熊本、深センFW巻獲得に動く?

 昨日、日刊が「熊本が深センFW巻獲得を目指す」という内容のニュースを、池谷GMのコメント付きで報じました。
 先日取り上げたとおり深セン退団報道が出ている巻はトルシエ監督による巻の退団発言後、改めて診断を受けCTによる問題はなし。
 その後の精密検査の結果次第では、深セン残留の可能性も出てきたようです(コメント欄でも情報いただいております、ありがごうございます)。


 しかし、その一方で成績不振で現在最下位の深センは、巻とラコヴィッチを放出し、開幕前に深セン入団テストを行っていた元栃木MF米山を獲得するのではないかと大きく報じられています。
 また、こちらなどでは、コートジボワールのFWが2日間テストされるとも言われています。


 熊本に関しては、現在、清水からレンタル移籍中の191cmの長沢がレギュラーとして活躍。
 ただ、長身FWではありますが、若いころからどちらかと言えばヘディングが得意というよりは、足元の技術がしっかりしているといわれてきたポストプレーヤーでした。
 巻の特徴は高さと運動量と体を張ったプレーですから、ポジションは被るでしょうけど、厳密なタイプは違うんじゃないかと私は思います。
 スーパーサブとしての評価だとしても、あるいはピッチ外での部分も含めても、熊本が選手として高く評価してくれているというのであれば、巻にとって非常に嬉しいことなんじゃないでしょうか。



 …まぁただ、率直に言えば残念な部分もあります。
 残念というか、歯がゆいというか。
 どうして、ジェフがこういった時に巻に声を掛けられない状況になってしまっているのか…ということに関して。


 本を正せば「2010年末で戦力外だったから、ロシアからのオファーがあった時点で移籍を認めたのは巻への優しさ」なんて意見もありましたが、そもそも戦力外という判断が妥当なものだったのかどうか。
 オーロイが活躍しているのを見ると、使い方によっては巻だってやはり十分戦力となる可能性はあったのではないか?と感じてしまいますしね。
 もちろんオーロイほどの絶対的な高さはないかもしれませんが、それでもオーロイだって空中戦で相手に負けていることはありますし、その分守備や運動量や前への飛び込み(クロスへの反応)では巻の方が優れているはずで。
 深井との連携だって、もしかしたら巻の方がわかっているかもしれませんし…(笑)
 もちろん昨年上半期の段階ではなかなかアタッキングサードを作り出さない江尻監督と合わなかった部分もあり十分な戦力とは言いにくかったのでしょうが、一昨年まではクラブに多大なる貢献をしJ2に降格してもジェフに残留を決め”ジェフの顔”でもあった巻を、そのたった半年で戦力外と判断してしまうということ自体が今でも理解できません。
 しかも、そのチームは半年間、倉田頼りのサッカーで結果を出してきて良い状況とは言えなかったはずなのに、どこかで勘違いをしている部分を感じ、結局J1昇格という結果の面でも失敗、監督も交代することになったわけで。
 もしあの半年間だけを見て1年でJ1に昇格でき、江尻監督も続投するから巻は戦力外…という判断だったというのであれば、あまりにもJ2というかサッカー自体を甘く見過ぎていたんじゃないかなぁと私は思います。


 もちろん世代交代と功労選手への対応というのは難しい…というところはあるのでしょう。
 しかし、タイミングというものがあるでしょうし、巻はピッチの内外で周りのお手本となりうる選手だったはずで。
 言うなれば、オシム監督時代の要田のような存在でしょうか。
 練習から一生懸命頑張る選手である要田を監督が高く評価することによって、他の選手にも練習からサボらない姿勢を求めると。
 アムカルもそういった巻の姿勢を買って補強にいたり、中国でもプロフェッショナルな選手とトルシエ監督や中国メディアですらその点を評価しているのにもかかわらず、長年在籍したジェフがそういった部分を評価しない(あるいは軽視してるようにも見える)というのは、客観的に考えても素直に残念な状況であるように思えてしまいます。


 もちろん巻にスタメンの保障などはできなかったでしょうけど、それは世界中どこでも同じなわけで。
 プロ選手として試合に出場できる環境というのは重要ではありますけど、スタメンでなくとも伸び伸びとプレーできる状況だってあるはずです。
 深センだってポストタイプのニュージランド代表FWキレンがいるし、熊本にも長沢はいる状況で、それでも巻を評価してくれたということなのでしょうし。
 何より巻本人も「どこかのチームでスタメン出場する」こと以上に、ジェフを愛してくれた選手だったんじゃないでしょうか。



 そのあたりを前提として巻のことを考えると、悲しいけれど「もうジェフのことはいいんだよ」と私は思います。
 私もついつい巻のジェフを思う気持ちに甘えて「いつかジェフに帰ってきてほしい」なんてことを我儘に考えてしまいますが、短い選手生命の中で30歳の選手にそんな思いを寄せることが酷とも言えるわけで。
 『いつかなんて日はいつだ!』って話ですよね(笑)
 巻本人は中国でも「日本に戻るならジェフ」と言ってくれているようですが、そのジェフがいつまでも受け入れられる態勢(選手構想など以上にたぶん気持ちなどの問題でしょう)を作れる見込みがないのであれば、残念だけれどジェフ以外での日本でのプレーも本人のために考えてほしいと思います。
 もちろん深セン残留の可能性もまだあるのでしょうけどね。



 そういえばJEF PRESSが、クラブ20周年ということで、表紙に数々の選手がアップされています。
 Jリーグ開幕時のリトバルスキー、その後の残留争いの江尻や下川、03年からのオシム監督、06年ナビスコ優勝の阿部、坂本、08年残留時の谷澤、レイナウド…。
 でも、これだけの選手がピックアップされていても、巻は集合写真で本人とは確認できないほど小さくしか写っていないんですね。
 もしかしたら偶然なのかもしれませんが、逆に考えるとこういったもので大きく巻がピックアップされるような可能性は、現段階ではあまり考えにくいなぁ…とも思ってしまいました。
 感覚的な話ではありますが。


 これは些細なことではありますけど、巻退団時の会見の温度差、サポコミで神戸TDが巻の話しを2度も前向きな意味で取り上げていたのに、そこが綺麗に消されれいることなどを考えても、総合的に見てやはりジェフのフロントと巻は良い形のまま別れたわけではないのだろうな…と感じてしまいます。
 むしろ、そう考える方が自然ではないかなと。
 巻を思う声は多くても、「今すぐ巻に帰ってきて」という声が比較的少ないのも、そういった部分をどこかに感じてしまっている人が多いからなのではないかなぁとも思います。
 そう考えると、現在のフロントが変わらない限りは、巻のジェフ復帰もないのかなぁと。


 …で、あるのであれば、やはりジェフ以外のクラブへの入団も考えるべきなのでしょう。
 ここまでロシア、中国と2カ国のクラブが巻を必要としてくれただけでも立派なことだと思いますが、母国クラブを入団先から外すとなれば当然交渉の幅も狭くなってしまうはずで。
 その中で熊本は自身の出生地でもあるわけですし、継続的に巻獲得を検討してくれているクラブなわけですから、実際問題としてのジェフサポの気持ちの部分も含めて、良い移籍先候補となるのではないでしょうか。
 ともかく巻を本当に必要としているクラブで、伸び伸びとプレーできる環境が作れることを、切に祈っております。