。
 J2の中では選手層の厚いといわれているジェフで、実際実績で言えば高い選手が多いとは思いますが、そういった選手たちだけを並べていては良いチームにはならないはずで。
 どこかで基準を作って厳しい目で判断しなければ寄せ集めのチームにしかならないと思いますから、チームの方向性を植え付けるうえでも監督がまずどういったサッカーをして、そのためにどういった選手を使っていくかを明確にしてくのは大事なのかなと思います。



 また、昨年のJ2やジェフに関してもしっかりと研究されている印象で、ジェフがパスをつなげれているとはいってもJ2上位チームにはどうだったのか。
 J2ではJ1以上に下位チームが上位チームに対して守備を固めてくることが多く、ゴールを奪えず取りこぼすことが多いことなども指摘していました。
 加えて「J2をリスペクトして、自分たちの弱さを認めること」という話しもされており、このあたりの考え方もジェフに足りない部分だったのではないかと思います。


 これまでの監督は"自分のサッカー"に関してこそ触れることがあったものの、"J2全体の中でのジェフ"に関しては考えを聞けることがあまりなかったのではないでしょうか。
 もちろん"自分のサッカー"を持つことは極めて重要なことではあり、逆にその点においてはまだ鈴木監督は見えてきていない部分もある気はしますが、サッカーと言うのは1チームでやるものではないですから、自分のチームだけを見ていてもやりたいサッカーは成り立たないはずで。
 より視野を広くもってチーム作りをしていかなければいけない気もしますし、そういった意味では頼もしいというか、さすがにそれなりの経験のある監督さんだなと感じました。



 そして、インタビューで一番気になったのは「この形になればゴールを取れるというストロングポイントを持つことは重要」というお話。
 これに関しては何度も話していますけど、J2に降格してからのジェフというのは詳細なゴールまでの形というのをなかなか作れておらず、苦しんできた印象があります。
 江尻監督はアタッキングサードにおいての特別な練習はしないとはっきり言っており、ネットが相手DFを追いかけて相手のミスでボールを奪ってのゴールを理想の形とまで言っていました。
 ドワイト監督も基本的には後方からロングボールをオーロイに蹴って、深井など2列目が拾って仕掛けるというアバウトな展開。
 そして、木山監督も最終的にFWが前を向いて仕掛けさせるという狙いはあったのでしょうけど、得点までの明確なビジョンというのは見えずに終わってしまいました。


 相手ゴール前の形が曖昧なままだから、得点も伸びないし、良いチーム止まりで終わってしまうのかなと。
 ですから、1つでもゴールまでの形を明確に作っておくことは非常に重要であり、ジェフにおいて待望されていた部分ではないでしょうか。
 


 もちろんこれらは机の上の話。
 実際にそれを実現できるかが何よりも大事で、理論だけで成立するものでもないのでしょう。
 しかし、まずはチームにおいて問題点や足りない部分を把握し、その上でチームを作っていくことが大事であって、その問題点も理解せずに進んでしまっては、いくら継続性を重視しても意味はないわけで。
 そういう意味で、鈴木監督にジェフの更なる一歩を期待したいところではないでしょうか。



サッカーマガジン 2013年 2/19号』

サッカーマガジン 2013年 2/19号 [雑誌]