今季最終戦 自分たちのサッカーができたからこそ…
世間ではクラブワールドカップが注目を浴びた先週末ですが、土曜日には天皇杯4回戦も開催されました。
11月に行われた3回戦で磐田に1-0で勝利していたジェフは、4回戦で清水と対戦。
しかし、0-2で敗戦となってしまいました。
これによってジェフは今シーズンの全日程が終了しました。
最後の試合を振り返っていきましょう。
■ピリッとしない清水
ジェフはスタメン1トップで米倉を起用。
右に深井、左に林とスピードのあるウイングを置き、中盤では勇人と村井が少し前に入って、アンカーにゲッセルが位置することが多かったですね。
対する清水は小野、ユングべりなどが怪我で出場せず。
左SBの太田は契約の関係もあって、スタメンからは外れ、ヨン・ア・ピンが入りました。
清水は試合の入り方が非常に悪かったですね。
前半6分に林がクロスバーをたたくシュート(その前のプレーでオフサイドを取られます)を放ちますが、この前の段階でジェフCBがボールを持った際の守備の位置がセンターラインどころか、センターサークルにすら入っていないような状況で。
全く動けていないというか、守備が非常におろそかな状態でした。
さすがにこの林の攻撃で少しずつ目が覚めていきますが、それでもイージーなミスが多く、局面でしか動けていない状態で。
格下相手に舐めてかかってくる、典型のような状態だったと思います(笑)
こういった入り方をすると、なかなか切り替えるのが難しかったりするんですよね。
攻撃では右ウイングの大前が外や中で、裏に飛び出す形を狙ってきました。
しかし、中盤に太田やユングべり、ヨン・ア・ピンが中盤から抜けたこともあって、中盤の高い位置でポイントを作れていなかったですね。
枝村、アレックスが前にポジションをとりすぎて、中盤のバランスももう1つだったように思います。
対するジェフは動きが良く、相手のミスもあってチャンスを作っていきます。
清水サポさんに事前に伺っていたように、相手はサイドの裏の守備に問題があって、ウイングを走らせる現在のジェフの攻撃には合っていたところがあるんじゃないでしょうか。
ただし、サイドは攻め込めても、中央の枚数が足らなかったり、センタリングの精度が低かったりと、得点の可能性はあまり感じない攻撃でした。
サイド裏にはボールを持ちこめても、ゴール前やペナルティエリアでのプレーは非常に少ない…。
対する清水は攻撃の回数こそ少なくピリッとしないものの、それでも高原のポストをかすめるミドルシュートや、大前のペナルティエリア内で粘ってのシュートなどがあり、決定機は同じか清水のほうが多いくらいだったかなと思います。
■清水の攻撃のバリエーション
後半開始と同時に、ヨン・ア・ピンに変えて太田を投入。
開始直後こそDFラインでのミスがありましたが、チーム全体の動きが変わりハーフタイムで気持ちを入れ替えてきた印象でした。
清水のポゼッション率が上がっていき、中盤の高い位置でもボールを持てるようになっていきました。
その流れで、清水があっさりとゴールを奪います。
高原のポストプレーから、枝村が受けたところを勇人がチェックにいくも潰しきれず。
少し後ろのアレックスに戻されて、フリーでボールを持ったアレックスがミドルシュート。
このシュートがジェフの選手にあたったのか、軌道が変わって先制ゴールとなります。
その前にも高原がミリガンの裏を取って折り返し、アレックスがフリーでシュートを放っていますし、この辺りは本気の清水を見た印象でした。
ジェフはなかなか前に守備がいけなくなっていき、失点直後にもボスナーのフィードから伊藤が落として、フリーの高原がシュート…と、決定的なシーンが作られていきます。
こういった相手のDFにプレスが全くいけていない状況でも、J2なら縦パス、落とし、シュートといった簡単な攻撃の流れのどこかでミスが生じ、大きな問題にならないことも多いですが、J1ではやはり確実に惜しいシュートまで持ち込まれてしまいますね。
このあたりはレベルの差を痛感する部分でもあります。
…しかし、高原などは明らかに運動量が前半と後半で違いましたね(笑)
前半は守備もせず攻撃でも前で待っているだけでしたが、後半からは状況にとって少し下がって受けたりサイドよりで縦に飛び出したりと、動きが多彩になって行きました。
アレックスや枝村もただ前に行くだけでなく、パスを出す仕事もこなすようになって行って、ウイングやSBなどのサイド攻撃もあって、全体的に攻撃のバリエーションが増えていきました。
後半17分、村井が緩いプレーで相手にボールを奪われると、大前から伊藤につながれ2失点目。
大前のチェックから村井が倒れたシーンですけど、もっと粘ってほしかったですね。
この日の審判は前半から割とフィジカルコンタクトに笛を吹かない方でしたし、あのプレーで笛が鳴らないのは妥当でしょう。
このあたりもJ2慣れしてしまっているところがあるのでしょうか。
J2なら審判がジェフをリスペクトしてくれて、こちらに優位な笛を吹いてくれることも多いですけど…(笑)
それ以降も中盤の厚みやサイドからの攻撃で、清水が攻め込む展開に。
ジェフはやはりベテランが多いせいか、後半になってから守備が苦しくなっていきますね。
基本的に中盤の守備の厚みがベースになっているチームなだけに、あれだけ中盤で自由にボールを持たれては厳しい…。
その後もジェフは細かなミスも目立ち、逆に清水はのびのびとサッカーができるようになっていきました。
ボスナーのフリーキック2発は不発でしたけど、そのまま2-0で試合終了となりました。
■J1チームとジェフとの差
清水からすれば、天皇杯の難しさを感じる試合だったのではないでしょうか。
J2のジェフと対戦し、気持ちが入らない選手達。
主力選手も不在で、契約の問題のある選手もいたり…。
清水はACL出場を目指しているようで、天皇杯は優勝を目指さなければならず、ジェフ戦などにコンディションを合わせているわけにはいかない…。
清水の前半の動きの悪さなど見ると、レギュラーシーズンではこうはいかないだろうなぁと感じました。
逆にジェフのほうは相手がJ1ということもあり、リーグ戦終盤に感じたJ1昇格失敗のショックも癒え、コンディションも良かったように思います。
特に前半は、現在のジェフのやりたいサッカーがある程度できていたのではないでしょうか。
ただ、やりたいサッカーができていたからこそ、そのサッカーに限界も感じてしまいました。
サイドの裏を突くためウイングに深井、林を入れ、米倉を1トップで起用して中央だけでなくサイドにも流れる動きをさせる(この動きは湘南戦でもやっていました)。
そして、左SBの渡辺には積極的にオーバーラップを仕掛けさせる。
これによって、サイドの裏は確かにとれたけれども、そこからクロスを上げても中に人数がいなかったり、いても米倉と深井か林でサイズがなかったり…。
現在はインサイドハーフの選手が積極的に飛び出していくような動きもあまり見られないですし、センタリングの質の問題もあって、攻撃していても怖さをあまり感じませんでした。
この傾向はリーグ戦でも感じていましたが、中央への攻撃がなく「サイドの裏を取るのが目的」のようにも感じてしまうところがあります。
ただ、相手としてもどちらかといえば中央よりサイドのほうが明け渡していいポジションですし、当然裏も取りやすいわけで。
サイド攻撃のほうが奪われた時のリスクも少なく、主導権も握りやすいでしょうけど、それだけでは得点に結びつかない…。
もちろんサイド攻撃も重要ではありますけど、中にも外にも強みがないと、ゴールという結果につなげるのは難しいですね。
今はサイドの裏を取ることばかりに力を注いでいるような印象ですし、対照的に後半の清水は高原の動きと中盤の厚みとサイドもあって非常に攻撃が多彩でした。
ジェフもリーグでの大分戦などでは久保がCBの裏を狙う形も作れましたけどあの試合だけでしたし、チームが熟成してしまったことによって逆にサイドの裏ばかりを狙う展開になってしまったのでしょうか…。
湘南との練習試合でもウイングが斜めに裏を走っていく攻撃しか得点の匂いはしませんでしたし、この試合でもウイングが裏を取ってそのまま中に切り込めればよかったのかもしれませんが、距離もあるし中はふさがれているし自力ではそこまではいけない…と。
清水の立ち上がりの出来が思ったより悪く、CBが前に出てきて来てくれなかったことが、逆に災いしたのかもしれませんが(笑)
まぁ、後半の試合内容をみるとその分押し込まれてピンチを作られてしまったでしょうから、スタートから清水に前に出てこられても厳しい内容になったことには変わらなかったでしょうけどね。
個人的には手応え以上に、現実を思い知らされた試合でした。
やれることはやっただけに、これ以上を求めるのは少なくとも現段階では難しいのだろうなぁと。
来季以降チームを作り直すという意味においては、良いきっかけになったのかもしれません。
単純に足元の技術もそうですけど、オフザボールの動きの質も、アイデアも、バリエーションも相手のほうが上手だったと思います。
あるいは局面での守備の粘りやスタミナの部分などでも、学ぶべきところはあったのではないでしょうか。
これがJ1チームとジェフとの差であり、これを真摯に受け止めて今後の糧にしてほしいと思います。
ともかく、1年間、お疲れ様でした。