“ジェフらしいサッカー”の再スタート?

 監督交代にあたって、土曜日22日に三木社長と神戸監督が会見を行いました。
 BLOGOLAで全文が読めますので、ご確認ください。


 非常に気になる内容でしたので、そちらを取り上げたい気もしますが、先に日曜日に行われた栃木戦を振り返って見たいと思います。 
■コンパクトな守備とカウンター
 監督の代わったジェフはGKに岡本、DFラインは右から山口、竹内、青木良太、渡邊。
 1ボランチに勇人で、少し前の左に村井、少し高めの右に伊藤。
 右ウイングに深井、左ウイングに米倉、1トップに久保が入り、立ち上がりは4-1-2-3のようなフォーメーションでした。


 新生ジェフの第一印象は、まず球際でしっかりと行くこと。
 また、前線の久保からしっかりと守備に行けていましたね。
 これにより全体がコンパクトになり、全体が締ったサッカーになっていました。



 前半5分、村井から米倉にスルーパスが通り、GKと一対一となる決定的なシーンが出来ますが、惜しくもゴールはならず。
 前半8分には勇人と伊藤が中盤で囲み、ボールを奪ったところから右の深井、下げて勇人、伊藤、久保のポストから村井で大きく左サイドに展開。
 細かく素早く、上下左右にボールを動かしながら、斜めに良い展開が作れていました。
 前半19分と20分にも、カウンターで村井から深井が抜け出すスルーパスというシーンが続けて2回ありました。


 また、前半10分には右CBの位置から久保がGKまで追いかけたシーンで、左CBへ深井が追いかけたシーンがありました。
 この時に左SBには伊藤が、ボランチには村井が、左SHには山口が…と連動してプレスに行くことが出来ていました。
 これまでのジェフは局地的なプレスはできていましたけど、ここまで広い範囲での穴のないプレスというのはなかなか作れておらず、久々に良いプレスを見た印象でした。



 基本的にコンパクトな守備と、中盤の厚みからのカウンターでのサイド攻撃というのが、新チームの狙いということになるのではないかと思います。
 パスワークの部分も可能性を感じるスタートでした。
■プレスのラインが下がって0-0で終了
 立ち上がりは好調だったジェフですが、前半20分過ぎからは流れが傾いて行きます。
 守備時のウイングの位置が下がり、4-1-2-3から4-1-4-1のフォーメーションに変わっていった印象でした。
 単純に押し下げられたという感じではなく、久保のチェイシングもバランスを考えて行われるようになり、逆ウイングのポジショニングも修正され下がって中に絞るようなポジションを取るなど、チーム全体として落ち着いた形に変えていったのではないかなぁと思います。
 確かに90分間ハードプレスを行うのは難しいものですし、チーム全体で賢いサッカーを目指していきたいということなのではないでしょうか。


 しかし、プレスの位置下がったことで、どうしてもボールの奪いどころが低くなり、そこからのカウンターというのも難しくなっていきました。
 また、相手にサイドからチャンスを作られる機会も増えていきます。


 そして、攻撃面でもそれまで相手の4×4の前でボールを触って、チャンスを作っていた村井へのマークが厳しくなっていきました。
 相手FWが下がって中盤の選手とケアすることが増え、自由にボールを持てる回数が減って行きます。



 後半途中からはさらに運動量が落ちて、ビルドアップも難しくなっていきました。
 GKからの久保へのロングボールを蹴っては、競り負けてボールを失う…という展開が続く時間帯も。


 そんな状況で後半24分、米倉に変えて太田を起用。
 サイドを入れ替えて、深井を左に回して、太田を右に置きました。


 その3分後には右サイドで開いて受けた太田からのクロスを伊藤がヘディングで合わせて、ゴールを狙う…という狙い通りのシーンが作れました。
 それまでのウイングは右に左利きの深井を、左に右利きの米倉を起用し、攻撃時のポジショニングも相手のSBとCBの間を狙うような位置だったと思います。
 そこに上手く渡邊や山口が絡んでいくという攻撃のデザインだったのではないか…と思うのですけど、そこの連携はもう少しだったのかもしれませんが(でも、渡邊はいくつか良い攻め上がりを見せてくれたと思います)。


 その形をこの交代で変更し、ウイングが開いてサイドからクロスという狙いにしてきました。
 ウイングが切り込む形ではない分、伊藤がゴール前に入って行かなければいけないわけですから、そこも含めて上記のシーンは狙い通りの攻撃だったのではないかと思います。



 しかし、その後は同じような展開はなかなか作れず。
 終盤は相手に押し込まれるシーンが多い中、何とか守って結局スコアレスドローで試合終了となってしまいました。
■J1昇格に向けて「間に合うか」
 ジェフU-18のコーチだった管澤氏がトップに異動になったこともあってか、U-18に近いチームになったのかな?と思います。
 まぁ、自分も数えるほどしかU-18は見れていないのですが、まずは守備をしっかりとして、球際で激しくいく…。
 そして、ポジションバランスを細かく修正しながら、上手く相手を囲んでいく。


 実際、守備面での向上は素晴らしいものがあったと思います。
 プレッシングもそうですし、カウンターを受けた時に簡単には奪いに行かず、しっかりと遅らせて対応するとか、相手のロングボールに対して周りの選手は少し引いてカバーの体勢を作るとか、細かな動きの面での修正が非常に効いていたように思います。
 ドワイト監督の頃の守備は正直穴が多かっただけに、大きな変化を感じました。
 激しく行き過ぎて危険なプレーも多かったのは課題ですけど、「球際に強く行こう」とした試合の1発目ですから、今後感覚を見に付けていってほしいところだと思います。



 しかし、攻撃の面はまだまだでしたね。
 基本的にはカウンターを狙い、遅攻時は横だけでなく斜めのボールも使いながら、相手の隙を狙うパスワークを目指していたんだと思います。
 けれども、ビルドアップのスタートであるGKからのロングボールからボールを失ってしまったり、パスワークのフォローが上手くいかなかったり、攻撃時の人数が足りなかったりと、改善点は多いように感じます。


 このあたりも時間が無い中での試合ですから、いきなり高質な物を求めるのは酷なのでしょう。
 栃木戦までの日にちを考えれば、守備から付くつという考えは妥当なのだろうと思いますし。
 ただ少し気になるのは、管澤コーチはU-18でも堅守のチームを作るのが得意で、攻撃面は個人技に任せることで個々の能力を高めようという狙いがあるのかな?と感じていただけに、どこまで攻撃面を伸ばせるか…といたところ。
 まぁ、前半の中盤のパスからの米倉や深井の飛び出しのような形を、もっとたくさん作れるようになるのなら、「あとは個人技で」といった感じですからもう十分おぜん立てはできているレベルなのかな?とも思うのですが。
 今までは「初めから個人技で」といった感じでしたけどね。



 22日の神戸さんの会見でも攻撃面の課題に関して話していますが、やはり勝つためには攻撃の質を高めていかないと。
 J1昇格を目指すためには勝たなければいけず、勝つためには点をとらなければいけないわけですから。
 …しかし、ドワイト監督には守備を期待していたように感じるだけに、ちょっとこの会見での攻撃面の話は違和感を覚えます。


 また、今回の試合を見て改めて、やはりジェフは個々の能力で勝つチームではなく、勤勉な選手達が組織的に戦うチームの方が合っているのではないかと感じました。
 ようするに、それが”ジェフらしいサッカー”なのではないかと。
 それだけに、改めてなぜドワイト監督を選んだのか…という部分がすごく気になります。
 昨年の江尻監督も「攻撃的なサッカー」という点と「組織的に中盤が動きまわるサッカー」という意味で、狙った方向性は悪くなかったと思います。
 ただし、その細部を作りきれなかったのが大きな問題で、指導者としての経験不足を露呈してしまった印象でした。


 ですから、その方向性を維持するためにも、”ジェフらしいサッカー”を推し進めるという意味でも、経験のある日本人監督や外国人監督でも細かい組織サッカーを作れる指導者を呼ぶべきではないかと思っていました。
 しかし、実際に招聘されたドワイト監督は、ミラー監督にも似た大味なサッカーをする監督さんだったと思います。
 そういったサッカーが悪いわけではないですけど、ジェフには合っていなかったんじゃないでしょうか。
 「ミラー監督に似たサッカーになるのではないか」という見方は監督が指揮を取る前からサポの中でも噂になっていたわけで、予想通りということになります。
 決して「わからなかった」というわけではないだけに、監督人選のミスというか、どういった意図でドワイト監督を招聘したのかという部分が改めて気になるところです。



 ともかく、”ジェフらしいサッカー”は戻りつつあるのかなと思います。
 しかし、攻撃面はまだ時間がかかる気もしますし、J1昇格に向けて攻撃面のチーム作りが「間に合かどうか」というところが、今後は焦点になるのではないでしょうか。