4-2-3-1の新システム

 2010年以来の福岡との対戦ということで、なんとなく懐かしい感じもしました。
 ジェフからすると見事にJ2に定着してしまったなぁ…とも思ってしまいましたが(笑)
 あの年は福岡に苦汁を飲まされたわけで、リベンジマッチということになります。
■縦関係にして兵働をマーク
 ジェフは怪我の渡邊に代わって武田がスタメンに復帰し、あとは前節横浜FC戦と同じメンバーでしたね。
 試合序盤はキックオフからスパートをかけてきたジェフペース。
 前節同様、トップ下の兵働のところを使ってパスをつないでいきます。


 この試合では相手のDFラインが高めということもあって、藤田が裏を狙うシーンも多かったですね。
 そこで一発を狙うという意味合いもあったのかもしれませんけど、裏を狙うことでDFラインを下げようという狙いもあったのかなぁとも思います。
 その分、落ち着きはなかったかもしれませんけど、そういう戦略ならばそれはそれで間違いとは言い切れないのかなとも。



 しかし、序盤の猛攻を耐えた福岡が、兵働のところを抑えるためにダブルボランチを縦関係にして、FWが一枚下がってきてボランチをケアしてきたあたりから守備が落ち着いてきます。
 これもあって、ジェフの方はなかなかスムーズなパスワークというのができなくなっていきました。
 中央でもポイントを作れないし、サイドはドリブラー2人ですからビルドアップの面では課題があり、SBが上がる時間も作れない状況でした。


 前半30分。
 勇人、兵働、深井などが素早く中盤でパスを回して相手をタメ、健太郎がフリーでボールを持ったところで、前線に走り直していた深井にスルーパス
 そこから深井がクロスを上げて、チャンスを作るシーンが作れました。
 このように細かなパスを複数の選手が繋いで行って、トップ下だけでなくボランチからボールが展開できるようになれば、相手も潰しにくいし良い形が作れますよね。
 健太郎は後半にも逆サイドにロングボールを展開していましたし、回数は少ないですけど攻撃面でも少しずつ良さが出てきた気がします。
 守備でも危険なところではマークを外さない粘り強さを感じます。
 ただ、もう少し局面で相手を潰せるようになればいいのでしょうけど…。


 ジェフ全体の守備では、序盤からかなり高い位置からプレッシャーをかけていきました。
 相手CB堤が出場停止で、高卒2年目の畑本がスタメン出場したというところも大きかったのでしょうか。
 畑本自身はよく戦えていたと思いますけど、連携面でもう1つ周りと合わないシーンもありましたし。
 福岡は前半、CBから細かくつなぐサッカーを狙ってきましたけど、ジェフがハイプレッシャーをかけてきたこともあって、そこでボールを失うことが多かったですね。
 ジェフとすればそこからカウンターを狙うチャンスでもあったわけですけど、そこの質がもう1つ…といった感じだったと思います。
■両者無得点でスコアレスドロー
 後半から福岡は無理にCBから細かくつなぐのは止めて、長めのボールも使うようになっていきました。
 特に狙われたのが深井の後ろのエリア。
 ここのスペースが空くことがあって前半にもそこからクロスを上げられてしまいましたし、後半の福岡はそこからリズムを作ろうというのが1つの狙いだったのかなと思います。
 ジェフの最終ラインはしっかりラインを守ろう狙いがあって、武田は前に行きにくいはずで、そこは深井がスペースを消す仕事もしなければいけないと思うのですが…。


 後半が進むにつれ、徐々にジェフの方は運動量が落ちていき、全体が間延びしていった印象でした。
 それと共に攻守が目まぐるしく変わる、激しい試合となっていきました。


 後半21分にはジェフのクリアボールを成岡が拾い、勇人と健太郎が囲いますがそこをこじ開けられ、山口も簡単に交わされてシュートまで持ち込まれます。
 岡本が素晴らしい反応ではじき出しますが、かなり危険なシーンでした。
 このシーンで気になるのはクリアした際にDFを上げきれなかったことと、ボランチ2人が守備に行っているにもかかわらずその間を抜かれていること。
 中盤で囲む意識の高い今期のジェフの守り方ですけど、複数人で守備にいく分どちらがアタックするのかが不明瞭になり、その間を抜かれてしまうシーンが目立っています。
 この辺りははっきりと声をかけるなり約束事を統一するなりして、アタック&カバーの形を作っていかなければいけないんじゃないでしょうか。



 ジェフは後半27分。
 前線から頑張って走り続けていた藤田に代わって久保を投入。
 久保と深井の2トップにして、兵働を左サイドで起用しました。
 上記の守備の問題もあったのかもしれませんし(兵働も守備が得意なわけではないでしょうが)、深井はウイングでサイド寄りに追いやられて狭い位置でのプレーを要求されていたことで、攻撃の持ち味が出せなかった印象も強いですね。
 相変わらず福岡のラインは高く維持されていましたから、深井を中央において裏を狙わせようという意図もあったのかもしれません。
 しかし、なかなか中に入った深井も良さを出しきれない印象でした。


 後半36分。
 勇人が負傷交代して、伊藤が投入されます。
 そのまま伊藤がサイドに入るのかな?と思ったのですが、兵働がボランチに移って伊藤は左サイドに。
 やはり「兵働・ボランチ」という1つの考えが、木山監督の中にあるんでしょうか。
 まぁ、兵働は複数の大事なポジションをやらせているということからも、かなり信頼しているんでしょうね。
 もう少し体を張って、キープしてほしいと思うところもありますが…。


 最後はジェフの攻める時間もありましたけど、試合の方はそのままスコアレスドローに終わりました。
■強みを作れるかどうか
 試合内容からすれば、順当な結果だったんじゃないかなぁと個人的には思います。
 横浜FC戦では快勝してしまいましたけど、同じくらいの立ち位置(J1昇格を目指すレベルのチーム)と戦えば、現時点ではこんなものかなぁと。
 アウェイだからと言って、そこまで動きは悪くなかったと思いますし。


 福岡の攻撃の基本はCBやボランチから細かくパスをつないで行って、サイドで攻撃をしてFWが裏を狙う。
 守備ではDFラインを高くしてコンパクトに守る…ということで、ジェフと似ているサッカーをしていた印象でした。
 しかし、両チーム共にまだまだチームとしての強みというか、攻守において決め手となる部分までは作りきれていないと。
 中盤にはうまい選手もいるし、前を狙える速い選手もいるし、悪いチームではないけれども、まだこれといった特徴までは作りきれていないのかなぁと思います。
 そういう意味でもスコアレスドローは納得だと思います。


 ある程度の戦力があって日本人監督となればここまではチームを作りきれるのでしょうけど、ここから先の強みを作るのが難しいんだろうなぁとも感じます。
 逆に言えばまだまだ成長段階ともいえるのでしょうし、楽しみでもあるわけですけど、だからと言って成長が約束されているわけでもないですから、どんどん前を向いて頑張ってほしいところだと思います。
 土曜日の横浜FCのようなチームに勝ったくらいで、満足していてはダメということですね(笑)
 福岡戦の内容に関しては、前節よりミスは多かったですしうまくいかなった部分もありますけど、たぶんそれは相手の違いであって前節に比べてジェフが悪かったというわけではないと私は思いますし。



 4-2-3-1の新システムに関しては、やはりウイングにアタッカーを置くとSBが上がりにくいという問題は出てしまいますね。
 両ウイングともどんどん前に出ていく選手で、全体的な距離感の問題もあるんじゃないかなと思います。
 伊藤、兵働を両SHにした時と状況が変わるのは当たり前で、その中でどこでパスをつないでいくのか?というのが重要になるのではないかと。
 トップ下というマークの厳しいポジションから兵働がうまく絡めればいいのですけど、強い相手となればそううまくはいかないわけで(だからこそ兵働がもう少し体を張れれば…とも思うのですが)、このシステムを続けていくのならボランチからの展開も重要になってくるのかなと思います。


 両SBに関しては深井などが守備でスペースを消せず攻撃参加も難しい分、守備力も問われることになりそうです。
 ただ、その話の流れだとSBが絡むようなサイドで厚みのある攻撃は期待できなくなるわけで、それが木山監督の目指すサッカーだったっけ?という疑問も出てきそうですが。
 京都に敗れてドリブラーの必要性を感じた部分もあるのかもしれませんけど、そこに頼るような方向にはあまり行ってほしくないですね。
 武田、大岩はまだ攻守にプロのスピード感に、追いつけていないところがある印象です。
 しかし、武田を使うのなら期待すべきは左足でのクロスであって、その前に深井というのはチグハグな気もします。
 開幕戦では伊藤の守備力や周りを活かす動きで、武田がプレーしやすかったという部分もあったと思いますし。
 もっとオールラウンドなSBなら今のままでもよいのでしょうけど、そういった選手は補強できなかったわけで…。


 田中に関しては守備に戻ろうという意識は感じることが多く守備はうまくはないかもしれませんけど、意外と深井よりも真面目なタイプなのかなぁとも思います(笑)
 体つきもしっかりしていて空中戦でも期待できそうですし、あとはサイドを駆け上がってからのクロスの精度などにも期待したいところです。
 もしかしたらどちらかのサイドにはパサーを置いたほうがいいという流れになるかもしれませんし、そうなったときは深井とポジション争いをする可能性もあるかもしれませんね。
 まぁ、深井には戦術など関係のない一発のシュートがありますから、監督としては置いておきたい選手なのかもしれませんけど。



 新システムに関しては、まだまだバランスなどの面で考えなければいけないところがあるのかなぁと思います。
 これからレジナルドが入ってきてどうなるのか…という問題もありますしね。
 やはり2列目に深井、レジナルド、田中と並べてしまってはビルドアップで支障が出るのではないかと改めて感じましたし(レジナルドの能力次第ではありますが)、できれば高い位置にパサータイプの選手も置きたいはずですしね。


 福岡との引き分けは悔しい思いもありましたけど、”サッカーを見る”という観点では横浜FC戦よりまともだったと思いますので、課題が見つかったという意味でも個人的には楽しめた試合でした。
 自分たちの現状を把握しなければ、前に進むのも難しいと思いますしね。