日本代表、韓国代表に敗れて4位で終了

 ロンドンオリンピック男子サッカー競技日本代表対韓国代表戦。
 試合内容に関しては、いつも見る日韓戦というか。
 日本が韓国に負けるパターンになってしまいました。


 試合序盤の日本は韓国がロングボールをつなぐ展開に合わせてしまったのか、ピッチの状態が酷かったためか、パスをつなげない時間帯になってしまいます。
 ピッチの状態の悪さに苦戦する…という状況を見て、北京オリンピックを思い出してしまいました。


 韓国のほうはロングボールでFWを走らせ、CBとボランチは前に出てこない戦術をとってきました。
 日本へのカウンター対策ということなのかもしれませんが、これにより今大会、攻撃はカウンターしかない状況となっている日本は、かなり苦労しました。
 相手DFの裏を取ることができず、永井のスピードを活かせず苦労する試合展開となってしまいました。


 永井自身はある程度怪我も癒えたのかメキシコ戦より動けていましたが、チーム全体では疲労もあって足取りが重い印象でした。
 交代選手が比較的動けていたのも、蓄積した疲労が少ないという面が大きかったと思います。
 しかし、疲労に関しては韓国のほうも同じで、少しずつ守備のほころびが出てきます。
 中盤の守備が空くシーンも出始め、日本は後方からの楔のパスが通った展開から、高い位置までボールを運べるケースが何度か作れていました。


 けれども、そこからなかなか中央には入っていけない。
 引いた韓国のCBは高さもあり、永井に放り込んでも勝ち目は薄く。
 2列目の選手もゴール前に飛び込んでも勝てないと判断したのか、スタミナの問題もあってか、なかなかゴール前に選手が入ってこないケースが増えてしまいました。
 結局、韓国の堅い守備から逃れるように、サイドの狭い位置までボールを運べますが、そこから先の崩す展開というのチームとして作れておらず、選手たちが迷っている印象でした。
 カウンターと個人技以外がないチームというのが、改めて浮き彫りになってしまったかなと。


 そして、前半38分。
 中盤の位置でボールを奪われると、パク・チュヨンが個人技で持ち込みゴール。
 このシーン、2人が対応したわけですけど、もう少しどちらかが強くあたりに行っていれば…と感じました。
 続いて後半13分にもドリブルシュートをク・ジャチョルに決められ、かなり厳しい展開に。


 その後、日本は山村、杉本、宇佐美を投入。
 山村、杉本は空中戦要員で、宇佐美は引いた相手に対して攻撃の変化をつける役割ということでしょうか。
 交代自体は妥当だった思うのですけど、実際には杉本はここまで空中戦要員として機能していなかったですし、宇佐美も乗り切れていなかったですから、効果的な作用は起きず。
 試合終盤の吉田のパワープレーのほうが、可能性を感じました。
 このあたりの交代カードが活かせない問題は、チームとしての経験値の不足を露呈した部分があったように思います。


 結局、試合は0-2のまま試合終了。
 韓国とは今後も戦うはずですし、せめて1点でも取れれば今後に向けて明るい材料になるのではないかと思ったのですが、もう一歩足らなかったですね…。



 今大会全体を振り返ると、大会前の状況を考えれば、チームはしっかり頑張ってくれたと思います。
 成功のポイントは、「現実を見て戦った」ところになるのでしょうか。
 変に高望みをせず、無難なチームに戻したことによって、一定のチームに慣れた。
 前には永井や大津などスピードがあり、カウンターで点を取れるFWを起用し、後方には吉田、徳永など守れるOAを選んだことで、やることがはっきりとしました。


 川崎でも同じような戦い方をしていた関塚監督にとっても身の丈に合ったサッカーとなり、違和感なくやれたのではないでしょうか。
 決して特別な仕事をしたという印象はないですし、最後までスタメン11人以外の選手がフィットさせられなかったことが大きな痛手とはなりましたが、結果に関しては十分なものを残してくれました。


 ただ、これ以上を望むのであれば、無難なだけではダメでしょうけどね。
 チーム作りにおいても戦術的な意味でも、もっとチームに厚みがなければ、これ以上の成果は難しい。
 それがはっきりとしたメキシコ戦、韓国戦だったように思います。


 これに憲剛か遠藤のような選手がいれば…とは思いましたけど、そこは協会とクラブの問題。
 もっと言えば日本サッカー全体として、どう五輪をとらえるのか?という問題もあります。
 徴兵優遇もある韓国代表は本気で来ていた印象がありますが、日本は期間中にJリーグなども開催しており、そこまでの力は入れてこなかったわけで。



 ベーシックな日本人にあった(?)カウンターサッカーをして、それなりの結果は残せた今k大家。
 そこにはやはり日本人選手たちの成長というものがあるのではないでしょうか。
 南アフリカW杯で大久保や松井が通用したことを考えても、日本人選手のドリブルや切り替えの早さからのカウンターは十分通用することがわかった。
 そして、組織的な連携をベースとした守備に関しても、ある程度やれることが今大会でも改めて確認することができたと思います。
 こういった戦い方が日本のサッカーの方向性となってくるのかな?とも感じました。


 しかし、ドリブルや組織的な守備など、一部一部だけではサッカーは成り立つものではないはずで。
 チーム全体としての力や局面で戦うという姿勢に関しては、個々の選手たちがこの大舞台でも動じないメンタルを持ち合わせていたことが大きかったのではないでしょうか。
 自分は育成年代の関してはさほど詳しくはないですけど、各クラブのユースやユース年代の代表が積極的に海外の大会に出場していることが影響しているのか、フル代表が南アフリカW杯で活躍できたことが日本人選手全体の自信につながっているのか、自分たちや仲間が欧州のクラブで成功していることが後押ししているのか。
 あるいはサッカー以外の社会的な変化なのか、様々なものが総合的に絡み合って影響を与えているのかもしれませんけど、これまでどことなく頼りなく見えたこの世代のメンタルがいい意味で変わってきているのかな?という印象は受けました。


 まぁ、今後は世界レベルよりもACLも含めて、日本を警戒してくるアジアレベルでどう戦うかのほうが、意外と重要になってくるのかもしれませんが…。
 韓国代表もJリーガーが多く、世界と戦っているというよりも身近な選手たちと試合をしている印象で、それ故に「日本(アジア)と世界とのギャップ」を出して、そこで勝てるような展開にはならなかったですし。



 ともかく、"普通の日本のサッカー"をやってここまでの試合ができたのだから、世界はもはやビビるものではない。
 世界は近いものであるというのは、改めて感じた部分でした。
 けれども、近いものだからこそ、世界と自分たちを照らし合わせて、自分たちが通用するところや、さらに必要なものもしっかりと見つめていかなければいけないのだろうなぁと思います。
 決勝まで行けなかったということはまだやらなければいけない部分もあったはずですし。


 今回の五輪代表の活躍は予想以上のものだっただけに、個人的にもいろいろな刺激をもらうことができました。
 新たな発見はもちろん、再確認という意味も含めて。
 最後の2試合は悔しい思いも残りましたけど、十分頑張ってくれたと思います。
 ありがとうございました。