親会社の依存とJリーグの価値と
09年11月に現経営陣による運営を認めた鬼武健二チェアマンは「信じて任せてきたが、このままではクラブ運営は不可能になる。チェアマンには、あらゆる面で責任がある。重く受け止めたい」と語った。この日の理事会では「あくまで今季を乗り切ることを優先に検討した。来季以降については今後検討する」とした。クラブ消滅やJFLなどへの降格処分については「予想はされます」と、可能性を否定しなかった。
(中略)
鬼武チェアマンは「クラブライセンス制度を完成させ、今後はこのような事態を招かないようにしたい」と厳しい表情で語っていた。(日刊)
個人的には今回の件でずっと感じているのは、では昨年末からの動きに関して、他に手はあったのかな?ということ。
「昨年末、新会社の経営を認めたJリーグの責任は重い」、「今後の監査はしっかりと行う」、「新会社が経営能力に問題がある」…。
そういった記事を書いているメディアも読みましたけど、果たして今回の論点はそこなのかなぁと。
確かに両者に責任がないわけではないのでしょうけれども。
Jリーグの見通しが甘かったというけれど、そもそも他に選択肢がなければそこしか選べないはずで。
昨年末クラブを潰してしまうのは簡単だったかもしれないけれど、Jリーグの…しかも名門ヴェルディが潰れるとなれば、Jリーグ全体にも悪影響が出てくるはずです。
ただでさえ不景気な状況で、そのようなネガティブなニュースは流したくない。
そして、存続するとすれば、多少頼りなくとも新会社に任せるしかない。
そういう流れだったのであれば、その判断は大きくは間違っていなかったのではないかと私は思います。
その後の経営に関しても、想定した入場者数に達しなかったことに関してはともかく、大口スポンサーの未払いに関しては会社側もJリーグ側も想定できなかったはずですし、そもそも新会社はそれまでの経営問題を考えるとマイナスからのスタートだったはずで。
(しかし、本当に未払いの企業名は出てこないのですね…。)
では、どこが問題だったのか、どの時点で間違った道を歩んでしまったのか…と考えてみると、やはり読売・日テレ時代にいきつくのではないでしょうか。
そのあたりに関しては、考えていくと長くなってしまうし、他クラブのことでもありますので、他に譲りますが…。
(そうか、テレビや新聞は同業者に対しての指摘はしにくい。だからJリーグ批判、会社批判が先行になる…ということ?)
これからのJリーグのことも考えると、そこで問題になってくるのは、そういった大企業に依存した経営をしているクラブをどう評価していくかではないでしょうか。
チェアマンは「クラブライセンス制度」によって解決していくとしているけれど、親会社からのサポートを失えば一気に経営が厳しくなるクラブは現在もあるはずです。
例えば三木社長が就任してからのジェフだって、JR東日本からのサポートは多大な物があるわけで、かなりの依存体質になっているはずです。
確かに日テレの場合、少しずつ噂が始まってからの撤退だったわけだし、いきなり完全撤退ということは考えられないかもしれない。
けれども、では具体的に依存度の高まった状況で親会社にそういった予兆が出始めて、そこからすぐに自立経営に移行できるのかというと不可能に近いものがあるはずです。
だから、私はジェフに関しても親会社からのスポンサー増加はうれしいけれど、少しずつ自立経営からは遠のいてしまっていますよね…と複雑な思いを言ってきたわけで。
そのあたりの問題は数字にも表れにくいはずです(もちろん公表される数字より、Jリーグには具体的なデータが行っているとは思いますが)。
親会社の関連会社のスポンサーも数字にして表せば「スポンサー料」に振り分けられるでしょうし、「いや、私達のクラブに魅力があるから親会社もスポンサーとしてサポートしてくれるのです」と言われればそれでお終いでしょう。
リーグ側に「依存度高まっているから気をつけて」といわれても、クラブとしては「なるべく頑張ります」と言いつつ、他に頼るところがなければそこに頼らざるを得ない。
親会社に頼らず縮小化を図れば、クラブの魅力も落ちるという考え方が一般的でしょう(いや、個人的には経営規模は小さくても魅力あるクラブを作れると信じているのですが)。
魅力がなくなれば収益も上がらず、魅力を落とさないためには資金を集めるのが手っ取り早いので…以下ループ、と。
「クラブライセンス制度」を導入し、より経営面を厳しく見ることになるのかもしれませんが、それはどの企業にだって言える単なる監査にしか過ぎないと思います。
では、Jリーグクラブの経営において特徴というか特質は何か?と考えると、親会社からのサポートを受けているクラブが多いことが考えられるのではないでしょうか。
そこに対して、どうリスクマネジメントをし、どう向き合っていくのか。
もちろん東京Vのケースはこれまでの経営・運営があまりにも…という問題も大きかったし、他のクラブに関しては逆に親会社が大きなサポートをしてくれるからこそ頑張れている…という面も忘れてはいけないと思います。
とはいえ、例えば昨年末には、日産も横浜FMから撤退というニュースが大きく取り上げられました。
その後、続報はないので状況は変わったのかもしれませんが、横浜FMも日産が撤退すれば一気に経営面で苦しくなる可能性があるはずです。
カルロス・ゴーン氏は撤退の噂されるルノーF1チームの例を見てもスポーツを理解を示していて、撤退後の売却先と言われている相手にチームの株式一部を売却し、共同経営をしながら相手が落ち着くのを待って、フェードアウトする方法を考えているようです(撤退は決定事項ではないですが)。
そういったことを考えれば、横浜FMも酷い結果にはならないと信じています。
もしかしたら“コストカッター”は単にコストを削減するのが得意なのではなく、コスト削減の仕方が得意なのかもしれませんね。
撤退するにしても、最後まで面倒をみることで、自社の責任を果たす…と。
その結果、自社のイメージの悪化も防ぐことになる。
それに比べると…と、これ以上は言いませんけど(笑)
当り前の話にはなってしまいますが、最終的にはJリーグの価値を高めていくことが、一番重要でしょう。
先ほどのF1チームの話も、資金力のある売却先がいればこそ成り立つ話。
残念ながらJリーグでは、そういった状況もあまり期待できないということになります。
長い目で見ると観客動員数やスタジアムの熱気は高まってきたのかもしれないけれど、それが社会や世間一般の価値観までには影響を与えていないのかもしれません。
そこから先が難しいのだろうなぁとは思いますし、時間がかかることなのかもしれません。
しかし、例えばとしてCWCでの浦和やG大阪の頑張り。
あの時は出場したクラブが「Jリーグ(日本サッカー)の代表として世界と戦う」という取り上げられ方をされたことによって、Jリーグファン以外にも反響を与えることが出来たのではないかと思います。
奇しくもそれを後押ししたのがCWCの放映権を持っていた日テレだったわけだけれど、ああいった盛り上がりを毎年のように作ることができえばJリーグの価値も少しずつ高まっていくのかなぁ…と。
もちろん、それと共に日ごろの努力も重要だと思うのですが、内々だけで盛り上がるのではなく外からの評価というのも真剣に考えていかなければ、ここからの発展は難しいのかな…なんて思ったりします。