プレッシャーから解き放たれ…ても
「1年でJ1復帰」という大きな目標を失ったショックか。
はたまたプレッシャーからの解放か。
愛媛戦での選手達の動きからすると、後者の方が強かったのかもしれませんね。
もしかしたら精神的なダメージの方が強いのかな?と心配したのですが、そうでもなかったようです。
■予想以上の良い動き
キックオフからジェフの選手達は良く動きまわっていました。
草津戦でのコンディションが非常に悪く見るからに体が重そうに感じたので、この試合も心配したのですが、しっかりと改善されていましたね。
やはり中2日での試合はきつかったのか。
コンディションが重要なサッカーをしているだけに、連戦が問題なのかなぁ…とも思いましたが。
また、プレッシャーがなくなったせいか、ここ数試合に感じた焦りがなくなっていました。
ジェフがボールを持つとともかくゴール前に選手が突っ込んでいってしまい、ボールも焦ってそこに放り込む展開になっていたのですが、この日に関しては左からは工藤と大外を(外ではなく大外が重要…だと思います)走るアレックスが、右からは谷澤や鎌田あたりが積極的に攻撃を仕掛けていました。
アジア大会から返ってきた鎌田は顔つきが変わったようにも見えました。
自信が出てきてプレーにメリハリを感じましたし、もしかしたらアジア大会を機に化ける可能性もあるかもしれませんね。
こういうことがあるから、いくらクラブが重要でもユース年代の代表の大会も蔑ろにはできない…と私は思うのですけど。
外からの攻撃があるから、中も活きてくる。
サイドを攻め立てることによって相手の守備ラインを外に開かせることが出来るようになったことで、ようやくここ数戦思い切って前に出て行くようになった勇人の飛び出しが活用できるようになりました。
得点シーンはまさにその形から。
中盤低い位置の林からパスを受けた工藤がポストプレー。
右サイドにはたいて谷澤が受けると、工藤の落としをスイッチにして勇人が中央右脇を走りだします。
勇人にボールが入ると、中に素早くパスを出し、ネットは合わせるだけの状態。
これが決まって、前半6分に先制となります。
久々に美しいゴール。
しかも、個人での打開力ではなく綺麗にパスが通って、シューターへのおぜん立てがしっかりと出来ていましたね。
前半はその後も選手達は良く動けていたと思いますし、ボールを保持する時間も長かったと思います。
…ただ、得点後はなかなか相手を崩せなくなっていき、徐々にシュートまで持ち込むシーンが減っていってしまいました。
■愛媛の速く積極的な攻撃
愛媛は昨年の途中からバルバリッチ監督が就任したということで、気になるチームの1つだったのですがかなり印象が変わっていました。
シーズン序盤はフィジカルを主体としたチームで、攻撃も早いタイミングでボールを放り込むサッカーだったのですが、この日の愛媛はDFラインからしっかりとボールをつないできました。
まずはフィジカル重視で守備を形成して、そこから攻撃を作るという策はあちらでは基本なのでしょうか。
ジェフ時代のオシム監督もそうでしたけど。
正直シーズン前半は意外と普通だなと思って、その先はあまり注目していなかったのですけど、この日の愛媛は非常に興味深いサッカーでした。
J2でも良いチームはあると思うものの“新しさ”みたいなものは感じないことが多いのですけど、愛媛は周りとは違うものがあったように思います。
実際、結果の方もシーズン後半の成績はかなり良いようですしね。
パスを積極的に繋ぐサッカーなのだけど、いわゆる日本サッカーのようなショートパスだけをつなぐのではなく、ミドルパスでスパッとくさびを入れたり、ロングパスで逆サイドのウイングを狙ったりと、長短のパスを使ってくる。
加えて、そのパスワークにスピードを感じる。
単純なパススピードだけでなく、プレー選択も早く、ショートパスだけでないため展開も速い。
今期のジェフのパスワーク(攻撃の…ではない)の課題はまさにそこだったのかなぁと。
ショートパスはつなげるけれど、スピード感はない。
だから繋でいるうちに相手が守りを固めてしまう…といった感じですね。
可能性を感じるサッカーを見せてくれた愛媛ですけど、ジェフとの相性は悪かったですね。
しっかりとパスをつないでいこうとするからジェフはプレッシングで対応できたし、守備でも引いてスペースを消すサッカーではないからジェフにとってはスペースが出来る。
…まぁ、逆に言えば愛媛ももう少し足りない部分があるということ。
ここから先は選手の質の問題もあるのかな、とも感じましたが。
しかし、それでも後半受け身なサッカーではなく、後方の選手も積極的に攻撃参加してジェフを崩そうというアクションサッカーを狙ってきました。
ジェフ相手にこういった積極的な攻めを見せたチームは今期ほとんどなかったですから、非常に新鮮でした。
その分裏にスペースが出来て“攻め合い”状態にはなりましたが、「愛媛というチームが何をやりたいのか」、「愛媛らしさとは何なのか」みたいなものをしっかりと感じられたサッカーだったと思います。
ジェフはそのあたりの明確なスタイルをまだ持ち合わせていないと思いますし、素晴らしいことではないかと感じました。
試合の方はその“攻め合い”状態で両者チャンスを作るも決めきれず…。
1-0のままジェフの勝利ということになりました。
■選手達が動けていたからこそ
愛媛としては序盤の失点がすべてだったんじゃないでしょうか。
ジェフの圧力に驚いてしまったのか体が暖まりきらなかったのか、立ち上がりの愛媛の動きは非常に悪く点を取られても仕方なのない状況でした。
J2ではこういう展開が多いですね。
いや、逆に言えばその弱みを狙って、立ち上がりからフルパワーで行くジェフの狙いがはまった試合が多かったとも言えるのでしょうが…。
ただ、この試合でもそうですが、その先が続かないことが何よりも問題ですね。
この試合での後半途中からの“攻め合い”状態の際には、何度か決定的なシーンも作れていましたからあそこまでいけば『決定力不足』とか言う言葉も使えるのかもしれませんが、ただ、それはあちらにも言えることであって。
それよりも問題なのは、まだ選手達が元気だった前半のうちにそういったチャンスを作れなかったことではないでしょうか。
後半は1点を返そうという相手が積極的に前に出てきたのだから、その状況でチャンスを作れたのはある意味で当然とも言えるわけで(ただ、J2ではジェフ相手には前に出てきてくれるチームが少ないためある意味では当然ではない…笑)、今期長らく解決していない課題は引いた相手を自発的にどう崩せるのか…ですからね。
特に前半は疲労の蓄積も感じず「J1昇格」というプレッシャーからも解き放たれて、選手達がすごく良く動けていたように見えたからこそ、逆に「これだけ動けていても(立ち上がりの相手の状況が悪い時間帯以外は)相手を崩す形は作れないのか…」と思ってしまいました。
それが今期の課題であり、その課題を解決できなかったからこそ、目標も達成できなかったのだな…と改めて感じました。
そのあたりの反省点も踏まえて、来季のスタートを切らなければいけないのでしょうね。
まぁ、昨年降格した時点で「引いた相手をどう崩すか」というテーマは、当然出てくるだろう…と予測していなければいけなかったようにも思うのですが。
とはいえ、愛媛も興味深いサッカー(発展途上な部分もあるでしょうからまだ面白いサッカーとは言いません)を見せてくれましたし、ジェフの選手達も積極的に動いてはくれましたので、見るものはあった試合だったのではないかと思います。
もちろんもう1点ほしかったですし、そのもう1点取れないところがいつもやきもきする理由ではあるわけですけど。
それでもここ数試合が結果だけでなく内容も酷かっただけに、それに比べれば良い試合と言えるのではないでしょうか。
最終節は良い動きだけでなく、得点にも期待したいところですね。