ジェフを選び続けてくれた巻の東京V入団

巻誠一郎選手加入のお知らせ(東京V公式サイト)
【東京V:巻誠一郎選手 加入コメント】(J's GOAL)
元日本代表・巻の入団決定…東京V(報知)

元日本代表FW巻誠一郎(31)が東京Vに入団することが16日までに決定した。契約期間は1年半で、背番号は「15」の予定。17日にも正式発表される。

 複雑な思いもありますが、ついに決まってしまいましたね。
 巻自身にとっても中国では「日本に帰るのならジェフ」と話しており、これまで海外挑戦に拘っていたのも「ジェフ以外のJクラブを選びたくない」という意味もあったはずで(自身の携帯サイトでもそのあたりの想いを示唆しています)今回は苦渋の決断だったとは思うのですが、決まったからには東京Vで頑張ってほしいと思います。
 なお、報知は発表前に入団決定を伝え、背番号「15」と1年半契約を報道。
 背番号は結局「41」となりましたが(練習試合で「15」を付けていたのでそう報じたのでしょうか)、1年半契約という情報が正しければ、腰を据えてプレーできるという意味で巻にとってはありがたいのではないかと思います。
 1年半なら無報酬もなさそうですね。


 しかし、ジェフを応援する側としては、こうやって巻の他Jクラブへの入団が正式に発表されてしまうと、改めてどうしてこうなったのか悩んでしまいます。
 今だけを考えれば、巻を応援する者の1人として巻がもう一度プレーできる嬉しさもあるし(といってもロシア・中国とプレーしていたわけで、久々な感じはしないのですが)、巻を受け入れてくれた東京Vへの感謝の思いもあります。
 ただ、巻とジェフというのはこれまでに様々な出来事や歴史があり、今だけを見て語れるものでもないはずです。



 考えてみれば、私も以前は巻を”ジェフにとっての特別な存在”とは捉えていませんでした。
 同じオシム世代の選手でも、あの頃はどちらかと言えば阿部や勇人などユース育ちの選手の方が愛着がありましたし、若い水野・水本への期待感の方が強くあったと思います。


 しかし、オシム監督退団以降、多くの主力選手がジェフから移籍する中で、巻はチームに残ってくれた。
 もちろんあれだけ大量の選手がジェフから離れていったわけで、クラブに問題がなかったとは考えられないでしょう。
 ですから、離れていった選手達の気持ちは理解できなくもないのですが、多くの主力選手が「問題のあるジェフからは退団したい」と考える中で、巻だけは「ジェフに問題があるのなら残って立て直したい」と考えてくれた。
 それまでの巻は決してチームの中でも目立つ言動を見せるタイプではなかったのですが、多くの選手が流出してからはジェフの中でもリーダーとしての振る舞いをしていくようになりました。


 それほどまでにジェフを愛し、ジェフを選び続けてくれた。
 その後、J2に降格してもその姿勢を変えず、共に戦うことを選んでくれた。
 「ジェフを選び続けること」こそが巻のポリシーであり、ジェフにとっても”特別な存在”である巻とクラブを繋ぐものでもあった…。
 にも関わらず、その想いはバッサリと切られてしまった…ということになります。
 これはもう寂しいという言葉だけでは言い表せられないですね。



 退団前後の疑問は散々話したので、今回は詳しくは避けます。
(ジェフで2試合スタメン出場した直後の退団とか、チームの勢いが陰りを見せ始め下半期が不安な状況での戦力外通告とか、神戸TDがサポコミで巻を好意的に話していたのに議事録でカットされているとか、ジェフ退団時の社長の会見内容とか、言いたいことはたくさんありますけど…笑)。
 しかし、サッカーに疎い自分の家族なんかはいまだに「ジェフでは巻を知らない」なんて言いますし、今年フクアリでも子供たちが「巻はなんでいなくなったの?」なんて話していたのを偶然見たりすると、改めて純粋に残念だなぁと思ってしまします。
 もちろん、サポーターの中には巻をそこまで必要としない意見があるのも知っていますけど、より重要なのはクラブ全体としてどういった影響があるのか。
 こういったケースはコアなサポよりむしろライトなファンなどへの影響の方が大きいかもしれないわけで(それと長くサポート活動を続けられてきた方からのほうが疑問の声が多い気もします)、広い視点で見なければいけないんじゃないかと私は思います。


 以前も言ったように、巻の放出の理由は色んな情報を読んでも理解しがたい部分がありました。
 退団時のチームの説明から考えるとすれば、今夏はジェフのフロントにとって巻獲得のチャンスがある状況なのではないかと思いましたが、残念ながらジェフからは動きが無かったようで。
 名目上の理由だとは思いますが、「巻の海外挑戦」も中国で途絶えてしまった。
 また、「試合への出場」という意味においても「前の方は何も作れずFWの個人能力任せ」だった去年よりも、今年の方が「長身FWを置いてのロングボール」という形があり1トップの役割はハッキリしています。
 実際、その発想から大島を獲得したのでしょうし、巻獲得の理由は十分考えられる状況だったと思うのですが。


 加えて、個人的に巻はオーロイや大島にはないものを持っていると思っています。
 巻の最大の特徴は「体をはれてターゲットになれてポストができる」だけでなく、「動ける」ということ。
 日本人選手で「走れるターゲットマン」というのは非常に貴重で、だからこそ三人もの代表監督に招集された経験があるはずですで、それはドワイト監督の現在のサッカーにおいても(プレッシングをしたいのにオーロイが動けず出来ていないという印象もありますし)有力な武器に慣れる可能性があるはずです。
 それとメンタル面でも、もちろん期待できるはずで。
 おとなしい選手が多いといわれるジェフですし、アムカルでも深センでも東京Vの川勝監督にもそういった面を評価してもらった巻ですから。
 また、巻ならばこれまでのプレー経験から、他の選手達の連携も期待でき、シーズン中の加入でも素早くチームに馴染めたはずで。
 巻が加入すればオーロイの代わりになれるだけでなく、プラスアルファの『変化』も期待できたのではないかと密かに思っていました。
 昨日も言ったように現行のチームは伸び悩んでいる印象で、何かしらの『変化』が欲しいところではないかと感じるのですが…。



 結局のところ退団時もそうですが、今回もジェフが巻に声をかけないというのは、クラブと巻の間に何らかのいざこざがあったのではないかと私は思います。 
 「巻とフロントの内情がどうなのかはわからないから」といっても、そもそも理由がはっきりと「わからない」状況でクラブの功労者が退団してしまうことが問題なわけで。
 巻の放出を1つのきっかけとしてジェフから離れたサポーターの方もいらっしゃいますし(無論それまでのクラブへの疑問も多数あったはず)、功労者を大切にできない、人と人との繋がりを重視できない…という印象を内外に持たれてしまっては、今後も「愛されるクラブ作り」というのは難しいんじゃないかと私は思います。
 ジェフは下川や中西や坂本などの時にも、そういった問題を指摘され続けてきたわけですから…。


 今回の件は単純にクラブと巻の一対一の問題だけではなく、クラブ内外に関わる問題ではないかと思います。
 巻だけのことを考えれば、ジェフに限らず活躍できる場を見つけてくれればそれでいいとも言えるでしょう。
 しかし、クラブのことも考えると、本当にこれで良いのか…と思ってしまいます。



 巻に関しては、東京Vに決まったからには、東京Vに尽くしてほしいと思います。
 さすがにもう「いつか戻ってきてほしい」とか「最後はジェフで…」なんて、巻に甘えるようなことはもう言えないと思います。
 巻の実績や性格などを考えれば、そのまま東京Vでスタッフ入りなどもありえなくはないでしょうし、このまま最後のお別れとなる可能性もあるのではないでしょうか。


 改めてジェフは大事な人を手放してしまったといった印象もありますが、「これも人生」ということなんでしょうか…。
 個人的には素直にとても残念に思います。
 ともかく、巻が加入した以上、巻と東京Vには頑張ってほしいと思います。