深井が危険なエリアから遠ざけられて
じめじめした気候が何日かあったものの、梅雨らしい梅雨はあまり感じないまま、9日気象庁が梅雨明けを発表しました。
ちょうどジェフ対熊本戦が行われたのが9日で、その日も日中から非常に熱かったですね。
これから本格的に来る夏に向けて、選手もサポーターも暑さ対策に気を付けていきたいですね。
選手に関しては、試合だけでなく日頃からのコンディション調整も大切になってくるのではないでしょうか。
まぁ、ただこの試合に関しては、それ以前の問題があったように感じましたが。
■熊本の守備とジェフの守備の違い
熊本は出場停止明けの長沢がスタメン。
前節は途中からの出場だったエジミウソンも、スタメンに復帰しています。
ジェフはゲッセルが負傷したのか、伊藤が中盤に。
そして、右ウイングには林がスタメンで入りました。
試合序盤。
熊本は前節同様、ボールを奪ったら素早く浮き玉のパスで、DFラインの裏を付く攻撃をしてきました。
それに対して、試合の入り方がいまいちピリッとしないように感じたジェフ。
パスの出所が抑えきれず、CBが後ろ向きの守備をする機会が増え、流れを相手に掴まれていました。
そして、前半5分。
熊本から見て右サイドからのCKの展開から、オーロイの前に長沢が入られて、ヘディングで失点。
課題であるオーロイの前を突かれてしまいましたね。
しかし、その2分後、ジェフがアンカーに入った伊藤から林に対して、ロングスルーパスを出してチャンスを作ります。
伊藤のパスも林の飛び込みも、ダイナミックで面白い攻撃でした。
そして、前半9分。
林がゴールから遠めの位置からのFKを直接狙うと、GK南が弾いて、そこを竹内が拾ってゴール。
林のFK、コースは決して厳しくはなかったのですが、無回転気味のシュートだったせいか、GKにとって難しい軌道になったんでしょうか。
これで同点となります。
その後、試合が落ち着くと、熊本のポゼッション率が高くなる時間帯も増えていきます。
ジェフが相手にボールを支配される試合というのは、珍しいですね。
熊本の中盤の選手が落ち着いてパスを回していた印象もありますが、ジェフの選手は上手くプレッシングでボールを奪う形が出来ない。
ジェフの中盤の選手も懸命に動き回ってはいましたが、複数人で連携して相手を囲い込んだり、アタックとカバーの関係を作ったり…というところまでは出来ていませんね。
「ボールを奪いに行く」よりも「ともかく穴を作らずに守る」というチームの狙いならば、それでいいのかもしれませんが、どちらかというとボールを奪おうという寄せの動きはするけれど、素早く囲い込むことができていないので、プレッシングがかけられない。
そして、中途半端に寄せる結果、少しずつ守備が遅れるためラインが下がって、押し込まれてしまうような印象を受けました。
対照的に熊本も高い位置ではボールを奪いにこない状況ではありましたが、その分守備時にはっきりとポジションを守り、守備の穴を作らず等間隔に守れていた印象でした。
「ボールを奪えない」というよりは、「相手にボールを持たせる」守り方だったと思います。
ジェフは、攻撃ではオーロイにボールを当てても、2列目の選手が広いに行く状況が作れずにいました。
押せ押せの状況なら前に行ける中盤の選手も、いつもより相手にポゼッションされ、裏のスペースも付かれて、前に行けない状況になっていたのかなと思います。
■熊本の守備を打開できず
後半5分、6分と続けて片山がイエローカードを受け退場。
熊本が1人少ない状況となります。
これで試合はボールを持って攻めるジェフ、4-4-1から守ってカウンターを狙う展開になります。
しかし、ジェフはなかなか打開策が見いだせない。
”オーロイあて”が難しいのであれば”深井の打開力”に期待したいところ…というか、最近のジェフはむしろ”深井の打開力”で得点を奪っている印象の方が強いジェフですが、熊本はそのあたりをしっかりと研究してきた印象でした。
前節の鳥栖戦と同じように中央のオーロイにはCB2人が見て、DFとMFの2ラインの距離を狭くして2列目の選手の飛び出しに対応する。
…ようするに、特別な”オーロイ対策”はしてこなかった印象です。
しかし、”オーロイ対策”をしないことで、中央に守備陣が寄ってしまうことはなく、サイドが空くことはない。
それによって、深井にスペースを与えないことになります。
深井には右SHと右SBがポジションを調整しながら2人で守り、「深井を中に入れさせない守備」をしてきました。
もともと動き回ってボールを受けるようなプレーは少ない深井ですから、スペースを与えずに選手同士で挟み込み、足の速い選手で守れば大丈夫、ということでしょうか。
ここ数試合、ジェフの対戦相手は内に入ってきた深井へのマークが緩くなったところで(別にジェフが特別な動きをしたというわけではなく)、キャノンシュート…というパターンが一番の得点源だっただけに、「深井が中に入れない」というだけで、ジェフにとっては苦しい状況になってしまったということになります。
逆に言えば、ジェフにそれを上回る工夫が出来ていなかったとも言えます。
確かに熊本はしっかりと守れていた印象はありましたが、左サイドを警戒するあまり右サイドが空くこともありましたし、そこからチャンスを作れなかったという問題も大きかったはずです。
ようするに、深井の個人技頼りになりすぎていたのではないかと。
あるいは、深井を使うにしても右サイドから攻撃をすれば左サイドは空く傾向がありましたし、素早くサイドチェンジをするなどすれば、相手を揺さぶることもできたかもしれないわけで…。
さすがに1人少ない熊本は後半半ばからはラインが下がり(もともと前にプレスには来ないチームですから、ラインが下がりがちになる傾向はあるのでしょうが)、PA内にボールが入ることが増えていきますが、逆に守り慣れていった印象もありました。
ジェフの方は後方からのロングキックやサイド広い位置からのアーリークロスなど、大外からのロングボールを放り込むような展開で、肝心のゴール前を崩すような動き・攻撃は作れず…。
攻めているように見えて、攻めきれてはいない。
押しているようで、相手のペースだったように思います。
■深井が危険なエリアから遠ざけられて
前半開始から10分もしないうちに2点も動く展開で、激しい試合を予想しましたが、結局1-1のまま試合は終了。
後半早々に相手が1人少ない状況になったこともあって、その後はかなり固い試合になってしまいましたね。
ジェフとしては熊本の守備を崩しきれないまま、試合が終わってしまった印象でした。
やはり、ポイントは深井が中でプレーできなかったことではないかと思います。
前節まで3試合連続ゴールを決めていた深井が、熊本の守備により”危険なエリア”から遠ざけられてしまったことで、チーム全体として”決定的なプレー”がなくなってしまったということではないでしょうか。
結果的に、深井への依存度が明確になった試合でもあるのかなと思います。
逆に言えば右サイドからの攻撃力不足が露呈したとも言えるのかもしれませんが…。
これを今後の課題として考えるとすると、相手をパスワークで揺さぶったりサポートを増やすなどしてより深井を活かす形を模索するのか、あるいは深井以外でも得点が奪える形を考えていくのか。
個人的には深井がジェフの攻撃面を大きくリードしているように感じるからこそ、そこに依存しないためにも後者の形も期待したいところではあるのですが…。
もちろんJ2を戦い抜く上ではオーロイを『見せて』おいて、”深井の打開力”に期待していけば、今後も結果は続くのかもしれません。
わかっていても深井を止められないチームもあるでしょうし、”オーロイあて”も熊本のように選手がそろっていれば特別に偏った対策が無くても止められるかもしれませんが、個人能力で差があるチームはそうはいかないでしょうし。
ただ、来季以降J1での戦いを考えれば、今回の試合のように「中央は特別対策を練らず、深井を2人でケアしておけばいい…」となるかもしれないし、そうなってくると心配かなと。
逆に守備面で、深井の裏を取られるようなこともあるかもしれませんしね。
この試合でも、何度かあったと思いますし。
前節の前半はビルドアップ面で課題が出ていましたし、今回は相手が1人少なくなるまでの中途半端なプレスも気になった上、深井対策をとられた後の攻撃の課題も見受けられました。
そういった試合の中でも確実に勝点も拾えているわけですし、課題をしっかりと受け止めながら、チームの成長を期待していきたいですね。