「チームを若返らせたいから今後のゲームに使う気はない」

 スポナビに巻のインタビューが掲載されていますね。
 前編後編があります。
 巻の気持ちがわかるという意味で、非常に貴重な内容ではないかと思います。
 巻の移籍以降、なかなか外部でのジェフの記事も見ないですしね(笑)
 そういう意味でも貴重かなと思うのですが。



 個人的に一番気になったのはこの部分。

―まず移籍の経緯から教えてください
アムカル・ペルミからオファーが来るのと同じタイミングでジェフから「契約しない」と言われました。「チームを若返らせたいから、今後のゲームに使う気はない」と。そういう状況だったし、(アムカル・ペルミからのオファーは)いい話なんで前向きに考えました。

 まぁ、そういうことなんでしょうね。
 掻い摘んで説明したのでしょうけど、少なくとも巻本人がまとめるとこのようなことをジェフから言われたという印象を受けたということなんでしょうね。
 そのようなジェフの意向なんだろうと思っていましたし、個人的にはそこまでの驚きはないのですが、割と重要なことを言っているように思います。



 ただ、改めてここだけは言っておきたいという部分があって。
 それは江尻監督というか、チームの問題。
 巻の移籍当時…というか去年から思っていたことで、ここでは何度も言っていますが、ネットは単純に一対一で勝てる相手には通用しますけど、それ以外の状況では苦戦するだろうと。
 一対一に強いCBがいると対応に苦しみ試合から消えてしまって、巻のように自分が犠牲になる動きをしたりスペースを作ったりして、周りを活かせるような選手ではないと。
 それがネットが昨年J1では苦しみ、今年J2では結果を残せている部分がある理由だろうと思っていました。


 だから、私は今後巻が必要になってくるんじゃないかと考えていました。
 そういったマンマーカーのいないJ2の下位チームを打ち負かす分にはネットでいいかもしれないけれど、将来的にそこに頼っているとチーム全体も苦労するだろうと。
 巻ならば他の選手を活かすために動き回れるし、組織的な攻撃を作っていくためには必要な存在だろうと。
 …で、そのあたりの課題は実際ここ数試合で顕著になってきたと思いますし、例えば横浜FC戦などでも改めてはっきり出たのではないかと思っています。



 このあたりに関して、シャルケのマガト監督が興味深いことを話しています。

「日本人選手は、テクニック、走力、規律の3つが優れている。ブラジル人選手の方が技術が優れているかもしれないが、彼らは規律を好まない。ヨーロッパには走力があっても、技術がない選手もいる。日本人は3つすべてを持っており、それがチーム戦術的にとても大きな意味を持っている」(Number

 テクニックに関してはともかくとして(笑)
 どうも現チームは、規律というか組織的な動きが出来る選手に関しての評価が低いような気がします。
 まぁ、組織的な部分をなかなか作れていないのだから、当然とも言えるのかもしれませんが。


 今年、柏の北嶋が復活を遂げたわけですが(実は北嶋は市船時代から大好きな選手でした)、それも現在の柏がチームとしてやることが明確になっているからだと思います。
 彼も巻と同様に個人での突破力があるタイプではないですけど、組織の中ではしっかりと1つのピースとして貢献できる選手だということではないでしょうか。
 


 そんな思いもあったので、「戦力になっていなかったから移籍も仕方ないよね」という意見や「巻のことを考えれば移籍を考えて契約を打ち切る判断をしたのは正しいよね」という意見には、個人的には賛同しかねる部分があるのです。
 そもそも本当に巻は戦力にはなりえなかったのか。
 今後、戦力になりえる可能性はなかったのか。
 ましてや巻の移籍したタイミングはチームが個人技頼りの攻撃に行き詰まりを感じ始めていた直後で、直前の愛媛戦ではスタメンで出場した巻の頑張りもあって3-0で勝利した展開でもありました(その前の水戸戦では敗戦)。



 また、メンタル面でも思う部分があります。
 勇人が気持ちを入れて戦い、坂本や櫛野などを復帰させた札幌戦を見て、ここに巻がいれば絶対にチームの力になってくれたはずではないか?とつい思ってしまいました。


 監督の意思や手腕もそうですけど、強化部もそういった個人技頼りの攻撃になっている課題やメンタルの部分も考慮した上での判断だったのかどうか…。
 個人的には非常に気になる部分です。



 そして、クラブ全体の問題。
 その他もろもろの事情もあるとは思うのですが(しかし少なくとも巻がそう思っているということが極めて重要なわけですが)、主な移籍の理由が「世代交代」であったというのであれば非常に残念。
 1年でJ1昇格という極めて難しい目標を立てなりふり構わぬ姿勢で戦わなければいけない状況にしておいてそんなことを言っていることも残念ですが、なによりも選手の大量流出の際には坂本に三顧の礼でジェフに復帰してもらい(しかも坂本を熱心に誘ったのは他ならぬ巻であって)、今年J2に降格すると勇人や茶野などが(様々な事情はあったとは言え)ジェフを助けようと帰ってきてくれるなど、ここ数年はかつての功労者には助けてもらってばかりだというのに…。
 個人的に巻にはシュトルム・グラーツでのマリオ・ハースのように子供たちにも愛され、プロ選手としての鏡になるような立場でジェフを支えてほしいと思っていたのですが…。



 巻に関して、今いうことではないのかもしれないけれど、今いわないともう取り上げる機会もあまりない気がして。
 アムカルでの移籍を前向きに説明する巻のコメントを読むたびに、複雑な思いを感じるんですよね…。
 確かに巻にとっては、決して悪い移籍ではなかったかもしれない。
 けれども、巻にとって本当にベストな状況とは、いったいなんだったのか。
 巻のことを思うのであれば、そのあたりも含めて考えてあげるべきなのではないかなと私は思います。



 巻が移籍を前向きに話をしてくれるたびに、クラブはまたクラブ史に残る功労者に救われるわけだけど…。