2011年シーズンを振り返る 神戸監督体制編

 10月16日、19日に行われた草津、水戸との連戦で、中位から下位の順位のチームに連敗を喫したジェフはドワイト監督を解任し、神戸TDを監督に据えU-18の菅澤コーチをトップチームに移動させました。
 驚きの決断ではありましたが前回も話したように、ドワイト監督には限界を感じていたのも事実ではありました。
 代えるのであればより早期に監督を交代すべきだったとも思わなくもないのですが、実際問題としてそれまである程度の勝点は稼げていたのも事実ですから、決断は難しいところもあったと思います。


 ここが昇格争いや優勝争いに置いての監督交代の難しさでもあり、逆に言えばシーズン前からの慎重な監督選びの重要性が言えるところでもあると思います。
 ドワイト監督は監督としての実績も少なく、それまでの江尻監督のサッカーとの継続性も見込めなかったわけですから、結果を求めるシーズンにおいての監督選びとしては、意思決定のプロセスの段階から疑問の余地があったのではないでしょうか。
 上位チームでなければ経験の少ない監督でギャンブルを仕掛けるというのも悪くはないと思いますが(成功例で言えば北九州のように)、J1昇格を目指す上での監督人事としては結果も内容も失敗だったと改めて思います。



 さて、ドワイト監督から神戸監督体制ですが、実質菅澤コーチが指揮を執っていたものと思われます。
 菅澤コーチはS級ライセンスを保持していないということで、名前だけの監督が必要になったということですね。


――――――久保――――――
―深井――――――――米倉―
―――村井――――伊藤―――
――――――勇人―――――― 
渡邊―ミリガン―竹内――山口
――――――岡本――――――
 当初の布陣はこんな感じだったかと。
 その後、伊藤の怪我もあってゲッセルのインサイドハーフでの起用したり、村井と勇人のダブルボランチ気味にして林を左ウイングに起用し深井をトップ下気味に置いて攻撃時は林、深井、1トップの3トップに移行する変則的なシステムや、オーロイの1トップ起用など様々なバリエーションが試されました。


 神戸監督体制になって大きく変わったのは、これまで作られてこなかった細かな部分の改善でした。
 ジェフ中盤を狙ったロングボールに対してミリガンが前に出てきて跳ね返すのは同様の手法ですが、ミリガンが前に出てきたとは勇人がDFラインまで下がってカバーをする。
 中盤のプレスもむやみに出ていくだけではなく、ポジショニングを重視して、後ろのスペースを潰しながらボールサイドに出ていく。
 DFラインへのロングボール出た場合には、スッと周りの選手が下がってカバーリングの姿勢を取る…。
 また、試合状況によってサイドの守備をケアするときはウイングは後ろに引いてインサイドハーフが相手DFラインにチェックにいったり、逆になってみたりと状況に応じた対応が出来ていたのも興味深いところでした。


 攻撃においては、村井が最終ラインの前まで下がってパスワークの中心となり、そこで相手をひきつけておいて、ウイングやSBを縦にしかけさせる長めのボールを展開するというのが基本的なビルドアップだったと思います。
 しかし、攻撃においてはもう1つ、そこから先の工夫が感じられない試合が多く、実際、監督が変わってから得点の数は減ってしまいました。
 リーグ戦において8試合で4ゴールのみで、これが勝敗に結びつなかった大きな要因だと思います。
 サイドの選手にアタックを仕掛けさせる戦術というのは、アタッカー育成においては良い手法なのかもしれませんが、単純なサイドアタックだけでは得点は見込めず勝ちに行かなければいけないチームにおいてはどうなのか…という疑問も残りました。


 また、若手選手を積極的に活用できなかったところも、疑問が残ります。
(このあたりの目に見えた疑問点だけを神戸さんに背負わせて、功績は全て菅澤さんに向けるような意見もあるのは非常に残念なことだと私は思います。こういったこともあるから、コーチが実質的な指揮を獲るというのは難しいのでしょうね。)
 特に鳥取戦からオーロイ等を起用し、これまでのサッカーのスタイルを引き延ばすよりも、(未勝利で焦りがあったのか)勝利に拘ったサッカーになっていた印象があるのは、非常に残念だったかなと思います。
 確かに勝利は重要ですが、その前の大分戦で監督交代後チーム初ゴールをあげた久保は起用せず…。
 その結果、大分戦では見られた久保の機動力による中盤からのスルーパスの引き出しや、地上戦でのポストプレーからのパスワークなども少なくなってしまい、鳥取戦以降はサイド攻撃に偏った展開になってしまった印象でした。
 守備面でも前からのプレスが少なくなり、よりチームの重心が後方に下がってしまった印象があります。
 一度スタイルを放棄した流れはその後も変えられず、全体的な運動量も少なくなり、攻撃も単調になってしまった印象を受けました。



 J1昇格もなくなった東京V戦以降は、メンタル面でもかなり厳しくなっていった印象でした。
 総じて新チームは可能性は見せてくれましたが、だからこそ、様々な面での限界を感じることが多かったかなぁと私は思います。


 ようするに補強や監督人事などを含めてこれまでの手法のままでは通じないということがわかったわけですから、これからチーム運営において新たな手法の下でスタートを切れるかどうかが重要になってくるのではないでしょうか。