得点力不足も長崎相手に1-0で勝利

 天皇杯ということもあって久々に1人での観戦となったので、何人かの方にお声をかけたのですが見事に振られまして…(笑)
 まぁ、直前に連絡をした私が悪いのですが。
 特に犬の意地のマルコスさんはギリギリまで検討していただいて、一緒に試合を見れればなんて話にもなりました。
 今回は残念ながら時間が合いませんでしたが、もしいつか機会があればそういった企画(?)も面白そうですね。


 さて、天皇杯2回戦ジェフ対V・ファーレン長崎戦。
 ジェフは大幅にメンバーを変えてきたため、必然的にジェフの選手たち1人1人の動きと、来季はJリーグで戦っているかもしれない長崎のサッカーが気になる試合内容となりました。
ショートカウンターから先制
 ジェフはGK岡本が復帰。
 4バックで右から山口慶、大岩、青木良太、渡邊。
 ボランチ佐藤勇人と町田。
 2列目に米倉と深井で、FWに大塚とオーロイといったスタメンでした。
 ベンチにも若い選手が多く、前週の福岡戦のスタメンからは次節出場停止の勇人とベンチの谷澤のみ選出。
 谷澤はベンチに入ったものの、人数合わせ的な選択だったのでしょうか。


 対する長崎は4-3-3というか、4-5-1というかといったフォーメーション。
 リーグでチーム得点王タイの中山悟志やキャプテンの河端和哉はベンチ入りしたものの出場せずに終わるなど、こちらも連戦で若干メンバーを落としてきたところがあったのでしょうか。


 試合は序盤、硬い立ち上がり。
 ボールを保持するのはジェフでしたが、パス回しはボランチより後ろの低いエリア。
 相手4-5-1の「5」のエリアよりも前にパスが出せず、苦しむ展開が続きます。


 長崎のほうも切り替えのスピードや運動量を見ると、選手の動きは重い印象がありました。
 しかし、前半10分頃には158cmのMF山城を中心に1トップの水永、左ウイングの有光がギュッと集まって素早くショートパスをつないで、ジェフの選手たちを引き寄せているいるうちに、右ウイングの松橋章太が裏に飛び出すといった流れる攻撃を作ります。
 その後も右サイドの高い位置から、中央の水永を使ってボールをつなぎ、逆サイドに素早く展開するなど連携した攻撃を作っていきました。



 ボールを繋ぐものの縦への展開が作れなかったジェフですが、前半15分頃から長崎の4-5-1の陣形も緩くなっていき、ジェフのボランチ2人が前を向ける展開が作れるようになっていきます。
 それでもなかなか決定機は作れなかったのですが、前半20分、相手DFラインからのビルドアップからジェフがボールを奪い、オーロイが受けて最後は大塚が先制ゴールをあげます。


 攻撃的なサッカーを展開していた印象のこの日の長崎ですが、2本、3本目で必ずパスミスがでてしまうような状況で、せっかくの連動した動きも活かしきれないことが多くありました。
 攻撃の意図は明確だっただけに、非常に勿体のない印象を受けてしまいました。
 DFラインからのパスミスも多く、得点が動いたシーンも長崎からすればまずいボールの奪われ方だったと思います。
 逆にジェフとしてはこちらの動きから相手を崩すことなく、ショートカウンターで1点が入ったことになります。
■長崎は失速するも追加点ならず
 得点直後にも長崎が流れるような攻撃でチャンスを作ります。
 後方からのくさびのパスに対して、1トップ水永が引いてボールを受けようとする動きを見せておいてスルー。
 後方に走りこんできた選手がそのボールを受けて右サイドから攻撃をし、最後はポスト直撃のシュートまで持ち込みます。
 この攻撃の流れも非常に綺麗で、くさびからスルー、後ろの選手が受けて攻撃というパターンも、その場での思い付きなどではなく、しっかりと練習した上で作られているんじゃないかなぁと感じました。


 その後も長崎は可能性の感じる攻撃を続け、ジェフもカウンター気味にチャンスを作り、一進一退といった展開が続きます。
 1-0まま進んだ後半10分、ジェフはオーロイを下げて伊藤を投入。
 伊藤をボランチにおき、米倉を1トップに、町田をトップ下で起用。
 伊藤がビルドアップし、テクニックのある町田が変化をつける攻撃が見られるようになっていきます。
 まぁ、その分相手ゴール前の人数が、減ってしまった印象もなくはないですが…。



 このあたりから長崎の守備は、苦しくなっていました。
 パスの出所に対して守備に行けず、DFライン後方への対応ができておらず、ジェフは楽に裏を取れるような展開になってしまいます。
 特に深井はどんどん裏をとっていましたね。


 長崎は特に前半序盤、ウイングが中に絞って1トップとともにスペースを消して、相手ボランチから前に出させない守備を形成していましたが、疲労が見えてからは後ろがスカスカになってしまった印象です。
 JFLでは最少失点のチームらしいのですけど、足が止まってからの守備に関しては、どうやって守るのかという部分が見えてこなかったですね。
 DFラインも高いままでしたし(高さはジェフ以上?)、あれでは相手に「どうぞ裏を取ってください」といっているような状況で。
 来季Jリーグに入会して以降は、そこが課題になる可能性もあるのではないかと感じました。
 例えば北九州などは入会当初から攻撃的なチームだったものの、1年目は結果は全く出ませんでした。
 それでも2年目に監督も変えて花が咲いた形ですが、現在はJ2からJFLへの降格制度がありますから、1年目からサバイバルですしね。



 どんどん裏を取れるジェフは深井や米倉などが裏でボールを受ける形が増えていきます。
 しかし、なかなか良い形でのシュートまではもっていけず、得点が奪えない状況が続きます。


 チャンスがあっても奪えないと相手の流れになってしまうもので長崎のチャンスも出きてきますが、そこでゴールまで持っていく力はなく、その後は再びジェフペースに。
 ジェフの攻勢が長く続きますが、得点には結びつかないもどかしい試合展開のまま、結局1-0で終了となりました。
■長崎のスムーズな連動した動き
 この試合は13時キックオフ。
 今年は残暑も厳しく例年ならもう少し涼しい時間帯だったのかもしれませんが、それにしても選手たちにとってはつらい試合だったと思います。
 長崎が良いチームだっただけに、もう少し良い時間帯での試合を見たかった…と思わなくもなかったですが、アマチュアチームにとってはこの時間帯は珍しいものでもないので、逆に良かったのでしょうか。
 長崎は9月5日にもJFLの試合があったそうで、その過密日程のほうがつらかったのかもしれません。



 ジェフのほうは今まで出場しなかった選手や若い選手を試せたこと、そして、主力選手を休ませることができたことが収穫かなと思います。
 特に個人的に気になったのは町田。
 細かなところでの素早く小回りの利いた反転、狭いところを潜り抜けるするするっとしたドリブル、美しいフォームからの正確なミドルパスと、改めてセンスある選手だなと感じました。
 まぁ、町田のそういったセンスに関しては今回、新たに見つかったものでもないのでしょうが。
 途中から入った伊藤は中距離の伸びのあるパスが得意で、この日もサイドにボールを展開していましたが(伊藤からのサイドへのパスが何本か見られて少し安心しました)、町田はより近距離のミドルパスなどが得意でトップ下に入ってからも米倉へのふわっとしたパスや、後方から飛び出した選手へのスルーパスを出していました。
 視野の広さに関しても二人とも違う持ち味があるのかなと。
 より広い距離が見られる伊藤と、近くの細かな動きが感じ取れる町田と。


 ただ、前半序盤に相手のプレスが厳しい展開では前にパスを出せなかったですし、サイズやフィジカルがない分、相手からのプレスがかかっている状況での前の向き方や、守備面での課題は大きいのかもしれません。
 トップ下で活躍できたのも相手の守備が緩くなっていたというところがあったと思いますし、来年J1で戦うということになれば、よりフィジカル面の差をどう補っていくかが重要になってくるのかなと思います。
 早い時間帯で消えてしまった印象もあり、スタミナ面も課題なのかもしれませんね。



 米倉も得点こそなかったものの(もともとそういったセンスのある選手だとは思っていないですし…)持ち味は出していましたし良太なども安定していましたし、個々で見ると決して悪くはない試合だったと思います。
 しかし、試合のほうは1-0でチャンスはあったものの、追加点は奪えずに終わってしまいました。
 ただ、得点力不足は普段のトップチームでも大きな問題となっているわけで、それをいつもはサブ組の選手達が簡単に解決するできるはずもなく…(笑)
 それができていたら、サブ組ではないしチームも苦労していないわけですからね。
 逆に言えば得点力不足は、やはり個々の問題よりもチーム全体としての問題が大きいのだろうなと感じました。


 特に長崎が前線の連動した動きで、スムーズに攻撃のパターンを作っているのを見ると、なおさらそこでの不足分を痛感してしまいました。
 中盤と1トップ、ウイングなどがトライアングルを作って、細かくパスをつないで前を向ける選手を作っているうち、逆サイドの選手がゴール前に走りこんだり。
 ウイングが中に入って相手SBを絞らせ味方SBの前を開けて、そこから縦に仕掛けさせる攻撃をしたり、SBから1トップ、逆サイドへと斜めにパスをつないで行ったり。
 後方でボールを持っている際に、相手ウイングがジェフのSBの裏を斜めに走って、そのまま1トップの後ろへ走りこみ、ジェフDFを混乱させてみたり。


 基本は1トップを軸にしつつ、ウイングが開いたり絞ったりのポジショニングがポイントなのかなと。
 1トップへのフォローが近く必ず中盤やウイングの選手が後ろについておりそこでは細かくパスをつなげるようになっており、サイドは必ず誰かが広くポジショニングして、そちらへはロングパスを展開したり逆にサイドチェンジの展開の起点になったり。
 そのためショート、ショート、ロングの基本のパスワークが作れており、かつ直線的でなくダイアゴナルなパスや選手の動きも見せ。
 それらがしっかりと連動し、素早く行えていたのが印象的でした。


 それらのスムーズな連動した動き、パスの"種類の豊富さ"などは、ジェフのベストメンバー時の動き以上にチーム全体としての攻撃の工夫を感じる部分でした。
 逆にジェフの方の動きは工夫がないというか、狙いが単調でパスの種類1つとっても、選手のオフザボールでの動きを見ても、同じものばかりだなぁと感じてしまいました。
 例えば後半序盤、米倉が右サイドからクロスを上げるシーンでの中の動き。
 オーロイは周りに選手がいて前に飛び込まないし、ニアの選手も直線的に動いて相手に読まれていて、最終的に大外を走りこんできた深井を狙うわけですが、そこもシンプルな走り込みで相手選手を振り切れているわけでもなく…。
 あの工夫のない中の動きでは、いくら高精度のクロスを上げても得点は難しいだろうなぁと思ってしまいました。


 かなり長崎は攻撃をしっかり組織的に作りこんでいた印象で。
 木山監督は水戸時代からもともと選手個々の持ち味をそのまま出すような指導者なのでタイプが違うと言えばそうなのかもしれないですけど、クラブとしてそのあたりをどう考えているのかなぁとは改めて思いました。


 まぁ、どちらにせよ、得点力不足においてはこの試合でも見られたわけで、そこはいつもと変わらず大きな課題なのでしょう。
 もちろんメンバーを大幅に入れ替えて勝利したことは、それだけでも価値あることだと思いますが、長崎が良かった分さらに上を期待したくなるような試合だったようにも思いました。
 個人的には長崎にいいものを見せてもらった試合だったかなと。
 ただ、長崎もそのせっかくの連動性を活かすための技術や能力の面に関しては、まだまだやらなければいけないことがあるのでしょうけどね。