巻、ファールを獲得し先制点をアシスト

 アムカル・ペルミは先週末にリーグ戦で5位につけるロストフと対戦。
 先々週の試合が酷かったですから、上位チームということもあって苦戦するのかなぁ…と思っていたのですが、予想外の展開でした。
 巻が移籍してからアムカルの試合を見た私ではありますが、その中では一番良い内容だったと思います。
■巻の連携面は着実に向上
 巻はスタメンフル出場。
 FWのパートナーはクシェフでもヴォルコフでもなく、MF登録のクネジェヴィッチでした。


 序盤から巻はアムカルの攻撃に積極的に絡んでいきます。
 開始早々、左CBからのロングフィードにペエフが抜け出し、巻に向けて低めのクロス。
 これはうまくヒットせず決まりませんでしたが、ニアへの飛び込みは迫力を感じました。


 前半10分には、中盤のロングパスから走り込んで抜け出すもオフサイド
 続く14分には、中盤から難しい浮き球のパスをダイレクトで味方に落としてチャンスメイク。


 このあたりの巻のプレーを見ていると、かなり周りとの連携を深めてきたように感じます。
 いきなりの出場となった初陣のぎくしゃくした印象から比べると、状況は大きく改善されたように思います。




 アムカル全体に関しては、やはりホームの方が良い試合が出来るチームのようですね。
 選手達の動きも良く、全体のラインも前節に比べてかなり高く保たれていました。


 巻はその中でしっかりと守備面でも貢献していました。
 前からのチェイシングはもちろんですが、相手DFラインで奪えない状況では、あえて相手ボランチにボールを入れさせて、味方MFとサンドしてボールを奪おうとする連係プレーも。
 守備でもかなり周りとの意思疎通は深まってきたと感じられる動きでした。
■体を張ってチャンスメイク
 前半22分。
 巻が体を張ってくさびを受けようとしたところ、相手CBが後ろからタックルを仕掛け、ペナルティエリア直前でFKを得ました。
 すると、そのFKをペエフが低い弾道で直接狙い、先制ゴール。
 ファールゲットという形ではありますが、巻が先制点をアシストする形となりました。



 続く前半28分には同じくペエフからFKのシーンで、ニアに走り込んできた巻が首をひねってヘディングシュート。
 惜しくも枠の外。
 また、前半ロスタイムには、中盤からのスルーパスに抜け出してシュートを放つも、GK正面ではじかれてしまいます。
 良い形で抜けだしただけに、惜しいシーンでした。




 ちなみに、アムカルはこのペエフとシラコフがブルガリア代表メンバーに選出されています。
 ペエフは負傷していたようで、久々の出場となり、巻とは初顔合わせだったはずです。


 クシェフも元ブルガリア代表ですし、クロアチア人選手などもいますし、本当に東欧ルートがあるのかもしれませんね。
 その関係でオシム監督が巻を紹介した可能性もあるのでしょうか…。


 ブルガリア代表の2人はEURO2012の予選ではストヤノフと一緒になるはずですから、ぜひ巻の情報を交換してよりうまく巻を使えるようになってほしいと思います(笑)
■走り回って1-0での勝利に貢献
 後半に入っても、巻はポストプレーで攻撃に絡んでいきます。
 ポストだけでなく、裏に抜ける形も見せることで、相手も読みにくい状況が作れていたんじゃないでしょうか。


 後半14分にはCKからの展開で、ニアに走っていった巻がバックヘッドでシュート。
 セットプレーでも巻に合わせるボールが増えてきましたね。
 単純な身長では相手の方が上な場合もあるでしょうけど、ジャンプ力やそこまでの動きで相手に競り勝つシーンも作れているように思います。



 チーム全体は後半に入ると、動きが落ちラインも下がって行きました。
 攻撃に関しても良い形が作れないようになり、巻もなかなかチャンスがつかめない状況に(それでも遠目から思い切ってシュート、なんてシーンもありましたが)。
 試合終盤には相手選手に削られ、その後少し足をひきづっていたように見えたのが心配ではありますが、巻は最後まで走りまわり、チームの1-0での勝利に貢献していたと思います。
 他の選手に疲労が見えていただけに、巻の前線での守備は大きな意味のあるプレーだったんじゃないでしょうか。 
■今後に期待の持てる内容
 まず、この試合に関しては、アムカル全体の動きが非常に良い印象でした。
 相手が思ったよりも良いサッカーが出来ていなかったという部分もあるのでしょうが。
 特にボールを奪ってからCHやSHが思い切って前に飛び出していく動きは、今までは比べ物にならないほど迫力を感じました。


 前節が酷い試合だっただけに、違うチームのようにすら見えてしまうくらいでした(笑)
 この内容が毎試合できれば良いんでしょうけどね…。
 アムカルもジェフ同様アウェイに弱いということなのか…とも思うのですが、国土の広いロシアですから日本とはちょっと比較できないのかなと。
 なかなか集客も苦しんでいるように見えるのも、そのあたりの影響があるのかなぁ…とも思ったりしました。



 この日のアムカルは攻撃だけなく、守備でも前からしっかりとチェイシングし、全体のラインが上がっていた印象でした。
 前回の試合の感想でも話しましたが、ラインの押し上げは攻守においてこのチームの課題となっているように見えるので、よく修正してきたなぁ…と感心してしまいました。


 その全体の押し上げに貢献したのが、巻とクネジェヴィッチと2トップだったと思います。
 クネジェヴィッチも巻のように献身的に走り回るタイプの選手で、クシェフやヴォルコフよりも守備能力は上だと思います。


 加えてクシェフが起用されるとどうしても下がってボールを受けたがる分、中盤の選手が上がるスペースがなくなり、攻撃のスピード感もなくなってしまうところがあるので、この2トップは非常に面白い組み合せではないかと感じました。
 巻とクネジェヴィッチが高い位置でターゲットになろうとすることによって、相手の脅威にもなっていたと思います。
 クシェフが下が分、前線に人が足りない場面も増えてしまいますしね。
 もともとポストに預ける意識の強いチームで、巻も本来はくさびのパスを捌きながらリズムを作っていく選手だと思うので、特に前半はやりやすい状況だったんじゃないかなと思います。


 しかし、前半終了間際にクネジェヴィッチをクシェフと交代。
 後半なかなかラインを上げられずに苦しんだのは疲労問題もあったのかもしれませんが、選手交代の影響も少なからずあったように見えました。
 確かにそのクシェフから鋭いパスが配給されることもあるのですが、チーム全体としてデメリットとメリット考えるとすると…。
(クシェフを起用しなくてもペエフが代わりにもっとチャンスを作れれば、そこでポイントが作れるのではないかと思うのですけど。)
 このあたり監督が次節でどのような組み合せを選ぶのか、注目ですね。



 前半の良い流れもあって、巻は非常にいいプレーをしていたと思います。
 守備に関しては言うまでもなく、攻撃においても良くなってきている印象です。
 ボールを受ける回数が格段に増えていますし、裏をとるプレーもロシアで通用するということが見えてきたんじゃないでしょうか。


 しかし、前半にあった2度のゴールチャンスのうち、どちらかを決めて欲しかったかなぁとは思います。
 …考えてみれば、この2度のチャンスがアムカルに来て初めてのゴールチャンスだったんじゃないでしょうか。
 それまでは確かに試合に出ていたしシュートも放っていましたけど、良い形でボールを受けたシーンはほとんどなかったですからね。
 それだけ周りの選手も、巻を信じてパスを出してくれる回数が増えてきたんじゃないでしょうか。



 前節はチームも散々で巻もスタメンから外されどうなることか…と思いましたが、この試合を見るとチームも巻自身も今後に期待を持てる内容だったんじゃないかと思います。