ジェフのサッカーと柏のメンタリティ
今年のちばぎんカップは2月26日に実施。
来週には早くもJ2の開幕戦が開催されます。
いつもはちばぎんカップが行われてから1,2週間ほどの空きがあってJリーグが開幕しますが、今年のJ2はゼロックススーパーカップの翌日にJ2の開幕戦を行うこともあって、例年以上に開幕が迫っています。
その分よりJ2の開幕をリアルに感じるというか、少なくともジェフは本番モードだったようにも思うし、開幕から上位候補との連戦になることを考えても、ある程度は出来上がっていなければいけない時期ではないかと思います。
一方の柏はネルシーニョ監督が就任してから毎年ちばぎんカップを完全にテストマッチとして扱っており、来週のゼロックスすらも練習試合として考えてくる可能性もあるのではないでしょうか(笑)
実際問題としてそれだけ心理的な余裕もある状況なのだと思いますし、それでもいいチームなんだろうなぁとは思います。
むしろJ1優勝の翌年で、あまり気負い過ぎない方がよいのかもしれませんね。
過去2年間と同じように、温度差は確実にあった試合だと思いますし、ジェフからするとなかなか判断のしにくい試合ではあったのかなと思います。
■ボランチを中心としたパスワーク
ジェフのスタメンはGK岡本、DFラインに右から坂本、竹内、山口智、武田、ボランチに兵働と勇人、右に米倉、左に深井、2トップに藤田と米倉といった布陣でした。
事前の情報などを聞いていると、ほぼ予想通りのフォーメーションで、唯一意外だったのは坂本かなと思います。
それを考えると、テストなどではなくこのメンバーが現時点でのベストとも言えるのではないでしょうか。
ビルドアップの形としてはDFラインからパスをつなぐ展開と、FWのポストから中盤に落としてパスをつないでいって、2列目が飛び出していくか、SBを走り込ませる…というのが、基本的な狙いではないかと思います。
だから、サイドハーフに1人は伊藤や兵働のようなパサータイプを置きたいところなのでしょうし、CFWには藤田を起用したのではないかと思います。
そして、ダブルボランチもパスを繋げる2人を起用。
両SBに武田、坂本を起用したのも、攻撃力を買ってということではないでしょうか。
武田は良いクロスを上げていたシーンもありましたし、坂本も現時点では山口や大岩などよりも攻撃面で期待できるということなのかなぁと思います。
守備関しては木山監督が「アグレッシブにボールを奪いに行く」とは言っていましたけど、あまり高い位置でボールを奪う回数は多くなく、4×4でしっかりとスペースを消す守備の方が目立っていたように思います。
確かにFWはチェイシングをしっかりと行ってはいましたけど、そこに3人目4人目が絡むようなことは少なく、2列目以降は自分のエリアを大事に守っていた印象でした。
チェイシングの狙いは「奪う」よりも「ビルドアップの邪魔をする」意図を強く感じ、チーム全体としても前で奪うよりも後ろのスペースをケアする傾向の方が強かったように思います。
2列目以降が厚い分中盤でボールを奪えることもありましたが、4-3-3(あるいは4-5-1)で前の3人がチェイスするのではなく4-4-2でスペースを消す守備なため、相手DFラインを追い切れずそこからピンチを作っていたこともありましたし、このあたりは課題なのかなとも思います。
基本的には中盤で繋いでいく攻撃の形にしろ、4×4の守備にしろ、やはり木山監督時代の水戸のサッカーといったイメージですね。
監督が自分のサッカーをぶれずに行うことに関しては、良いことなのではないでしょうか。
前半は運動量も豊富に戦えており、ボランチを中心にCBやFW、伊藤などがフォローしていってパスをつなぎ、SBも上手く使えていました。
対照的に柏の方は選手の動きにキレがなく、プレーの1つ1つが鈍い。
このため攻守に置いて後手になることが多く、ジェフとしては戦いやすい状況だったと思います。
■自分達のサッカーはできていたものの
前半からチャンスを作っていたのジェフの方でしたが、ハーフタイム前から少しずつ疲労が増えてきて、柏に攻め込まれるシーンも増えていきました。
これによってジェフが優位だった、一歩目のスピードや動きのキレにおいて、徐々に差がなくなっていきましたね。
ジェフは攻撃に置いて、選手達が良い距離間に近づいてパスをつないでいくことがポイントだったと思うのですが、疲労によってその距離感が離れていくことで、パスの距離も少しずつ長くなっていってしまいました。
思ったよりも運動量が落ちるのが早かったと思いますし、このあたりも本番でどうなのか。
過去2年間90分間のペース配分も大きな課題でしたから、気になる要素の1つですね。
逆に柏の方は全く動けず運動量が少なかろうと、虎視眈々と得点を狙い、「効率よく勝つ」のがうまいチーム。
後半9分。
バックパスから武田がボールを受けたところを、レアンドロ・ドミンゲスがチェック。
武田は岡本へのパスを選択しましたが、そこを工藤が奪ってゴール。
工藤はあのシーンでも、ゴール前でしっかりと集中していましたね。
ある意味で柏らしいゴールだったんじゃないかなぁと思います。
その後もジェフは深井の個人技を中心にチャンスを作りますが、得点は奪いきれずに終わりました。
ベストコンディションではなかったと思える柏の選手達も、要所要所では集中してしっかりと守っていた印象があります。
工藤のゴール前での集中もそうだし、柏ディフェンス陣の最後の体の張り方もそうですし、柏はしっかりと試合の決まる両ゴール前では戦えていた印象でした。
そのあたりは「勝ちを知っているチーム」なんだなぁと感じるところです。
一方のジェフの方も中盤でのパスワークや守備においては今期自分達のやりたいサッカーはある程度できていたと思います。
しかし、ゴール前まで攻め込めていても、決定的なシュートシーンというのはそこまで多くなかったと思いますし、守備でもミスで失点してしまいました。
結局、内容は良かったものの、最終的な勝敗は柏の方に軍配が上がったということになります。
■柏のメンタリティ
過去2年間の試合を振り返っても予想はできていましたが、やはりコンディションやモチベーションではジェフの方が上だったと思います。
ただ、チームとしての出来や選手個々の能力として、相手を上回ったかどうかという点に関しては、わかりにくい試合内容だったのではないかなぁと。
ジェフの現在地を確認する上でも柏には本気で来てほしかったなぁと思いますけど、「あくまでも公式戦での勝利に標準を合わせる」というのが今の柏の明確なポリシーだと思います。
「公式戦までは本気を出さない」ことも含めてチーム作りの大きな狙いだと思いますから、これは外からあれこれ言える範疇ではないですね。
それでも、柏はジェフに勝ってしまったと。
何よりも勝ちにこだわることで成功を収めている柏としては、現段階ではこれで十分だったんじゃないかなぁとも思います。
いくらジェフ側が「内容が良かった」と言っても、柏はストイックに「勝ちにこだわる」ことでJ1王者まで昇りつめたチームなわけですから、比較の土俵が違うと言えるのかもしれません。
むしろ省エネモードで勝ててしまったわけですから、あれがベストだったのかなとすら思います。
一方、今期のジェフはどういったポリシーで戦っていくのかということになりますけど、これだけ監督の好みに合わせて即戦力を積極的に補強したことを考えても、サポコミでフロントや監督から昇格や優勝を目標とするという話が出たことからも、結果も重要となるシーズンなはずで。
そう考えると全体的には悪くない試合だったとは思うのですけど、得点を1点も奪えなかったこと、ミスによって失点をしてしまったことへの危機感も強く感じます。
大事なところで得点が奪えないことと、ミスから失点してしまうことはこれまでも大きな問題だったわけで、そこを解決しなければ強いチームを作っていくのは難しいと思います。
開幕までのあと1週間でそういった部分を解決するのは簡単ではないと思いますし、負けたことを悲観することはないにしても、決して楽観視していい状況ではないのも事実ではないでしょうか。
昨年も一昨年もちばぎんカップでの内容はすごく良かったですし、これで勘違いしないことが重要ではないかなぁと思います。
もしかしたら過去2年間も、本気ではない柏と比べて相対的に良く見えた部分が大きかったのかもしれませんけどね。
オシム監督も良く言っていましたけど、サッカーには相手があるものであって、例えば中盤でのパス交換1つ取っても相手のチェックが少しでも緩ければ楽にできてしまい、その分自分達がうまく見えてしまいますし。
そのあたりは柏のマジックにハマらないようにしないと…と思います。
「自分達のサッカーが出来た」という内容の部分だけに満足するのではなく、しっかりと決めるところは決めて、攻守に置いてゴール前での集中力を高めるということ。
柏はそれが出来ていたと思いますし、柏の真似をする必要はないですけど、勝利にこだわるメンタリティの部分は、悔しいですけど学ぶべきところがあるのではないかなぁと感じました。