チームは引き分け 巻は厳しい状況に?

 先週末、スパルタク・モスクワアムカル・ペルミの試合が行われました。
 選手入場の際に相手監督も映っていて、「どこかで見たことあるなー」と思っていたら、なんとあのカルピンでした。
 前々節のルビン・カザン戦で元インテルマルティンスの途中出場に驚き、前節クリリア・ソベト戦でジョルジェビッチの出場に驚き、そして今回はカルピン監督に驚き…。
 ロシアリーグ、侮れませんね…。


 ヴァレリー・カルピンは元ロシア代表のMF。
 バレンシアなどリーガ・エスパニョーラで活躍し、2002年日韓W杯ではロシア代表の主軸として、日本代表と対戦しています。
 懐かしいですねぇ…。


 Wikipediaによると、2004-2005シーズンで一度引退した後、07年にリーガ2部に現役復帰。
 その後、スパルタク・モスクワGMに就任し、09年に神戸でもプレーしたミカエル・ラウドルップ(ここにもびっくり)を成績不振により解任し、監督に就任した模様です。
 一度引退した際には、スペインTV局の解説も務めていたんですね。
 なお、ラウドルップの方は今年7月、大久保も所属していたマジョルカの監督に就任したとか。
 なんだか意外と狭いエリアで人が動いているような気がします(笑)
■アムカルはカウンター狙い
 さて、試合。
 巻は残念がらベンチスタートで、アムカル・ペルミは前節と同じスタメンを組んできました。
 2試合続けて同じスタメンになったのは、巻がチームに合流して初めてではないでしょうか?


 しかし、相手が6位スパルタク・モスクワということもあってか、かなり退き気味な戦い方。
 前節は基本2トップでしたが、守る時間が長いこともあって、ほぼリスティッチの1トップのような布陣だったと思います。
 そこからリスティッチ、トップ下気味のヴォルコフがカウンターを狙う戦略でした。



 前半21分。
 先制したのはアムカルでした。
 中盤での相手のミスからボールを奪うと、そのままカウンターへ。
 ラストパスを相手DFに跳ね返されたところを、中盤のノヴァコヴィッチが拾って豪快なミドルシュート
 それまでボール支配率では圧倒的に劣っていたアムカルですが、一瞬の隙をついた形になります。
 

 しかし、前半36分。
 スパルタク・モスクワ、左サイドからのクロスの展開で失点。
 クロスに対してアムカルDFがヘディングしたボールが、相手選手ウェリントンへのアシストになってしまいました。
 アムカルの選手はオフサイドをアピールしていましたが、アムカルの選手がラストパスを出してしまった展開ですから、そこではオフサイド判定にはならず。
 クロスを上げた時点でウェリントンオフサイドエリアにいたかどうかが判断基準となりますが、その時点ではオンサイドだったと思います。


 このゴールで1-1となり、そのまま試合を折り返します。   
■攻撃の工夫が見られないスパルタクM
 先制点後、一度勢いに乗り前からのプレスが激しくなった(ただ、中盤以降はあまり付いていっていませんでしたが)アムカルでしたが、後半開始からはまた全体のラインを下げて戦っていました。



 引いて守るアムカルに対し、スパルタク・モスクワはビルドアップに工夫が全く感じません。
 狭い局面で打開しようとするサッカーが多いロシアのチームですが、この日のスパルタク・モスクワは特にその傾向が強かったように思います。


 DFラインでのパス回しが遅いから(人工芝の影響もあるのかもしれませんが)、相手の守備組織が揺さぶれない。
 相手の守備組織がずれないから、サイドの隅で縦パスを出すしかなくなるのだけど、当然そこは警戒されているから、1つ後ろに戻すしかない。
 1つ後ろに戻した後に、中盤で逆サイドに振ればいいと思うのだけれど、なかなかそこを使えなかったり、前掛りになりすぎてボランチのエリアに選手がいなかったり…。
 現役時代のカルピンって賢い中盤の選手と言う印象があったのですが…(笑)



 試合序盤や先制点の奪われた後は、狭いエリアから長いボールも出ており、アムカル目線でいうと退いているだけでは心配な状況だったと思います。
 アムカルの守備陣は基本スピードに難がある傾向にあって、相手の揺さぶりや裏を突く速い攻撃に弱いところがあるはずなのですが、なかなかそれが出来ておらず、強引なドリブルや縦パスが多い印象でした。

 
 後半9分。
 アムカルのCKからDFチェレンチコフがゴール。
 やはりボールを持てていても、悪い流れだと失点してしまうものですね(笑)



 2-1でアムカルがリードする展開になりましたが、後半20分あたりから失速。
 疲労からか中盤にスペースが出来ていき、マークが遅れがちになっていきます。


 すると後半30分。
 スパルタク・モスクワが左サイドで強引に突破しクロスを上げると、GKがパンチングで跳ね返しきれずに、ボールは大外のマクギーディに。
 そのまま押し込まれて2-2となってしまいます。



 試合の方はその後も攻めるスパルタク・モスクワ、守ってカウンターを狙うアムカルといった展開のまま2-2で終了となりました。
 残留争いをするアムカルとしては上位チーム相手ですから、引き分けでもOKという狙いだったのでしょうね。
■レギュラー争いをリードするリスティッチ
 率直な意見を言うと、わりと凡戦だったかなぁ…と(笑)
 現在は6位とはいえ昨期は2位と言うこともあって、スパルタク・モスクワの試合内容に期待していたところもあったのですが。


 ビルドアップに工夫が見られなかったということに加え、守備においても時おりマークの緩さを感じる部分がありました。
 失点するたびに気持ちが入ったプレーが増えていたようにも見えたので、もしかしたら下位アムカルを舐めてかかっていたところがあったのかもしれませんが…(笑)
 もちろん良いプレーもあって、例えば先制点を奪われた直後に左サイドでパスをつないでから、ボランチ2人に素早く展開し、逆サイドのSHにくさびのパス、そこを一気にオーバラップしてきたSBにつないでクロス…なんてプレーもあり、「おおっ」と思ったのですが、そういったいい攻撃が見られた回数は少なかった印象です。

 

 アムカルの方は無難に勝点1を確保した試合といった感じでしょうか。
 守備の方は、中盤などで見られた大きな穴は少なくなった印象ですね。
 もしかしたら怪我人も戻ってきて、メンバーが固定されてきたことが大きいのかもしれません。
 ただ、そこからのボール奪取能力はいまだに低く、90分持たないことが守備をメインに戦っていくとすれば、大きな課題になる可能性もあるように感じますが…。



 巻に関しては、ますます厳しい状況になってきましたね。
 後半20分過ぎから運動量も落ちてきたので、トップ下の位置でもいいから巻を…と私は思ったのですが、そこまでの信頼は得ていないということなのでしょうね。
 まぁ、単純に引き分け狙いだから、いじりたくないというところもあったのでしょうが(巻は2枚目のカードで、1人目の交代も後半37分と遅めでした)。
 結局、巻は後半43分からリスティッチに変わって出場。
 中盤まで戻って走り回るなど、守備がメインタスクだったようでした。



 リスティッチは大技はないですけど、確実に落とせて、抑えの利いたシュートも打てるようで、カウンターの起点にもなれそうな選手です。
 もしかしたら初めからラキモフ監督はこういった、前線でそこまで動かず落ち着いてポストが出来る選手がほしかったんじゃないでしょうか。
 巻はどちらかというと動きながら起点になる選手ですから、同じポストプレーヤーと言ってもちょっとタイプが違いますね。
 まさかそのあたりを理解せずに獲得した…というわけではないでしょうが(ただ、リスティッチの獲得は巻獲得の1カ月後なんですよね)。


 どちらにしてもレギュラー争いから、リスティッチが一歩先を行ってしまった印象です。
 巻がスタメンで活躍したロストフ戦のように、前線からどんどんプレッシャーをかける展開なら生きる道もあると思うのですが、基本的には引いて守る展開が主となりそうですし…。
 厳しい状況ですが、サッカーはどう転ぶのか分かりませんし、下を向かずに頑張ってほしいと思います。