新体制発表会における島田社長、鈴木監督のコメント

 J's GOALに、ジェフの新体制発表会における出席者のコメントが掲載されています。
 島田社長、斉藤TD、鈴木監督をメインに新加入の選手たちのコメントも載っていますね。
 文章量からしてこれだけがすべてではないのかもしれませんが、昨年も新体制発表会のほうはジェフの公式サイトにアップされた内容はいろいろ省かれたものでしたし(ただし、アップは早かったはずですが)、ひとまずはJ's GOALの文章を見ていきたいと思います。


千葉:新加入選手記者会見での出席者コメント(J's GOAL)


 全体的に、無難なお話が多かったようですね。
 昨日の話しの流れにもつながりますが、昨年の反省を踏まえての今年の改善案という流れが、あまりなかったのは少し残念かなと。
 クラブの前進を考える上で、昨年どういった問題があって目標を達成できず、今年どこをかえて、どのように修正していくのか…という話を進んでしていただきたかったところではないかと自分は思うのですが。


 一番気になるのは、やはりここかなぁと。

もちろん我々のチームの成績によってということなのですが、スポンサー収入あるいは入場料収入が厳しい中、何とかやってまいりたいと思っておりますし、強化に関しましても現状が維持できるような予算を確保することを目指しながら、様々な取り組みをやりながらチームの運営を図ってまいりたいと思っております。

 強化費に対して「現状が維持できるような予算」という話をされていまして、実際に戦力は現状維持になっています。
 ですから、ここでのコメントには2つの意味があって、「予算を確保した」ということと、「戦力の現状維持に成功した」ことの両方を言いたいのではないかと推測します。


 昨年も予算に関して、収入は厳しけれど強化費の確保には成功したということを強調していた記憶のある島田社長。
 それ自体は素晴らしいことなのかもわかりませんが、大事なのは何よりもその強化費の運用方法であって。
 大手親会社がバックについているなどJ2では予算的に恵まれているはずのジェフにおいて、例えばとして「戦力の現状維持」のためにコーチの人数などを減らす、あるいは下部組織に予算をまわない(Jリーグ好評の11年度経営情報によると下部組織の予算はJ2の平均以下)…などをして強化費をキープしたのなら、それは本当に「努力した」といえるのかどうか。
 確かに深井や兵働、櫛野などベテランでも人気のある選手が退団となればサポーターからの批判は出てくるかもしれませんけど(例えば以前のジェフが村井や茶野などを売り、その分を予算にしてポジションを空け若手育成を促した頃のように)、ただ無難に「現状維持」というのが賢い運用方法なのかというと、個人的には疑問も感じます。
 もちろん大きなメスを入れるのは不安もあるでしょうけど、いつかはそれをやらなければいけないんじゃないかと近年の"負のスパイラル"を見ていると感じてしまうことがあります。
 まぁ、もしかしたらJ1に昇格さえすれば予算が増えるから、ともかくそこまでは将来性などあまり考えずJ1昇格だけを狙っていきたいという思惑があるのかもしれませんが、果たして昇格したプラス分の強化費だけでJ1が戦えるのかどうか。
 チームのメインは将来性など度外視した短期目標クリアのための選手たちということになるはずですし。


 ジェフが毎年J1昇格をどうしても狙わなければいけない状況にあるのは、親会社などがプレッシャーになっている可能性もあるのかなと思います。
 もしJ1昇格が親会社からのノルマでありその結果として無理をしているのれば、社長はそういったプレッシャーをなんとか自身のところで抑えて、現場を守るべき立場にいるんじゃないのかなぁと思わなくもありません。
 もちろんとても難しいことではあるとは思いますけど、経営の安定が親会社によって保たれているところがある以上は、親会社との交渉・説得は必須となるはずで。
 現時点では予算もJ2では潤沢とは言え、親会社からの予算だけで突っ切れるだけの金額ではないと思いますし(例えば一昨年のFC東京のような戦力ではない)、絶対にJ1昇格をノルマとするのであればそれなりの予算を引き出し、そうでないのなら我慢してもらうことも必要ではないかと。


 もしかしたらそういった交渉事はジェフのような親会社に支えられているクラブの社長にとって、一番とも言える大事なミッションなのではないでしょうか。
 親会社が予算を供給している分、外部からのスポンサー集めの必要性というのは少なくなるはずですし。
 オシム監督のようにスポンサーから「優勝してください」といわれて、「ならほかの監督を雇ってください」と言い返せるような大物監督ならそんな必要もないのかもしれませんけどね…(笑)
 若い社長さんですから交渉事も大変だとは思いますが、ぜひとも頑張っていただきたいところではないかと思うのですが。



 そのほかに気になるところとして、鈴木監督がこのようにコメントしています。

今のインターナショナルなサッカーのトレンドはやはりしっかりボールをつないで攻撃をするということ、それから激しいプレッシャーをかけて前線からボールを奪うということになっていると思います。時代に遅れないよう、しっかりボールをつなぐ、むやみにボールを蹴って長いボールに頼らない。ただ、同じように短いパスだけではダメだし、ある時はロングパスも使わなくてはいけないし、そういうサッカーをやっていきたいと思っています。
(中略)
特にやはりゴール前の崩しの部分ではいろんなバリエーションが必要だと思います。このパターンは形になるというのをある程度作れると、さらに得点が増すのではないかと思っています。

 ちょっとここは長く引用させていただきましたが、鈴木監督の方針を聞く上で大事なところだと思うので。
 前線からのプレスというのは、これまでの鈴木監督のチームでもよく見られた部分ではないかなと思います。
 果たしてシーズンを通して、あるいは90分間を通してプレスをかけ続けられるのかどうか。
 プレスをかけ続けられないとして、その時にどのように守るのか。
 スタミナに課題のあるベテラン選手も少なくないですから、そのあたりへの対応も含めて1つのテーマになるのかもしれません。


 そして、攻撃に関しては「崩し」に関しての言及されています。
 過去3年間の監督というのはその「崩し」の部分に関してなかなか明確な話をしてくれなかったというか、最後は選手頼りなのかなと感じていたところもあったので、ここに関しては鈴木監督の手腕に期待したいところではないかと思います。
 「崩し」に関して聞けたというのは、ちょっとだけ安心できる要素なのかなと。
 もちろんうまく「崩し」の形が作れるかどうかはこれからの課題ということになるわけですけど、まずは「崩し」への必要性を感じ取ることと「崩し」の部分に取り組むことが大事だと思いますし。
 そこをやっていかなければ、個々の能力だけで得点というのは簡単ではないことは、過去のジェフを振り返っても強く感じるところですしね。




 なお、島田社長に関してですが、西部謙司氏がサッカー批評の最新刊にてインタビューを行っています。
 内容に関して詳しくは触れませんが、主に監督やTD交代のいきさつなどになっていますね。


 西部さんは神戸TDの退任決定がすでに夏頃にされていたということに対して、それが選手に悪影響を与えなかったのかということ。
 そして、木山監督の後任に関して、関塚監督が第一候補であったものの2番手、3番手の候補も木山監督よりもベターだったという社長の話しを聞き出していますが、この質問の意図はようするに木山監督解任が先で関塚監督との交渉成立が後になったことに対して、西部氏の中で疑問があったのではないかと推測します(笑)
 もし木山監督解任の決断が先で、極論を言えば誰も引き受け手がいなかった場合、あるいは木山監督よりも優秀とは言えない監督が就任した場合、大きな問題になってしまいますしね。
 それに対して社長は、関塚監督以外の候補でも木山監督よりは上だと考えていたと答えたということになりますが、率直に言ってなかなか苦しい解答だったように感じます。
 リスクマネジメントの面でどうなのかと思いますし、実際第一候補には断られてしまったわけで、鈴木監督の就任も経緯からして「計画通り」というわけではなかったのではないかと。
 結果的に何とか鈴木監督で落ち着いたというだけで、監督交代の一連の流れの中に拙さがあったと言われても、仕方のない部分ではないかなと思わなくもありません。
 関塚監督に断られた直後にされたインタビューということで、若干時間的に鮮度が欠けているのかなとも思わなくもないですけど、気になる方は是非。
サッカー批評(60)
サッカー批評(60) (双葉社スーパームック)


 まだ他の記事は読んでいないのですが、なかなかインパクトのあるパッケージですね。
 明日、明後日の更新はお休み。