ジェフ経営情報'12後編 親会社による補填と「流動比率」

 さて、前回から期間が空いてしまいましたが、経営情報の後編を。
 前回のエントリーはこちらからどうぞ。


 まずは当期損益について。

 こちらもJリーグから発表された項目が増え、「営業外収入」や「特別損失」などが追加されましたが、こちらでは割愛。
 より詳しい項目が知りたい方は、Jリーグの公式サイトのほうでご確認ください



 数字を見ると、過去2年間『営業利益』と『経常利益』において、3億円以上もの大きな赤字を出していましたが、11年度はともに2億円以上の黒字をあげています。
 しかし、『経常利益』から「特別損失」が1億3400万円も引かれ(ドワイト監督解任の費用などでしょうか?)、「特別利益」は200万円しか出ていない上に税金も3500万円引かれ(固定資産税が大きいのではないかと思われますが)『当期純利益』では4600万円しか出ていません。



 続いて、財務状況を確認しておきます。

 こちらも、「貸借対照表」という形で内訳が増えましたが、それはひとまず置いておいて。
 08年度は約1000万円、09年度は約6億3000万円、10年度は3億円とここ数年間、赤字続きだったジェフは『繰越利益剰余金』でのマイナスが増え続け、『純資産』も減少し続けていました。
 大きな赤字を出した09年度に親会社であるJR東日本古河電工が『資本金』と『資本準備金』にそれぞれ3億8000万円、合計7億6000万円分を増資しているため、数字上はわかりにくくなっていますが。
 09年度5億7200万円だった『純資産』が10年度約3億の赤字を出しているため、その分減少し2億6000万円になっているように、このまま赤字が続けば『純資産』がマイナスとなる「債務超過」に陥る可能性がありました。



 ここで気になるのが、来年からJリーグクラブライセンス制度
 施設や下部組織の保有など様々な規定が、必須条件であるA基準から推奨されるC基準まで細かく規定され、先日まで初めての審査が行われ今月末にはクラブに可否の結果が出ることになるそうです。
 その中には財務面の基準もあり、3期以上連続で『当時純利益』が赤字でないこと、「債務超過」でないことなどが掲げられています。


 そこで再び見ていただきたいのが、『営業収入』の面の『広告料収入』。

 例年と比較するため、左から数字を見ていくと昨年の11年度にかなりの数字が上がっていることがわかると思います。
 見た目にもスポンサーがそこまで増えていたようには見えませんし、これは親会社からの補てんがあったとみていいのではないでしょうか。
 昨年から約2億5000万円ほど『広告料収入』が増えたわけですが、『当時純利益』は4600万円でこの分がなければ4期連続の赤字となっていたわけですし、『純資産』も3億5000万円でしたから、ギリギリの数字です。


 もちろん『営業費用』を見ても全体で約4億円の経費を削減しているわけですが(そのうち約3億円は人件費)、結局は内訳こそ違うもののその後に『特別損失』で1億3400万円の損失が出ておりますし、実質的には3億円近くのコストカットしかできておらず。
 しかも、『入場料収入』はJ2に降格してから10年度に1億5000万円、11年には1億円近く前の年から減少していますからね。
 Jリーグからの『分配金』もJ1の頃からは1億円以上減少しておりますし、コストカットの努力はされているのでしょうけど、その分収入が下がってはただの規模縮小なわけで。
 それに加えて、親会社に頼る部分が大きくなっては、クラブ経営としてはよくない傾向にあるといわざるを得ないでしょう。


 一番怖いのは、これだけ親会社にお金を出してもらっておいて、結果が出ない状況が続くと、いつかは予算を削減されるのではないか…という不安ですね。
 「仏の顔も三度まで」ではないですけど、実際今年J1昇格に失敗すれば予算が削られるのではないかという声もありますし、これだけ予算を親会社に依存するような状況が数字上でも明確に出ていれば、親会社の考え次第で簡単にクラブの将来は決まってしまうわけで。
 しっかりと結果を出して親会社を納得させられる材料を生み出すこと、そして、自らも出来る限り収益を出して依存率を下げることが大事だと思います。
 もちろん自らの収益と言うのは『入場料収入』や『分配金』だけでなく、親会社以外からのスポンサーを増やすことも重要になってくると思います。
 一時期はそれも増えていたと思うのですが、前社長が就任したあたりから、クラブの成績低下もあってそれも難しくなっている状況ですし。



 最後に『貸借対照表』を。



 『貸借対照表』は「資産 = 負債 + 資本」という構図になっております。
 『貸借対照表』にも複数の分析方法がありますが、有名なのは「流動比率」で「流動資産 ÷ 流動負債」という計算方法で算出されます。
 『流動資産』というのは「現金」や「売掛金」といった1年以内に現金化される資産で、『流動負債』は「未払金」や「買掛金」など1年間に支払わなければいけない費用です。
 これによって、その企業に支払能力があるのかどうかを求める計算であり、当然高い方が良いということになります。
 ジェフの場合は65.97%。
 理想は200%以上で最低でも100%は欲しいと言われている中で、この数字は非常によろしくないものということになります。
(コメントでご指摘をいただき、一部文章を削除させていただきました。ありがとうございました。)



 現在、ジェフは『繰越利益剰余金』で5億7500万円のマイナスとなっていますので、これが大きく響いているということではないでしょうか。
 この分を解消するためには、1年間の補てんに頼るような形ではなく、健全な経営を積み重ねることが重要だと思います。
 言ってしまえば、サッカーと同じですね。