大きな価値のある工藤のゴール

 ホーム・フクアリでの開催で、対戦相手は18位に低迷する岡山。
 しかも、前節岐阜戦では0-1で敗戦。
 J1昇格を目指すジェフとしては、どうしても勝たなければならない試合だったと思います。
■開始早々に工藤のゴール
 福元が出場停止のジェフは右SBに坂本を起用し、CBに青木良太をまわしました。
 そして、深井に変えて右ウイングに太田を起用し、ここ数試合右サイドの位置で出場していた工藤を左に置いたフォーメーションでした。


 開始早々から工藤がどんどん対面する相手左SB山中に圧力をかけ、太田はワイドに開いて縦を攻める展開を作っていきます。
 この攻撃により、徐々に相手のDFラインが下がっていきます。



 すると前半5分。
 早くも試合が動きます。
 左サイドの攻撃から中盤の高い位置でパスをつなぎ、右サイドに開いた太田に展開してクロスを上げ、最後は左から中に入ってきた工藤がシュート。
 ジェフが綺麗な形で先制点を挙げます。


 太田がワイドに開いて相手を引っ張り、工藤が外から中に入って行き、ネットと谷澤をオトリとして(相手CB2人が2人に引っ張られて下がって、その前に出来たスペースに工藤が入っていき)、ゴールを決める。
 このスタメンで狙った形なのでしょうし、良いゴールだったと思います。


 その直後の前半6分にも同じような形で工藤がシュート。
 シーズン後半に入ってクロスからの展開が増えてきたジェフですが、中の動きは少なく攻撃の厚みを感じる展開というのはあまり見られなかったと思います。
 また、シーズン前半からゴリ押し的なゴールが多いジェフですが、このゴールに関しては複数の選手が絡み、良い流れでシュートまで持っていけました。
 “人もボールも動く展開”が作れていたと思いますし、スピード感を感じる攻撃だったと思います。




 その後もラインで守る岡山は、左サイドで動き回る工藤に対して、誰が付くのか曖昧な印象がありました。
 前半35分にはネットのポストから、谷澤がシュート。
 このあたりを見ても谷澤が簡単にフリーになっていましたし、岡山は特にバイタルエリアに侵入してくる選手へのマークがルーズだったように思います。
■流れをつかみきれないジェフ
 前半早々に得点を奪ったジェフですが、その後は岡山にボールを持たれる時間帯が増えていきました。
 岐阜戦でも選手達の動きが悪く、フクアリならもう少し動けるだろう…と思っていたのですが、このあたりの時間帯までは前節と大きくコンディションは変わっていないように見えました。
 なかなか気温が下がらない気候もあってか、思ったよりも選手達の疲労は溜まっているのかもしれません。
 選手の切り替えも遅く、キレもなく、全体的な運動量も少なかったように思います。



 なかなか守備で一歩が出ていかないからプレスがうまく行かず、ボールも奪いきれないし、遅らせることもできない。
 にもかかわらずジェフの基本守備はプレスだから、相手ボールホルダーに人が集まってしまう…。
 そして、そこからボールを散らさせて、ピンチができる。
 ようするに、簡単にプレスの裏の穴が出来てしまうということですね。


 加えて、攻撃においても周りの選手の動きが足りず、パスコースが少ないこともあって、パスミスが非常に多かった印象でした。
 もしかしたらこのあたりは、選手起用とポジションの変更が多いことによる連携の問題も大きかったのかもしれませんが…。



 後半からジェフは、中央に工藤を置き、谷澤を左サイドで起用。
 主に中盤の守備の改善を図ったのではないかと思うのですが、あまり大きな変化はなかったですね。
 逆に左サイドで動き回ってフリーになっていた工藤が中央に入ってきた分、ボールをつなぎにくい状況になってしまったようにも感じました。



 岡山はFWへのポストプレーからの展開で、チャンスを作っていました。
 ジェフとしてはそのFWへのCBの対応も、ボランチがCBと挟む形での対応も、もう少し強く行きたかったところだったのではないかと思います。
 しかし、ジェフのサッカーを考えるとそれ以上に、くさびのパスの出所がフリーになり過ぎていたことが問題だったのかもしれませんね。
 ジェフの前からのチェイシングがまったく出来ておらず、岡山が縦へパスを出しやすい状況になっており、そこでリズムを作られていた印象でした。
■2点目を奪い、一気に流れが変わる
 しかし、後半23分。
 ジェフ後方からのロングフィードに対して岡山CBがボールの処理を誤ったところ、ネットの前にボールが入り、フリーでシュート。
 相手チーム目線で見ても「えー?」と思ってしまうようなミスから、2点目が入ってしまいます。


 この失点で岡山の方はガクッと動きが落ちてしまいました。
 イージーなミスからの失点に加えて、岡山から見れば順位的にも格上の相手にした試合で、2点目が入ってしまった。
 それまでは何とか前半早々に奪われた1点だけで抑えていただけに、気持ちの部分の落差が非常に大きかったのではないでしょうか。



 逆にジェフは決して良い状況ではない流れでの追加点だった分、選手達の勢いは一気に増し、攻守において前へ前へと行けるようになりました。
 後半35分には途中投入の村井がセンターサークル付近から前方のスペースにパスを出し、一度相手にボールを奪われるもネットが取り返して(岡山はこのあたりの対応も緩かったですね)、最後は外から中に入ってきた村井がゴール(やはり岡山の守備陣は中に入ってくる選手へのマークが緩すぎる…)。
 このシュートも村井らしいステップからシュートまでが素早いフォームだったと思います。
 他にも村井は縦への突破からクロスなどを見せ、自然と懐かしさを感じましたね。
 この試合でも久々の公式戦とは思えないいいプレーが出来ていましたし、今後にも期待が持てるのではないでしょうか。


 最後は後半ロスタイム。
 良太による右サイドからのクロス。
 ネットがシュートを放ち、相手GKがはじいたところを勇人が合わせて4点目。
 ピリッとしないプレーも多かった勇人ですが、最後のゴールは勇人らしいプレーだったと思います。
■大きな価値のあるゴール
 4-0で勝利したジェフですが、一番価値のあるゴールは1点目ではないかと思います。
 早い時間に先制できたというのももちろんですが、個人技で2人、3人をかわして得点を奪うだとか、相手のミスに乗じてゴールを決める形ではなく、相手の守備を自らで崩した形で奪ったゴールだったと思います。
 無論、そうではないゴールでも得点を奪えることは重要ですが、チームの発展や今後より強いチーム相手にも勝利していかなければならないことを考えれば、こういった形をもっと自発的に作れるようにしていきたいところではないでしょうか。



 先制点が良い形だっただけに、その後にそういった形をあまり作れなかったのは、少し残念だったと思います。
 相手のミスによって2点が入った後は、相手も集中力が一気に切れ、こちらもイケイケの状況になり、得点を奪えましたが…。
 今年のジェフはああいったイケイケモードに入るとすごいですね(笑)
 けれども、あのような状況になったのも相手のミスによる得点がキッカケでしたし、岡山はその後かなりパフォーマンスが落ちてしまいましたから、評価するの難しいところがあるように思います(無論この試合においては重要な3点だったことは間違いないのですが)。



 もちろん4-0で勝てたことは良かったことですし、今まで出場していなかった選手が活躍したなど収穫も多かった試合ではありますが、リーグ戦では福岡、柏と強豪との試合が続きますし、これに油断することなくしっかりと気持ちを引き締めて行くことが重要だと思います。
 特にプレスとパスミスの問題は、非常に心配な要素ではないかと。
 コンディションの問題だけなのかもしれないですし、90分間良い状況で戦うのも難しいことだと思いますが、2つとも今のジェフの基本となる部分だと思いますので、しっかりと修正しなければいけないと思います。
 ここ2試合を見て、改めてプレスとパスワークが胆になっているチームなのだな…と感じましたし。




 工藤が決めた先制ゴールによって、今後における1つの攻撃の指標が出来たと思いますし(もちろんあのパターンだけが答えではないにせよ)、そういった意味で大きな価値のあるゴールだったのではないでしょうか。
 プレスとパスワークのベースをより強固にして、1点目のような攻撃を増やしていき、より確実に自分達の動きでゴールを奪えるような攻撃を作って行ってほしいと思います。