FC東京MF谷澤の獲得を発表

谷澤達也選手の加入について(ジェフ公式サイト)


 まさかの復帰。
 完全移籍での加入ということになるんですね。
 "谷澤という名前"に関しては驚きではありますが、"谷澤という選手"に関しては自分でも意外なほど納得というか。
 その手があったか、というような印象です。


 補強ポイントに関して考えると、CBなどは層が薄いですけど現時点で6位という厳しい状況に陥ってしまったことを考えれば、ベンチの層を厚くしているような余裕はなく、山口智と竹内に頑張ってもらうしかないと思います。
 これがシーズン前などなら違ってきますが、現在必要なのはともかく昇格のための緊急補強ということになるのでしょうから、即効性が何よりも大事となってくるのでしょうし。
 他にもDFラインなら左SBにアップダウンできる選手を…と思ったりもしますが、どのチームを見ても不足がちな即戦力な左SBをシーズン中に補強するのは難しいでしょうし。
 ボランチも同じでチームの肝となるポジションですから、補強するのであればやはり開幕前であったと思います。


 そうなってくると、前目の選手というのは付け外しもできるし補強もしやすい。
 そして、何よりも谷澤というのは現状の戦術を考えれば、非常によいポイントではないでしょうか。



 現状の戦術の大枠というのは、テンポ良くパスをつないでいって、FWが前に走りこんで点を取るサッカーだと思います。
 だから、そのテンポを崩すようなタメの作れるレジナルドは合わなかったし、足元の技術には課題もあると思われる久保も放出したということではないかと。
 木山監督はそのあたりの選手起用に関して、悪く言えば融通が効かない、よく言えば頑固なタイプなのではないかと感じます。
 タメからのパスが出せる村井を放出してシンプルなパサーである兵働を獲得したのも、実際にはそこまでのメリットはなかったようには思いますが(その分諸経費はかかるでしょうし)、監督の好みに合わせたという点においては意味があったのでしょう。


 しかし、シンプルすぎる攻撃は相手への脅威にはならないことも多く、結局のところ個人技に頼るところの強い攻撃になっている印象があります。
 その中で谷澤というのは、そこまでテンポの良いパスワークを邪魔することなく、ある程度の変化をつけること出来る選手という点で期待されているのかなと思います。
 今から新外国人選手を補強したとしても、外れの場合のリスクは大きいですしね。
 だから谷澤なのだろうし、ロボなのでしょう。
 これまでの補強動向を見ていても今年は(も?)結果を求めるとしなのでしょうし…。



 正直G大阪などからもオファーがあったミリガンやセリエAから獲得したレジナルドをモノにしきれなかった部分を考えても、現状で新たに外国人選手を補強して成功するかどうかに関してはすごく疑問です。
 木山監督はシンプルなパスサッカーを期待するが故に、外国人選手の起用をあまり好まない傾向にあるように感じています。
 これから未知の外国人選手を補強するということになると、その選手が日本のサッカーに合うかどうかだけでなく、木山監督の好みに合うかどうかという問題も出てきてしまうわけで。
 今までの起用法などを見たうえで、成功する確率を考えると、かなりのギャンブルだと思います。



 全体的に見れば、強化部としてはしっかりと仕事をしている方だと自分は思います。
 木山監督の要望通り山口智、兵働といったJ1クラスの選手を補強しましたし、武田や藤田なども起用法からすれば監督の意向にあった補強だったのでしょうし。
 田中、健太郎などもいいプレーができていた時期はあったし、シーズン中の補強も意図は見えなくもない。


 木山監督は「点を取れる外国人FW」を要望したということですけど、そもそも癖のあるプレーが好きではないのであろう木山監督に合う「点の取れる外国人FW」となると、それはかなり難しい注文で。
 加えてJリーグ全体を見ても、以前ほど「点を取れる外国人FW」の補強というのは簡単ではなくなっている印象があります。
 J2の得点ランキングでも1位こそダヴィですが、それ以降となると5ゴールの28位サビアまで外国人選手のなし。
 J1の得点ランクも3位に10ゴールでウィルソンがいますが、トップ10で他に入っている外国人はマルシオ・リシャルデスレアンドロ・ドミンゲスといった中盤の選手であり、「点の取れる外国人FW」ではないですしね。
 もちろん監督の理想通りの選手が集められるのが理想ではあるのでしょうけど、お金というのは無限にあるものでもないわけで、むしろ今出場している日本人選手たちの顔ぶれを見れば、十分すぎるほど監督の意向に沿ったメンバーだと思います。
 戦力的にも監督の要望に沿った選手がそろっているという点でも、他チーム監督が見ればうらやむような状況なんじゃないでしょうか。



 話を戻して、谷澤獲得に関してはジェフ所属だったという関係性もなくはないのかもしれませんが、その分ジェフになじむのは早いでしょうし(彼の性格を考えても)、緊急補強という意味では悪くないものではないかと思います。
 ただ、気になるのは2つ。
 1つは一度はうまくいかなかった時期の選手を再び補強して、クラブとしての成長につながるのか…。
 現在も得点は深井頼りになりつつあるように思いますが、深井と谷澤のコンビは昇格に失敗した2年前にも所属していた選手であって。
 谷澤があれからの成長が出来れいればいいのでしょうが、むら気があるのは相変わらずかなぁと。
 そこがなければ本当に天才なんでしょうけどね。


 もう1つはチームの問題。
 これまで米倉のFW起用に始まり、兵働のトップ下やボランチ、深井の左サイドや田中の右サイドなど、選手起用において様々なパターンがありました。
 例えば現在の兵働左サイド起用だったら兵働が中央に絞って中盤の選手としてプレーしたり、深井や田中がサイドで起用された場合は開いてプレーすることが多かったりと、それぞれに動きの違いはあったとは思います。
 ただ、そういった変化が一本の成長ベクトルの中において行われているようには、なかなか見えてこない…。
 要するに選手起用の変化が場当たり的なもので、その時その時に発生した問題を解決するために行っているようにしか見えず、チーム作りにおいての積み重ねていく中で変えてきているようには、あまり見えてこない印象があります。
 先日の高橋の起用も高橋自身には期待しましたけど、チームとしての大きな変化はないのだろうなぁと試合前から感じていました。
 ロボも今のところそんな感じですしね。


 結局のところ、どういった攻撃で相手から点を奪うのかが出来てこない限りは、選手が変わったとしてもあまり大きな変化は期待できないのかなぁと思う部分があります。
 先日の町田戦でも、兵働が高い位置で前を向いたにもかかわらず、動き出したのはFW1人だったことがありましたが、そういった状況では結局個人の打開力に頼るサッカーが続き、いくら補強をしても戦力の足し算にはなったとしても、掛け算にはなっていかないのかなと。
 あるいは、その後兵働はサイドチェンジを選択しましたけど、サイドの受ける選手も出足も遅く、あれではいくら良いパサーがボランチにいても素早い展開は期待できないように思います。



 もちろん選手の質の問題もありますけど、予算制限もある中ですから補強だけに頼っているようでは、大きな伸びにはならないように思います。
 遅攻においてシンプルなパスサッカーを目指すというのであれば、それを追及すべきだと思いますが、そうでないのであればやり方も考えなければいけないのかなとも思います。
 もちろんカウンターに関しては有効な攻撃を作れる場面もありますが、カウンター対策というのはここ数年欧州などでも重視されているところがあるように思いますし、カウンターだけでは得点は難しいのでしょうし。


 戦術的には谷澤に期待されるところも大きいとは思いますが、チーム作りを考えると谷澤だけに期待をかけるわけにもいかないところがあると思います。
 シーズン終盤戦に向けて、ここ数年伸び悩みを見せているジェフというチームが変わることができるかどうか。
 ここからが、頑張りどころですね。