「チームの作り直し」とまではいかないけれど…

 私事ですが、日曜日にすみだ・ストリート・ジャズ・フェスティバルに誘われていってきました。
 東京スカイツリーのあるソラマチから錦糸町駅エリアまで、複数のエリアでバンドや吹奏楽などの演奏や各種イベントなどが行われるイベントです。
 音楽に限らず東京23FCやフウガすみだによるフットサルのエキシビジョンマッチなどスポーツも行われており、盛り沢山なお祭りでした。


 どこに行っても、お客さんの乗りがよく、明るい雰囲気だったのが印象的でした。
 地元でもこういったイベントを…とか思ったりもしたのですけど、田舎ではああいった雰囲気にはなかなかならないかなぁとか考えてしまったりして…(笑)
 やっぱりお客さんの乗りは大事ですね。
 サッカーもそうなんでしょう。
 うまく選手を乗せられるか、かといってプロのスポーツですし選手への厳しさも忘れてはいけない…。
 そこの線引きが難しいところではあるのでしょうけどね。
■守り方を変えてきたジェフ
 ジェフは移籍直後の谷澤がスタメンで出場。
 右サイドに谷澤、左サイドに田中を起用して、トップ下の位置に兵働が入りました。


 谷澤を起用して攻撃的に行くのか?と思っていたのですけど、むしろ気持ちとしては守備をきっちりして試合に入っていこうという考えだったんじゃないかと思います。
 サイドハーフの選手がSBの前のスペースを消し、4×4で等間隔に守るイメージ。
 前回、右SBで起用された高橋が中に絞って、そこから出ていく形になってしまったことで、サイドでの対応が遅れ、かつ孤立した状況で対応しなければならなかったので、ゾーンの意識を強める守備でそこを修正していこうということだったのではないかと思います。
 ここにきて、「守り方を変えてきた」と言っていい変更だったのではないでしょうか。



 ただ、守備から試合に入った分…ということではないのでしょうけど、攻撃は流れに乗っていけず。
 それでも、前半19分。
 山口智からのロングパスから藤田が裏に走っていって、難しいボールを足元で合わせ、相手DFを背負いながらも先制ゴールをあげます。
 2人の個人技が見事に決まったゴールでした。


 しかし、それ得点以降も、ジェフの動きはあまり変わらず。
 ビルドアップのテンポが上がらず、イージーなパスミスも多く、試合の流れを引き寄せられません。

 
 また、守備の方も4×4で後ろのスペースを消す形をとってきましたが、その分前のスペースが空き、相手DFラインへの守備に行くことができない状況が続きます。
 相手にプレスをかけていけないのに、ラインを高く保とうとするので、DFラインの裏を狙われることが多く。
 加えて、中央に絞るよりもサイドも含めて等間隔に守る守備に変えてきましたので、CBが相手FWと一対一になることが多く、一発で裏を取られそうな危なっかしい展開が出来てしまいます。


 そして、前半39分。
 相手右SBがフリーでFWに向けてロングパスを出し、鶴見がジェフCBと競り合い、そのまま飛び出していってゴール。
 ジェフのCBとGKがうまく連携を取れれば…とは思いましたけど、流れとしては何度も同じような展開で危ないシーンは作られていましたし、失点してもおかしくない状況ではあったように感じていました。
■足が止まって、ロスタイムに失点
 1-1で折り返し、後半スタート。
 初めに流れをつかんでいったのは、鳥取だったと思います。
 鳥取の攻撃はシンプルに、カウンターの時には中央を縦に速く、遅攻の時にはパスをつないで…といった感じだったと思うのですが、ジェフのほうのプレスが効かず、かといって後方のスペースも消しきれず、ボールを持たれてしまう時間が多かった印象です。


 その後、ジェフのほうも盛り返し、何度かチャンスを作るものの決めきれず…。
 後半26分には深井、米倉を投入。
 深井のスピードは効いていたと思うのですが、チーム全体がスピードはあるもののタメはないというか、急はあるけれども緩がない状況が続き、"落ち着いた崩し"みたいなところが作れなかったですね。



 徐々に両チーム運動量が落ちていきましたが、特にジェフのほうは中盤の疲労度が激しかった印象で、守備時の寄せが甘くなっていきます。
 そんな状況で勇人に変えてロボを投入。
 「もう1点取りに行こう」という姿勢の表れではあったのだと思いますが、守備のできる選手の人数が減ってしまいますし、そこまで押せ押せの状況でもなかったですからかなりリスキーな選手交代だったと思います。
 この交代で選手の意識も攻撃が先行してしまい、守備の気持ちがおろそかになってしまったところもあったのかな…と。
 まぁ、選手に関しては、それではいけないのでしょうけどね。



 そして、後半ロスタイム、ジェフの右サイドからクロスをあげられて失点。
 大岩がクロッサーにまったく体を寄せられなかったのも残念でしたが、その前に中盤で3人にがかこんでいたのにもかかわらず、そこで潰しきれなかったのも失敗でした。


 このゴールが決勝点となって、ジェフの敗戦となってしまいました。
 ジェフから鳥取にレンタル移籍している久保、藤田といったレギュラーが、契約の関係で試合に出場させることができなかった状況の鳥取に敗れてしまうという残念な結果でした。
 まぁ、なんというか相手の出来の問題はあまり関係なく、自分たちがいいサッカーをできるかどうかのほうが今のジェフには重要な気もしますが。


 最後は、ジェフのほうが運動量が落ちてしまったのかな?と思います。
 ベテランが多いせいなのか、アウェイなのか、コンディショニングがうまくいっていないのか…。
 時間がない状況ではありますけど、しっかりと原因を追究して、少しずつでもこの問題も解消していってほしいところです。
■ともかく1つ不動の"型"を
 ジェフの今回のスタメンを改めて考えてみると、右SBに大岩が復帰し、ボランチにはダブル佐藤、右に谷澤、左に田中というメンバーでした。
 前回に続いて深井は途中出場。
 ここ数試合、いよいよ点が取れないチーム状況となって、一発のある深井を外すというのは意外な気もしますけど、ようはリトリート時の守備を重視した結果ということなのかなと。


 前節サイドからピンチを作られたジェフですから、この試合では右サイドに谷澤と大岩を置いて、左SHには田中を置いて、守備時のポジショニングをしっかりと意識付けるということだったんじゃないでしょうか。
 深井も要所要所では守備を頑張る選手ではありますけど、ポジショニングが曖昧というか、深追いし過ぎて穴を作ったり、守備時にいなくなってしまうこともありますし。
 兵働も守備においては運動量不足で、スピードの問題もありますから、谷澤・田中を両サイドにした方がスペースを消せるという判断だったのではないでしょうか。
 ボランチもダブル佐藤のほうが守備は計算できる。
 そう考えると、このチームの軸と考えられている兵働は前で使うしかなく、結果深井のポジションはなくなる…と。



 ただ、その狙いは少なくとも今回に関しては失敗に終わります。
 4×4で等間隔に守る分、相手DFラインがフリーになりがちに…。
 特に相手SBがフリーになってしまいチャンスを作られてしまったわけですが、これは今期開幕序盤にも見られた課題で、その後きっちりとした4×4ではなくある程度ポジションはラフに、人に付く守備に変えたことで、その問題は解消されていた印象もあります(その分、中から外に展開されると弱くなってしまっていたわけですが)。
 しかし、4×4でブロックを作る守備に戻したことによって、再びその問題が出てしまった…ということになるのかなと。
 4×4で守るのであればこだわりは捨てて、ある程度ラインを下げるなどしないと厳しいのではないかなとも思います。


 また、サイドに人数を割き、等間隔に守る分、CBのエリアで簡単に一対一を作られてしまう…。
 ここまでCBやGKが褒められることが多かったジェフの守備ですけど、中央で跳ね返せていたのはCBエリアに寄りがちなSBやボランチなど周りのフォローもあったから…ではないかなぁと思います。
 もちろん山口や竹内は頑張ってはいますけど、それだけが「守備時のゴール前での強さ」ではなかったということではないでしょうか。



 そして、攻撃においてもこれまで兵働などがサイドハーフから中に入ってくることで、中盤中央の人数が増しそこからリズムを作る…という"大枠の型"(ディテールはともかく)だったと思うのですけど、兵働をトップ下に置いた今回の4-4-1-1となったことでそういった"型"もなくなってしまいます。
 逆に兵働はスペースのない高い位置で起用されたことで、チャンスメイクも難しくなった印象です。
 この試合が守備から入ってカウンターへの意識をより高めていったところがあるのであれば、潰されることが多くても兵働の一発に期待した…ということであったのかもしれませんが。
 いつもより高い位置で、兵働の一発が出ればその分チャンスになる可能性も高まるでしょうし…。


 しかし、全体的に見れば、この4-4-1-1での型というのは攻撃でも守備でもまだできておらず、新しい戦い方に変えて諸問題は潰しきれていない感じの試合だったように思います。
 車で言えばロールアウト、音楽で言えば新曲の練習直後というか…(笑)



 「4×4での守備」も「兵働のトップ下」も今までにやったことがないシステムではないですし、『チームの作り直し』とまではいかないですけど、どちらもうまくいかなかったからこそ、ここまで定着してこなかったわけで。
 もちろんこの4-4-1-1にも可能性はあるとは思いますが、少なくとも現時点では成熟してはおらず、この時期にシステムを作り直さなければいけないという時点で、チーム作りの遅れを感じざるを得ないところがあります。
 ともかく1つ不動の"型"を作りたいところですよね。


 正直この試合を見た感想を言えば、かなり厳しい。
 その厳しさを受け止めた上で、この劣勢を跳ね返せることができるか。
 選手や監督だけでなく、クラブ全体の強さが今こそ求められる時なのかもしれません。