収穫はパススピードの向上

 天皇杯4-0の勝利でスタメンに注目が集まったジェフ。
 天皇杯から左SBにアレックスを組み込むメンバーで水戸戦に臨みました。
 前線は右からネットを1トップに右に深井、左に倉田。
 3人にともリーグ戦では久々のスタメンとなりますし、どういった攻撃になるのか、 
■ネットのヘディングシュートで先制
 試合序盤のジェフは、1トップをめがけたロングボールが主体の攻撃。
 しかし、ことごとくネットが競り負け、相手CBに跳ね返されてしまいます。


 やはり後方からのボールを競り合う…という仕事はあまり得意ではないようですね。
 巻はもちろんですが、孝太の方が意外とこのタスクは期待が出来そうです。
 そういった仕事は身長やジャンプ力だけではなく、ポジション取りや体の入れ方・張り方などの部分が大きいのでしょう。
 本来のジェフはパスをつないでいく形を目指しているはずなので大きな問題ではないのかもしれませんが、シーズン後半戦からは意図的なFWめがけたロングボールも増えてきているので、この試合の序盤はそこが目立っていました。
 相手DFラインを飛び越えるようなボールならネットも活きてくるのでしょうが、そこは相手にも警戒されていた印象です。



 しかし、前半10分はあたりから、ジェフは左サイドを中心にチャンスを作っていきます。
 CBの良太や山口が左サイドに流れることで、アレックスをタッチライン際の高い位置に押し上げ、そこから攻撃を作っていく形がうまくできていたのではないでしょうか。


 それと共に、水戸の守備がうまくいっていないな…という印象を受けました。
 5月に対戦した時はしっかりとDFラインとMFラインがバランスよく守れていて、チェック&カバーも綺麗に出来ていたと思うのですが、特に前半の水戸はジェフの選手が動くたびに中盤のポジショニングが崩れマークが一歩ずつ遅れてしまっていました。
 水曜日に天皇杯で清水と戦った直後ですので疲労の影響もあったのかもしれませんが、パスミスも多く全体的にピリッとしない出来だったと思います。



 前半17分、右サイド深井のクロスからネットがゴール。
 それまでロングボールへの競り合いも足元でのポストでも潰され続けてきたネットでしたが、このシュートシーンは素晴らしいヘディングだったと思います。
 相手DFを背中に担いだ状況で、あれだけのヘディングシュートを放てるパワーというのは凄まじいですね。
 こういった一発があるから、監督としては使いたくなるのでしょう。
■追加点が奪えないジェフ
 その後もジェフが攻め立てますが、前半折り返し地点あたりから、ジェフの攻撃の勢いが落ちていってしまいました。
 徐々に前に仕掛けるプレーや攻撃参加の回数が減って行き、パスをつなぐだけの時間が増えていってしまいます。


 これはこの試合に限らず、ジェフの大きな課題の1つですね。
 1点取った後、良い状況が続いている時に追加点が取れない。
 性格的に優しい選手が多いからなんでしょうか?
 一気に点数を取ってトドメを刺す…という試合が、なかなか作れませんね。



 ジェフが攻めあぐねているうちに、水戸が盛り返してきます。
 サイドをワイドに使ってのクロスからの攻撃。
 ジェフは鎌田、アレックスと攻撃に魅力があるSBを両サイドに置き、SHにも倉田、深井を起用しており、サイドの守備バランスが悪く後れを取る場面が多く見受けられました。


 前半40分過ぎには鎌田のパスミスから、大橋がクロスバー直撃のシュート。
 その後ジェフが2度のシュートチャンスを作たシーンなどを見ても簡単に水戸のラインが下がってしまい、相変わらず水戸の守備は良くなかったと思うのですが、ジェフがなかなか流れを掴みきれない前半だったと思います。
■守備で不安定なシーンも
 1-0で迎えた後半。
 水戸はハーフタイムで修正してきたのか、守備が安定し攻撃でもミスが減っていきます。
 後半9分には鎌田が低い位置でボールを奪われ、あわやというシーンも。
 鎌田だけの問題ではないとは思うのですが、やはりなんとなくもう少しフィットしきれていない(コンディション面も連携面も)印象がありますね。
 それでも良太を右に使って福元をCBにするより、良太をCBで使った方がいいという判断なのだと思いますが。
 実際この試合でも良太のCBはビルドアップなどで、効いていたと思いますしね。
 もちろん鎌田も悪いプレーばかりではなく、富山戦に比べれば良くなっているとは思うのですが…。
 まぁ、これからに期待ということで。


 ジェフはネットや深井などがドリブルで前へ行こうとする展開は目立っていましたが、やはりこのメンバーだと前線での運動量に物足りなさを感じる部分があるような気がします。
 それでも前半途中までは選手達がまだ活発に動けていたから良かったと思うのですが、後半からは攻撃が単発になる傾向に。
 その結果、相手の深い位置まで攻めきれず、相手からすれば読みやすいミドルシュートが増えていたように思います。


 そして、後半25分過ぎからは、ジェフのシュートシーンも少なくなって行きました。
 後半29分には相手の中央からの攻撃から、ミドルシュートがポストに。
 ヒヤッとする展開でした。


 これも以前からの課題ではありますが、ジェフは攻め込まれると守備のバランスが悪くなってしまいますね。
 CBのエリアにボランチやSBがごちゃごちゃと集まってしまって、セカンドボールも拾えなくなるし、サイドなどにスペースも作られてしまう。
 それでもチームとしては、マンマークに拘るんでしょうか。
 マンマークに強い選手が多いとはあまり思えないですし、効率の良い守備には見えないのですけど…。
 

 工藤を投入した後半33分ごろからは相手の運動量も落ちてきて、そのまま1-0で終了と言うことになりました。
■確実に勝つためにより強いチームを
 ジェフの内容は悪くなかったと思います。
 選手達はかなり動けていた印象ですし、前の選手達のキレも良かったんじゃないでしょうか。
 倉田も一時期より運動量が増えて、動きながらボールをもらう回数が増えたのかな?と感じましたしね。


 その中でも凄く良くなったなぁと感じたのが、パススピードが速くなっていること。
 これまでの悪い時のジェフはボールを持ってもダラダラと後方でまわすだけで時間が消化されていたのですが、この試合では茶野が復帰し良太をCBで起用したこともあって、CBも含めてチーム全体でスパッと速いボールが出せていたと思います。
 特に前半は有効なサイドチェンジなども増え、相手を揺さぶることが出来ていたのではないでしょうか。



 残念なのは追加点を奪えなかったことですね。
 確かに押しいシュートシーンは何度かありツキもなかった印象ではありますが、それは相手も同じこと。
 ジェフが良い時間帯もあったからこそ、その時に2点得を奪いきれなかったことが大きな反省点ではないかと思います。
 水戸は決して良い守備が出来ていたとは言い難いと思いますし、これは自分達の問題でしょう。


 もしも相手のクロスバーなどに当たったシュートが1つでも入れば、ジェフは勝点2を逃す試合になっていた可能性があるわけで。
 もちろん逆も然りではあったのですが、確実に勝ち続けなければいけない立場なのは水戸ではなくジェフなのですから、しっかりと問題点は改善して行かなければいけません。
 その一本のシュートの行方で、J1昇格争いの運命が大きく変わり、退いてはクラブの運命が大きく違ってしまう可能性も考えられる状況にいるわけですから。
 ようするに、もっと確実に勝たなければいけない。
 そして、確実に勝つためには、より強いチームを作っていかなければいけない(なんか「内容」って言葉は使っちゃいけないみたいなんで)ということですね。



 この前線のメンバーだと相手との一対一で勝てる状況や、ピンポイントではまったときはゴールに近づけると思うのですが、そこがうまくいかなかった場合の厚みのある攻撃はあまり期待できず、後半のように相手の守備が安定してくると自発的に崩すのは難しいのかなぁと思います。
 一長一短な部分もあると思うのですが、やはり献身的に走れて周りをサポートできるよう選手が必要なのかなぁと感じました。
 ようはバランスだと思うので難しいところではありますが。


 それと単純にメンタルの問題もあるのかなぁと。
 先制点を奪ってすぐに満足してしまう。
 1-0でも勝てているのだからいいやと考えてしまう。
 そういった甘さみたいな部分がもしかしたらどこかにあるのかなぁと感じてしまいました。



 ともかく、この試合に関しては相手が良くなかったという部分もあったものの、自分達の収穫もあった上で勝利ですから前向きに考えたいと思います。
 リーグ戦3連勝は今期2度目とのことですが、これに油断することなく連勝街道を突き進みたいですね。