ジェフ経営情報'12前編 『アカデミー運営経費』はJ2平均以下

 だいぶ遅くなりましたが、今年もJリーグ各クラブの経営情報が公開されました
 昨年までのジェフ経営情報関連のまとめは、こちらで。
 過去の文章なので恥ずかしいところもありますけど、参考にしていただければ(こっそり修正とかはしています)。
 この企画も7年目になるそうで。
 初めから見てくれている人はいらっしゃるんでしょうか…(笑)


 今年も基本的なデータは大きく変わっていませんが、その中でも大きく2つのポイントがあるのではないでしょうか。
 1つはJリーグから発表された経営項目の内訳などが増え、より細かいデータが出るようになったこと。
 そして、もう1つは来年から導入されるクラブライセンス制度への対応です。


 まずは『営業収入』を、それまでのデータと比較するため、これまでの項目に合わせて見ていきましょう。

 今年発表された経営データはこちら。


 今年の発表から『アカデミー関連収入』が増えていますが、昨年までの項目に当てはめるとすると、『広告料収入』、『入場料収入』にあてはまるものではないですから、過去との比較表では『その他』の項目に合算して入れてあります。
 その他のチームのデータを見ても違和感のない数字になりましたので、それで間違いないかと。


 『営業収入』全体では24億2200万円で、10年度から比べて11年度は1億円以上の増加となっていますね。
 J2の平均10億2100万円を大きく上回り、J2ではFC東京の33億3400万円に次ぐ2番目の総収入となっております。
 ちなみにJ1の平均は29億1200万円で、そちらには届かない数字となっています。


 
 続いて、『営業支出』に関して。

 今年のデータはこんな感じ。

 『営業支出』は全体で4億円ほど抑えられていますね。
 経営項目に関しては内訳がより細かくなっており、昨年までのデータとどう照らし合わせていいのか、わかりにくい状況となっております。
 他クラブの数字を見比べても、今年発表の『販売費及び一般管理費』を昨年までの『一般管理費』に当てはめるのは無理がありそうで、昨年までの『事業費』の一部分が『販売費及び一般管理費』に入ってきているのかなと思います。
 そうなってくると、どれだけ11年度の「販売費」がかかったのかわからず、11年度は『事業費』も『一般管理費』も計算できない状況となります。
 より細かな内訳を発表しようという考えはいいとは思うのですけど、昨年までと比較できないのは少し残念な部分もありますね。


 また、『人件費』が3億円も減少しているのも気になるところです。
 こちらに関しては島田社長がサポコミなどで、「移籍金を3年間で償却」しているため昨年度の『人件費』が減少した部分もあるという説明がされています。
 ただ、それでも選手、コーチに対して使える『人件費』が減少していることも認めており、それだけ切迫している状況ともいえるのでしょうが。
(多額の移籍金問題に関しては上記リンク内の議事録では書かれていませんが、現場では社長から昼田前SMの名前もあがっていた記憶があります。しかし、GMではなくTDやSMという役職しか与えていないのは「お金の管理はこちらでやるから」という意味ではないかと思っていましたし、責任転嫁ではないのかなと疑問を感じる部分もあったのですが…。)



 ここまでの新項目内のデータで気になるのは、『アカデミー運営経費』の少なさ。
 ジェフが費やした3500万円はJ1平均の9700万円はおろか、J2平均の4000万円も下回る数字です。
 FC東京が積極的にアカデミーに"投資"して(2億3900万円)平均を上げていることは差し引かなければいけませんが、それでも決して積極的な"投資"をしているとは言えません。
 ちなみに、最も『アカデミー運営経費』に予算をかけているのは横浜FMの2億9500万円。
 物価などの問題もあるとは思いますが、桁が1つ異なる状況となっております。


 11年度にはジェフリザーブズやスクールなどを解散させているジェフですから、12年度予算に関してはより『アカデミー運営経費』が減少する可能性もあります。
 昨年末に就任された島田社長は、昨年までの三木社長に関して「アカデミーに力を注いできた」(基本島田社長は三木社長を評価する声が多かったですね)という話をしていましたが、具体的にどのような意味で努力をされたといえるのでしょうね。
 実績あるユースコーチたちを集めてきたのは神戸TDの人脈だと思う方が自然ですし、確かにユースの一極化は行ったとはいえ、やはりそれなりの予算をかけなければ、なかなか結果にも結び付かないわけで…。


 もちろんコストカットも大事ではありますが、コストカットでより重要なのはどこを残してどこを切るのか、企業として取捨選択をする意思決定のプロセス。
 クラブは育成と結果と両面を掲げることを目標としてはいますが、この数字や昨年の動き、補強動向などを総合的に見ていくと本当に育成に力を入れるつもりなのか、疑問があります。
 かといって『人件費』や『営業収入』などを見ても、「選手を買うクラブ」として戦っていくには中途半端で、それでやっていけるのはJ2レベルでしかないように思います。
 そんな中でどういった未来を目指し、中・長期的な目標を掲げるのか。
 改めてそこのに関しての具体性が求められるのではないでしょうか。


 経営情報、次回は来週になる予定です。